「ロシアは本土がやられないから何波でも攻めてくる」“専守防衛”で戦うウクライナから日本は何を学ぶのか?【報道1930】

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2022年5月13日 (金) 17:46
「ロシアは本土がやられないから何波でも攻めてくる」“専守防衛”で戦うウクライナから日本は何を学ぶのか?【報道1930】
ロシアの侵攻に、防衛戦を続けるウクライナ。その戦いを見て、かつて日本の自衛艦隊を指揮した香田元司令官はこう言った。

「ウクライナの戦いは“専守防衛”だ」

確かにウクライナは強力に抵抗し、エリアによっては反転攻勢に出ていると伝えられるが、それも基本的にはウクライナ領で行われている戦い、ロシア領土内への攻撃ではない。

この“専守防衛”とは、日本の場合の防衛戦略の基本姿勢を指す言葉だ。有事の際、日本がとるべき姿勢を現在進行形で目の当たりにしている今、私たちはウクライナの戦いから何を学ぶべきか議論した。 

 

■「ロシアは本土がやられないから何波でも攻めてくる」


日本が選択した戦いの形“専守防衛”とは、どんな戦争なのか、今回のウクライナで起きている事で確認しよう。

香田洋二 元海上自衛隊自衛艦隊司令官
「押し寄せてくるロシア軍を領土内で押し返すのが精いっぱいのウクライナの戦いは、今まで日本が70年間言ってきた専守防衛と同じ図式。大国ロシアは本土がやられないから限りなく何波も攻めてくる。(中略)専守防衛の典型的事例です。特にミサイル攻撃、長距離砲で病院とかを狙った狙わないは別にしても、最終的に国内のインフラのほとんど、コンクリートの建物のほとんどが破壊されるという中で防衛戦をやらなければならない。それが専守防衛なんです」

結局、自国が攻撃されるばかりで、相手はエンドレスに続けられるのが“専守防衛”の戦い。今マリウポリなどの映像に見られるような、悲惨な中での戦いを日本も覚悟するほかないのか?ただし、日本とウクライナでは様々な点で事情が違う・・・。

 

■「脅威の方程式というのがあって・・・脅威=攻撃する側の能力×意志」


ロシアがウクライナへの侵攻を決断した理由に、アメリカが“NATO加盟国ではない国ウクライナのために軍を動かすことはない”と表明していたことと、クリミアでの成功体験からプーチン氏が“ウクライナは弱い”と思っていたことがあるといわれる。つまりロシアにとってウクライナには“脅威”がなかったのだ。“脅威がなければ攻めやすい”。ここがウクライナと日本の最大の違いだ。

共同通信 久江雅彦 編集委員
「専守防衛といっても日本の場合は日米同盟がある。アメリカが来るまで日本が戦えば、あとは集団的自衛権で日本のためにアメリカが一緒に戦う。(アメリカはどの国にとっても脅威に他ならない・・・)脅威の方程式っていうのがありまして、攻撃する側の能力×意思。いまは意思はゼロですがとにかく米軍は怖い・・・。ウクライナを見て日本もまずいと冷静さを欠くのは良くない」

確かに軍事同盟を持たなかったウクライナに対し、日本は敵に回したら“脅威”そのもののようなアメリカと同盟を結んでいる点で全く違う。

またウクライナともう一つ違う点として、海に囲まれた分、日本に特に欠けていること、備えるべきものがあると香田元司令官は言う。

香田洋二 元海上自衛隊自衛艦隊司令官
「海に囲まれた日本の場合、大陸国であるウクライナのように、ポーランドなど陸続きの友好国を持たないので避難民をどうするのかが大きい。海外に出せない以上、子供や老人をどうするのか。それから自衛隊は、態勢はあるが実戦経験がない。能力は高いんですが、隅から隅まで明日できるかというと・・・。(中略)燃料だけはオイルショックの経験から200日分世界一の備蓄を持っていますが、食料、弾薬の備蓄はどうなのか。ある時にアメリカと一緒になるんでしょうが、何日と想定してやればいいのか。昔はそういう心配すると『自衛隊の考えることじゃない』って怒られましたが・・・安全保障は起きるか起きないかではなく、起きたらどうするかですから今から準備しなければならないし、せめて議論をしておかなければならない」

結局、長く平和が続いた中で日本人は、それほど深刻に戦争について考えてこなかった。

最善策は、外交を駆使して戦争をしないことだと小野寺元防衛大臣は言う。

小野寺五典 元防衛大臣
「今回ウクライナはプーチンの誤解によってこんなことをされてしまった。つまり“ウクライナは弱い”“守ってくれる仲間はいない”、逆のことを言えば“日本は強い”“万が一の時には同盟国アメリカだけじゃなくオーストラリアやイギリス、いろんな国が応援してくれる”そうなったら手が出せないじゃないですか。今回学ぶことは自分たちが強くなること、そして仲間と手を携えること。それが戦争を起こさない一番の方法。起こしちゃダメです」

しかし、小野寺氏は、島国である日本は相手に責められた時は、専守防衛だとしてもウクライナのような戦い方はできず、相手の領内への攻撃も考えなくてはならないと主張する。

小野寺五典 元防衛大臣
「日本は島国です。そうすると最初は飛び道具でドンドンやられてしまう。そうすると反撃するには・・・戦車であれば戦車に対抗するんですが、飛んでくるのは相手の領土からの飛び道具“弾道ミサイル”なんです。だからそこまで届くものを持っていないと食い止めることができないんです。だから、今回そういう反撃能力を持たなければいけないと、難しいですよねと、(自民党で)提言させていただいている。日本が変わったのではなく、戦争の戦い方が変わったのです」
 

■どんな時に反撃?「アメリカの情報の正確性は2割」


日本は相手が撃ってきてから反撃するのか、それとも相手が撃つことが分ったら、その時点で拠点を撃つのか。これは長いことグレーゾーンで扱われてきた議論である。今回ウクライナへの侵攻で、事前にアメリカの情報当局はロシアの“攻撃の意思”をピタリと当てていた。では、どのくらいの攻撃の意思で日本は専守防衛として相手国に攻撃ができるのだろうか。

香田洋二 元海上自衛隊自衛艦隊司令官
「本音で言えば、アメリカの情報について私は正確性を2割しか見ないですよ。5割もあれば戦争にならない。今回、ドイツも間違えて海軍司令官がクビになった。スウェーデンも総司令官はロシアは侵攻しないといった。(中略)アメリカがこれまで違ったことはゴマンとあるんですよ。アメリカの情報が水戸黄門の印籠になってはいけない。(大事なのは)客観的に見てこれだ!いうこと。特に軍事作戦だと間違うと部下は死にますし、目標も達成できませんし、だから総合的にあとの8割は人が、日本が関与するんですよ。そういう能力を養わなければならない。(中略)ただ、相手の国に手を出せないとなると、ウクライナのようになるのズタズタで議論しなければならない」

共同通信 久江雅彦 編集委員
「ポイントは不可逆性。相手が日本を壊滅させるといって、ミサイルを直立させて、燃料を注入して。と石破さんが防衛大臣の時に事例を3~4つあげてそれが政府の見解になっている。しかし、それすらも相手が強い言葉で言ったけど本気でやろうと思っていなかった、といえるのでグレーゾーンはグレーゾーンなんです」

小野寺五典 元防衛大臣
「今までの国会議論の整理をすると、相手が日本を攻撃する意思がはっきりしていて、その準備がされていて、撃たれることが明々白々であれば、すでに武力攻撃を受けているという事態認定をして日本から攻撃をすることはできる。(中略)判断は日本政府の政治判断。それは総理大臣の判断で日本が武力攻撃を受けていると判断して反撃する。ただ、どのことがそうでどのことがそうじゃないと、きれいに例示してしまうと日本を攻撃しようとしている相手に逆に手の内が明らかになります。ですから最終的には日本が武力攻撃を受けるという明々白々の証拠があり、状況があり、政治の意思があり国民を守るために自衛隊を出動させるということに尽きる」

 

■「日本は攻めても守っても強いんだ。これを目指したい」


専守防衛のためにも相手に向けた攻撃能力の向上、さらに小野寺氏がもうひとつ強調したのは守備能力の整備だ。

小野寺五典 元防衛大臣
「ウクライナはソ連時代かなり地下に防空壕も作っている。日本は大深度の地下鉄、あるいは地下街などが使えるのではないか、その場合はシャッターを厚くするとか、エアフィルター、水とか非常電源をちゃんとしておけば、万が一の時にシェルターとして役立てるものがあるんじゃないか。日本は攻めても守っても強いんだ、そして反撃能力もある。だから手を出せない。私たちは是非これを目指したい。これがウクライナから学ぶことです」
    
(BS-TBS 『報道1930』 5月11日放送より)