向き合って歌えない・・・ オペラの感染対策 舞台裏に密着

JNN/TBS
2021年4月8日 (木) 20:38

コロナ禍で試行錯誤が続くエンターテインメント業界ですが、中でも大きな声で歌うオペラの感染対策は一筋縄ではいきません。外国人スタッフの来日も不可能に。公演の舞台裏は苦難の連続でした。

今月4日から東京の新国立劇場で上演されているオペラ「夜鳴きうぐいす/イオランタ」。マスクなしで歌うため、緻密な感染対策が練られていました。

先月7日の稽古初日は、こんな確認から始まりました。
「基本的に向かい合っては歌いません。向かい合ってのときはよけないと」
「4mとか6m離れないといけないので。近づいて行っても歌うとなったら離れて歌うみたいなことを常にしていただくことになります」

大きな声で歌うことが大前提のオペラ。当然、飛沫リスクも高まります。歌うときの体の向きや距離をシーンごとに厳格に決めながら、稽古をしていきます。歌うときも含め、稽古中は全員がマスクを着用。小道具を触ることがある出演者は、必ず手袋をつけるようにしました。感染防止を徹底するあまり、こんな場面も・・・
「近くまで行けない。本当だったら肩つかむとかなんとかするんだけど。どこらへんでブレーキをかけなきゃいけないっていうのがある」
「距離感がね、難しいですよね」
「だから僕、あまりにも行きそうになったら、もう逃げてください」

今回の公演には、もうひとつ大きな課題がありました。入国制限のせいで、フランスから演出家が来日できず、リモートで演出することになったのです。演出家の提案は、衣装やメイクについてまで。劇中で死神がつけることになっていたマスクをやめて、白塗りのメイクにしたいと、演出家側が言いますが・・・
「もう一度、マスクからメイクに変える理由というのを伺ってもいいですか?」
「突然思いついたんですが、歌手の顔が見えたほうが良いと思ってしまって」(アーティスティック・コラボレーター アンヌ・ブランカールさん)

主役を務める大隅智佳子さんは・・・
「カメラを通してしか見ていただけないので、やっぱりきっと演出家の方も、劇場のすべての空間をその瞬間に見きれるわけではないと思うので」(オペラ歌手 大隅智佳子さん)
「もちろん歌い手たちと接触できないフラストレーションは常にあります」(演出家 ヤニス・コッコス氏)

海外の演出チームと日本の出演者やスタッフ。お互いが粘り強くコミュニケーションをとり続け、問題を克服していったのです。

「演出家が作りたいと思っている舞台をいかにして、こちらが理解して体現するかっていうことを、今、日々考えて稽古しているところです」(オペラ歌手 大隅智佳子さん)

感染対策をとるのは、歌手だけではありません。オーケストラの演奏は通常、舞台前の低くなったオーケストラピットという場所で行われます。しかし、すべての楽器が入ると、この場所が「密」になってしまいます。そこで打楽器の一部は、舞台袖で演奏することにしたのです。演奏を合わせるため、舞台袖では副指揮者がオーケストラピットにいる指揮者の映像を見ながら指揮します。

こうしたさまざまな工夫に加え、全出演者とスタッフは定期的に検査を受け、陰性を確認しつづけました。そして・・・細やかな感染対策で、オペラ公演が実現したのです。

劇場の責任者は・・・
「ディスタンスとか、いろんな配慮をしながらも、絶対に公演を止めないようにしたいという信念があったんです」(新国立劇場 芸術監督 大野和士さん)

公演は、今週日曜日まで続きます。(08日18:26)