犯罪か正義か 「国家の秘密」をリークした女性の思い

JNN/TBS
2020年10月18日 (日) 05:56

17年前、イラク戦争の開戦前夜に国連での盗聴計画を暴露し、逮捕された女性をモデルにした映画が、今、公開されています。情報漏えいという犯罪か、それとも正義の内部告発か。国の違法行為に葛藤した事件の当事者の女性を取材しました。

イギリスの情報機関に勤めていたキャサリンさんは、ある日、職場に届いたアメリカ政府の最高機密メールを目にします。当時、アメリカとイギリスはイラク・フセイン政権への攻撃を計画。国連で賛成票を取りつけるため盗聴工作を企てているという機密情報でした。

「とても激しい怒りを感じ、私たちにこんなこと(盗聴)をしろと言ってきているのが、非道で、非倫理的、違法だと思いました」(英・諜報機関GCHQ元職員 キャサリン・ガンさん)

キャサリンさんは、このメールを新聞社へとリークします。記事の反響は大きく、職場では情報漏えいの犯人捜しが始まりました。自ら名乗り出たキャサリンさんは、逮捕されることに。

「公務員は、時の政権与党の下で働かなければなりませんが、その給料は国民が払った税金ですから、公務員は国民のために働くものです」(英・諜報機関GCHQ元職員 キャサリン・ガンさん)

戦争を止めなければという信念は、かつて広島で働いていた経験から芽生えたといいます。

「(広島で)お年を召した方にいろいろな話を聞き、戦争がどれほど恐ろしいものかを肌で感じました。戦争というのは、まさに軍や軍需産業だけのためにあるのではないかと」(英・諜報機関GCHQ元職員 キャサリン・ガンさん)

キャサリンさんの内部告発後、アメリカとイギリスは国連での多数派工作を諦め、国連決議なしでの攻撃に踏み切りました。

「(戦争は止められなかったが)私が報われたと感じるのは、国連がイラク侵攻の決議を許さなかったことです。私が機密メールを内部告発した後は、国連を操って攻撃を正当化するという彼ら(米英政府)のたくらみは阻止されました」(英・諜報機関GCHQ元職員 キャサリン・ガンさん)

「攻撃プロセスの間違いを認めます」(イギリス ブレア元首相 2016年)

のちにイギリスではイラク戦争の検証が行われ、国連決議なしの攻撃について「合法性はとても十分とは言えない」と結論付けられました。キャサリンさんは内部告発者として名誉が保たれたのです。

逮捕から17年、映画のヒロインとなったキャサリンさんですが、自分は幸運だったと強調し、世界中の政府機関で声を上げることが難しい内部告発者の保護を訴えています。(17日14:36)