東京五輪銅を上回る8m27で世陸代表を決めた走幅跳・橋岡優輝 世界と戦う力示し優勝した日本選手権

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2022年6月23日 (木) 06:06
東京五輪銅を上回る8m27で世陸代表を決めた走幅跳・橋岡優輝 世界と戦う力示し優勝した日本選手権
7月の世界陸上オレゴン代表選考会を兼ねた第106回日本選手権(大阪市ヤンマースタジアム長居)。男子走幅跳は大会4日目の6月12日に行われ、東京五輪6位の橋岡優輝(23、富士通)が8m27(+1.4)で優勝。世界陸上参加標準記録(8m22)の突破と日本選手権3位以内を同時に達成し、世界陸上代表に内定した。

橋岡は今季屋外初戦で足首を痛め、2戦目の木南記念(4月30日)は2回の跳躍だけ跳んで3回目以降を棄権した(7m76・±0で3位)。それから6週間で「オレゴンに向けて良い状態になってきている」というところまで復調してきた。

故障明けでも助走感覚を取り戻した橋岡

一度の試合出場で、オセロのように多くのマス目の色を変えてしまう。橋岡の日本選手権はそんな大会になった。
「跳躍練習を再開したのは先週です。めっちゃ不安でした」という状況で大阪に乗り込んできていた。だが1回目こそファウルだったが2回目で8m27(+1.4)を跳び、優勝をほぼ決定づけた。足首への負担を考えて3回目と4回目をパス。「久しぶりだったので、単純に跳びたかった」と、5回目に8m21(±0)をマークし安定したパフォーマンスを見せた。

東京五輪の予選通過記録は8m15で、実際には7m96の選手まで12人で行われる決勝に進出した。決勝の銅メダル記録は8m21。安定して8m20以上を跳べば世界大会でも戦える。

木南記念後の復調プロセスを次のように説明する。

「(足首の痛みで)カーブを走ることができなかったので、直線を折り返して走ったり、重たくない重量でウエイトトレーニングをしたりして、フォームと、どこに効かせるかをすごく考えて練習しました。バンドを使った足首周りのメニューや、腹筋のメニューなど補強系のメニューも増やしました」

跳躍練習を再開してすぐに日本選手権だったが、橋岡はもともと跳躍練習が少ない方だという。世界トップレベルの踏み切りはやはり、体への負担が大きい。力加減を抑えた跳躍練習もあるので一概には言えないが、跳躍練習の本数を簡単に増やすことはできない。自身の踏み切りの感覚を数少ない跳躍で戻すことができるのは、跳躍選手にとって大きな武器となる。

そしてやりたい踏み切りをするには、やりたい助走を行うことが前提となる。そこが日本選手権ではしっかりできた。

「今シーズンは助走の(重心への)乗り込みがあまり良くありませんでしたが、今日は伸びやかな助走ができました。久しぶりに8m36(+0.6)を跳んだときに近い感覚が得られた助走でしたね」

それが「オレゴンに向けて良い状態になってきているのかな」という一番の根拠になった。

2本でやめなかった理由は?

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2回目の8m27で優勝と世界陸上代表内定は確実になった。足首は「9割5分治っている」が、踏み切りを繰り返すと再発のリスクは大きくなる。3回目以降の試技は全てパスする選択肢もあったが、もう1本跳んだのは何故か。前述した「久しぶりだったので、単純に跳びたかった」というのが率直な思いだが、オレゴンのことを考えての選択でもあった。

「2本目の跳躍(8m27)で何かをつかんだというか、助走の感覚を取り戻せた感覚がありました。この感覚でもう1本跳びたいな、という欲が出たんです」

故障をして新たなメニューにも取り組み「ケガの功名というか、体の使い方がまた一段階上手くなったかな」という。その結果として助走も、以前とは違う感覚ではないか? という質問も出たが「新しい感覚というより、崩れていたのが元に戻ったことの方が大きい」と橋岡は答えている。

だが、次のようにも話している。

「オレゴンまでのノビシロは未知数かな、と思います。世界陸上までの1カ月で何がつかめるか、自分でも正直、わかりません。ケガが治ったからと補強メニューをやめるのでなく、もっとインナーの部分、(体の使い方の)細かいところに目を向けながら強化していけば、いいところにつながっていくのかな、と思います」

大きな意味では元の感覚に近い感覚を得られたが、その中でも新しい跳躍につながる予兆が少しはあった、ということだろう。

少ない跳躍練習で助走と踏み切り感覚を取り戻すことができる橋岡なら、時間が許すぎりぎりまで新しいことにも取り組める。直前まで故障の影響で跳躍練習ができなくても、世界で戦うレベルの8m20以上を跳んだ日本選手権で、それを改めて確認できた。

橋岡はオレゴンでも、8m20以上のジャンプを確実にしてくれるだろう。決勝で8m30台を跳べばメダルも見えてくる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)