医師のブレイクスルー感染は抗体切れ? 第6波はくる!ブースター接種の適切なタイミングは?

JNN/TBS
2021年10月13日 (水) 12:03
医師のブレイクスルー感染は抗体切れ? 第6波はくる!ブースター接種の適切なタイミングは?

新型コロナウイルス感染者の減少やワクチン接種率の上昇を受け、緊急事態宣言の解除、行動制限緩和と政府が“元の生活”へ戻る方向に舵を切り始めた。一方で、連日ブレイクスルー感染の報告が相次いでいることも事実だ。ワクチン接種によって多くは重症化を抑えられているが、中には中等症以上の症状が出て、苦しむ人もいる。

その一人、都内の大学病院に勤務する医師(43)は今年の春、医療従事者としてワクチンを先行接種したが9月初旬にコロナに感染。中等症1としてホテル療養した。医師は「ワクチン接種による抗体が切れていたのでは?」と推測する。

■万全な感染対策をしても・・・医療従事者の感染

「何だろう、このなんとも言えない気怠さは・・・」

都内の大学病院に勤務する医師(43)。9月1日の夕方、勤務中に突然、体中に悪寒が走った。インフルエンザを発症する時のような、これから高熱が出そうな、何とも言えないあの倦怠感。その日は、自身が勤務する病院で、いつも通り診察を終え事務作業をしていた。嫌な予感がした医師は「まさか・・・」という思いですぐに上司に連絡。まだ仕事が残っていたが、急遽帰宅した。

医師の勤務する病院では、新型コロナウイルスの感染を早期に発見するため、職員はすぐに抗原検査を受けることが出来る。そのため、結果が分かるのは早かった。陽性―。「なぜ、自分が・・・」という思いがまずは先だったという。
「どこで感染したか、本当に思い当たらない」と医師は言う。医療従事者の感染は、たった1人であっても患者や周囲に大きな影響を及ぼす。それゆえ医師は自身が率先し、職場での感染対策に当たってきた。勤務中はアイゴーグル、マスクを装着し、何かに手で触れる度に消毒を繰り返した。髪の毛を触ったり、鼻や口に手を当てるなどの“不潔”とされる行為も一切していない。通勤中やプライベートでも人混みは避け、もちろん外食もしていなかった。「これほど注意しているのだから、自分は感染しないに違いない」という自負があった。それなのに、感染してしまった。
「医療者として失格だ・・・」
口惜しさと自責の念がこみ上げるも、体調は急激に悪化し意識は朦朧(もうろう)とした。

帰宅後、夜10時には体温が38度を越えた。体中の節々が痛くなり、呼吸も苦しい。医者であるため、理屈ではワクチン接種で重症化を防げることは分かっていたが、持っていたサチュレーションモニターで血中の酸素飽和度を計ってみると数値は「93%」。通常、健康な人がマラソンなどをして息苦しい状態でも、せいぜい「95%」くらいの数値だが、それを下回る。死への恐怖が一瞬、脳裏をよぎった。
保健所と連絡がとれていたため、酸素飽和度の値を伝えたところ「中等症1」として、ホテル療養が決定した。発症から3日経っていた。

■ブレイクスルー感染 感染する人としない人の違いとは?

医師はワクチン接種を2回終えたあとの「ブレイクスルー感染」ということになる。厚労省専門家会合の資料によると、感染者の人口10万人当たり、ワクチン未接種者が67.6人いるとしたら2回接種済みの人は4人、すなわち「ブレイクスルー感染」する人は未接種者の17分の1程度とされる。

このことから、ワクチンによる一定の感染予防効果は発揮されているとわかるが、ではワクチンを2回接種しても、感染する人としない人の違いとは何か。その主な原因として考えられているのが、以下だ。

(1)ワクチンの効果が十分に発揮されていない
(2)ウイルスの伝播性が高くなっている
(3)多くのウイルスにばく露する(さらされる)
(4)ワクチンの効果が低下している

■ワクチンの抗体価 思いのほか早く低下する可能性

日本国内のワクチン接種状況は10月8日時点で1回接種が総人口の72.8%。2回接種が63.1%と6割を超えた。しかし、ここで注意すべきなのが「一番最初に打ち始めた時から、どのくらいの期間が経っているのか」ということだ。

日本では、一般の医療従事者の接種は2021年3月上旬に始まり、現在、医療従事者等への接種は概ね完了した地域もあるとされる。

名古屋市の藤田医科大学が8月に実施した教職員209人を対象に行った調査によると、ファイザー社製ワクチンの2回目接種から3か月後には抗体価の平均値がピークの量の4分の1まで低下したことが明らかになった。また、高齢者はそもそも抗体価が上がりにくいことも分かった。

■第6波への備え「ブースター接種は可能なら2回目接種から4か月後頃が望ましい」

厚生労働省は「ブースター接種」と呼ばれるワクチンの追加接種について、今年3~4月に2回目の接種を受けた医療従事者ら104万人については、早ければ12月に追加接種するという方針を決めた。接種間隔は2回目接種からおおむね8か月後としていて、高齢者らのブースター接種も年明けから始まる見通しとなっている。

しかし今回、コロナにブレイクスルー感染した医師は、3月中旬に1回目、4月上旬に2回目のワクチン接種を終えていた。9月上旬にコロナを発症したので、まさに2回目接種から5か月というタイミングでの感染だった。感染の主因とまで断定できないが、“抗体価の低下”が影響した可能性も排除できない。

人間行動分析が専門の東京大学大学院の大澤幸生教授のシミュレーションによると、2回目接種から「8か月以上後」に3回目接種を行う場合、2022年2月に感染者急増の第6波が起こる可能性があると示された。これはワクチンパスポートを導入していたとしても、感染者、重症者ともに大波となることが懸念されると言う。

「可能ならば、抗体価が大きく落ちる2回目接種の4か月後頃から3回目接種を始めるのが望ましい。とはいえ、1回目、2回目の接種時のような自治体による接種(大規模を含む)以外に、12月ごろから個別の医師の見立てで抗体が減弱していると見られる人から接種していくのを奨励する方法が良いのではないか」(東京大学大学院 大澤幸生教授)

政府の現状の方針通り、医療従事者の追加接種が12月になるとすれば、その前に抗体価が減少している医療従事者が一定数出てくることも想定し得る。また、第5波では比較的抑えられていたとされる高齢者の重症化なども増加が懸念される。

前述のコロナに感染した医師は8日間のホテル療養を終え、無事退所することが出来たが、発症から1か月以上経った現在も激しい運動をしているわけでもないのに、勤務中に強い発汗、倦怠感、そして止まらない咳に悩まされている。
そして、今の心境をこう語る。

「感染者の人数は減ったと言っても現在もそれなりに出ている。緊急事態宣言が明けてからまるでコロナがいなくなったかのような振る舞いをしている人を見ると、大変悲しくなる」(12日13:44)