ソニーEV市場参入でどうなる?自動車産業の新時代と世界の動向思惑【報道1930】

JNN/TBS
2022年1月15日 (土) 08:50
ソニーEV市場参入でどうなる?自動車産業の新時代と世界の動向思惑【報道1930】

去年EUが2035年までにハイブリッド車を含むガソリン車の新車販売を禁止すると決定するなど、カーボンニュートラルの波にさらされる自動車産業は大きな変革期にある。GAFAの一角アップルのEV(電気自動車)参入も報道され、インテルも中国の自動車メーカーとの共同開発を発表。中国のネット大手バイドゥも来年からEV量産に入るという。

そんな中、先日ソニーグループがEV市場への参入を発表し話題となっている。

■「驚きじゃない~ソニーは何をやってもおかしくない会社」

ゲームとエンターテインメントで業績好調なソニーが、今なぜEV生産に?驚きの中、番組では、ソニー出身で競争戦略を専門とする早稲田大学大学院・長内厚教授に聞いた。

早稲田大学大学院 長内 厚 教授
「これは驚きじゃない。というのはもともとソニーって何をするか決めて作られた会社じゃない。最初、炊飯器作ろうと思って失敗してテープレコーダーやった会社なんですよ。かつて東京通信工業から社名変更するとき銀行から“ソニー電子株式会社“にしろと言われたが、(創業者の盛田昭夫氏が)『この会社が将来いつまで電子産業やってるかわからないからソニー株式会社でいい』と突っぱねたっていう話があって、実際に音楽も40年以上前からやってる。そう考えるとソニーって何をやってもおかしくない」

こうしたソニーの特性もあるが、そもそもEVそのものが、アップルやソニーに向いている業種でもあると経済ジャーナリストの井上久男氏は指摘する。

経済ジャーナリスト 井上久男氏
「EVというと電池やモーターが注目を浴びるが、実はEVはソフトウエアの塊なんですね。ソニーはすでに自分たちの部品をトヨタに納めたりしてるわけで、EVになると(ソフトウエアに強い)自分たちの領域が強みになっていく。(中略)スマホもソフトウエアの塊。スマートフォンに4つのタイヤが付いて動くというイメージでいいと思う」
EV市場への新規参入は経済の活性化にもつながり、政界でも期待されている。

自民党・西村康稔 前経済再生相「楽しみです。是非早く面白い車を出して欲しい。(中略)ソフトウエアと電池があれば車が作れる、そんな時代になってきた・・・」

一方で、既存の自動車メーカーにとっては他業種からの参入は脅威に違いない。

■「不確実性に対しては、多様性で応える」

新車販売台数で世界のトップに立つトヨタだが、自動車メーカーの脱炭素化ランキングでは、最下位とされた(環境保護団体・グリーンピース発表)。
これに対してトヨタは、2030年までのEV世界販売目標を350万台に引き上げ、EV化への積極姿勢をアピールする一方でハイブリッド車、燃料電池車の開発にも力を注ぎ続け、水素エンジンにまで開発を広げている。
EV一本化のメーカーも出始めている中での、トヨタの“全方位戦略“について聞いた。

早稲田大学大学院 長内 厚 教授
「不確実性に対しては、多様性で応えるのがいいというのは経営学の中では色んな学者が言っている。わからないんですよ、先が。(中略)夢の脱炭素自動車は、EVとは限らないんじゃないか?今まだ模索している段階なんです」

“脱炭素はの答えは水素かもしれない”という声に対しては、水素ステーションがそんなに作れるのかという疑問が上がるが、それはEVも同じで、先進国はいいが、世界津々浦々まで電気ステーションが本当に作れるのか・・・、と長内教授は今の段階でEV一本化に決める危うさを語った。更に・・・。

早稲田大学大学院 長内 厚 教授
「“せーの“で石油を使わなくなるならガソリンはなくなるんですが、他の石油製品が残っている以上、原油から一定の割合でガソリンが精製されてしまう。これどうするんですか?つまりトヨタの全方位戦略は僕は正しいと思います」

経済ジャーナリスト 井上久男氏
「トヨタは(子会社で軽自動車からトラックまで作る)フルラインメーカー。となるとハイブリッドが適しているのか、燃料電池が適しているのか、EVが適しているのか、車の大きさによっても変わってくる。トヨタのラインナップから見ると、全方位でやっておくしかない」

確かに今の技術で大型トラックをEV化すれば、巨大で重い電池を搭載しなければならない。更にEVにはいくつもの課題が残されている。猛暑地でエアコンを使えば走行距離が大幅に減り、電池の劣化も進む。また寒さにも弱く寒冷地ではバッテリー能力が半減する場合もある。廃棄される電池の処理についてはまだ未解決で環境への影響も問題視されている。

ではなぜ、ヨーロッパはEV化ばかりを推し進めるのか?そこには様々な思惑が見え隠れする。

■「ヨーロッパはEVで行くしかなかった」

次世代のクルマ社会への目標は世界で微妙に違う。日本と中国はハイブリッドを禁止せず、アメリカは2030年までにガソリン車の新車販売を50%以下に抑え、50%以上をPHV車、燃料電池車、EVにする。

EUは2035年までにガソリン車、ハイブリッド車共に新車販売禁止。更に車の生産から廃棄までのCO2総出量の規制を検討していて、化石燃料で作った電気をもとに稼働した工場での生産品の輸入を認めなくなる方向で動いている。結局EUだけがかなり厳しい。これはなぜか?

早稲田大学大学院 長内 厚 教授
「ヨーロッパはそういうふうに追い込まれたからだと思います。日本のハイブリッド技術に対抗できなくて、ヨーロッパメーカーはクリーンディーゼルを押そうとした。ところがそのクリーンディーゼルに性能偽装があって、(クリーンじゃないことがわかってしまい)一気に内燃機関のイメージが悪くなった。(中略)だからもうEVで行くしかなかった。でも怖いのは、ヨーロッパっていうのは、環境問題などをあげ、それをあたかも正しいことであると主張してルール化することなんです」苦肉の策で始めた戦略がいつしか正しい姿になっていくのが、ヨーロッパの“ルール作りの巧さ”だと長内教授はいう。

環境という大義名分を掲げる欧米だが、そこには中国を含めた経済の覇権争いの面も垣間見える。何がデファクトスタンダードになるのか…。日本経済の根幹を担ってきた自動車産業の未来はどうなるのか。今しばらく動静を見守りたい。

(BS-TBS『報道1930』2022年1月11日放送より)