FRBの「歴史的な失敗」も 予想上回るアメリカの物価高 「悪い円安」が続く日本への影響は?【Bizスクエア】

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2022年7月23日 (土) 09:06
FRBの「歴史的な失敗」も 予想上回るアメリカの物価高 「悪い円安」が続く日本への影響は?【Bizスクエア】

歴史的な物価高が続くアメリカでは、6月の消費者物価指数が市場の予想を大きく上回り、前年同月比9.1%の上昇となった。約40年半ぶりの高い伸び率だ。市場では、FRB(連邦準備制度理事会)が7月にも通常の4倍となる1%の大幅利上げに踏み切るとの予測が強まっている。一方、日本では円安の悪影響も懸念される。現在の状況をどう見ればいいのか。専門家に聞いた。

■FRBが目指すのは「居心地のいい景気後退」

 FRBが急速な利上げでインフレ対策を優先するのはなぜか。



ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏:
FRBは景気や雇用を犠牲にしてでもインフレ対策を優先しなければならないと考えているわけです。むしろ景気を後退させた方がいいということだと思います。ただし、一般的な景気後退とは違い、いわゆる不況のような状況とは違います。むしろ物価が少し下がっていき、賃金の伸び率と足並みがそろってきて、いまよりも居心地が良くなっていく「居心地のいい景気後退」というイメージかと思います。

■円安は家計や中小企業にとっては打撃、輸出企業にはメリット

一方、アメリカのインフレの影響は日本にも及んでいる7月14日、外国為替市場で円相場は一時1ドル139円台をつけた。これは1998年9月以来24年ぶりの円安水準だ。急速な円安の進行による日本企業や家計への影響は?



ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
10月から11月の中間決算時に輸出企業の多くが通期見通しを上方修正する、いわゆる上方修正ラッシュのようなことが起きると思っています。一方、内需企業にとって円安は打撃ですから、内需企業は下方修正が相次ぐかもしれません家計にとっては打撃、中小企業にとっても打撃、輸出企業にとってはメリットということだと思います。

■FRBの「歴史的失敗」の可能性も

アメリカの6月の消費者物価指数は前年同月比で9.1%伸びており、予想を上回り、加速している。これをどう見たらいいのか。

熊野英生氏(第一生命経済研究所 首席エコノミスト):オイルショック以来のものすごいインフレです。アメリカは3月以降急激に利上げしているのですが、いまのところ全く効いてないという数字が9.1なのだと思います。



アメリカではありとあらゆるモノが値上がりしているがどう見る?

第一生命経済研究所 熊野英生首席エコノミスト:
日本ではガソリン、電気、食品が値上がりしていますが、アメリカは航空運賃や新車、住居にも及んでいます。新車は半導体が手に入らないので納品が半年、1年と遅れる。したがって中古車も売れるという、供給不足で価格が上がっています。住居も木材や金属が高いから高騰している。新車と住居は世界経済の構造が、需要が強いからインフレというよりは供給不足、例えば対ロシア制裁の影響や対中国の経済安保などで物流が滞っていると。だから、そう簡単に物価下落に転じない。供給側のインフレが後ろにあるのだということを物語っているのではないか。



一方、FRBは今年3月から3回利上げしてきた。今回の消費者物価指数9.1%ショックを受け、さらに1%利上げするのではないかとの観測が出て、株価も急落する局面があった。FRBの対応は難しくなっている。

第一生命経済研究所 熊野英生首席エコノミスト:
インフレに対していままで薬を飲んできたが、効かないからもっと強い薬を飲むのではないかということで出たのが1%。連邦準備銀行の総裁などは0.75%と火消しに回ったのですが、22年の12月まで毎月0.75%ずつ上がるのではないかという恐怖感も市場にはあると思います。



ここまで急激に利上げすれば、景気が後退するのではないかとの懸念が出る。そこで出てきているのが「スタグフレーション」という言葉だ。FRBのパウエル議長は物価が下がって、景気は落ちないという「居心地の良い景気後退」を目指しているが、中々、そうはいかないと見ている人が増えてきている。

第一生命経済研究所 熊野英生首席エコノミスト:
FRBは今回、歴史的に失敗する可能性があります。これは引き締めが遅れたというのもありますが、オイルショックの時も同じでしたが、供給側の要因でインフレが高止まりしているので、利上げしてもなかなか効かない。利上げするとインフレ率は高止まりして景気が悪くなる。これがいまアメリカを中心に真実味を増しているスタグフレーションの図式です。

■「悪い円安」が進行し、日本経済は世界でも「分が悪い」

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一方、日本でも物価上昇が起きている。日本の6月の企業物価指数は前年比で9.2%の増加となり、これで16カ月連続の上昇となった。

第一生命経済研究所 熊野英生首席エコノミスト:
日本では全然、インフレが起きていないのではないかというが、それは全然違っている。企業間では日本でも物価は高く、とくに注目したいのは輸入物価です。円安の影響もあり、6月は前年比で46%も上がっています。その2割は円安が後押ししているので、日本のインフレというのはアメリカと少し違い、輸入インフレ、外からやってくるコストプッシュインフレだというのがこの数字の意味合いだと思います。もともと円安の要因だと言われていたアメリカの長期金利は下がっているが、円は引き続き売られ安くなっているという乖離現象が起きている。



第一生命経済研究所 熊野英生首席エコノミスト:
まさにこれは「悪い円安」が進行しており、日本経済の実力よりもはるかに円が下落しているので、このトレンドを止めないと円安は日本経済にとってコストプッシュという形で景気を下押ししてくるのではないでしょうか。

中国経済の失速、アメリカやヨーロッパでの景気後退懸念がある中、日本経済の先行きは?

第一生命経済研究所 熊野英生首席エコノミスト:
日本はものすごく分が悪くなってきています。景気全体は製造業の輸出がかぎを握るのですが、アメリカは利上げで苦しい、中国もここに来て低調だと。日本にとっては製造業の輸出先のけん引役としてのアメリカと中国の両方が動かなくなってきているので、輸出も悪い、国内も消費が厳しいという非常に分が悪い状況で、日本経済に不安が台頭してきている感じがします。

(BS-TBS 『Bizスクエア』 7月16日放送より)