「ただ殺されるのを待っていた。こめかみに銃を突き付けられ…」ロシア軍の捕虜となったウクライナ兵が語った恐ろしい体験【国山ハセンキャスター取材】

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2022年8月13日 (土) 07:00
「ただ殺されるのを待っていた。こめかみに銃を突き付けられ…」ロシア軍の捕虜となったウクライナ兵が語った恐ろしい体験【国山ハセンキャスター取材】

あごひげを蓄えた長身の男性がカメラの前に現れた。表情は穏やかだ。
ロシアの捕虜となったウクライナ兵・ニカライさん。捕虜交換により解放され、いまは故郷に戻って療養している。
国山ハセンキャスターのリモートインタビューに、捕虜になったいきさつから、静かな口調で語り始めた。

それは壮絶な体験だった。

執筆:
「TBSテレビ つなぐ、つながるSP 戦争と嘘=フェイク」
プロデューサー・山岡陽輔

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ニカライさん:
「私たちは、ロシアの空挺部隊と戦っていました。相手の装甲車3台を破壊しましたが、近くでミサイルが爆発、私は負傷しました。ミサイルの破片による傷が57か所、頭や首、左の手足はひどい状態でした。ほかに脳震盪、鼓膜の損傷もありました」

ハセン:「けがをした後、どうしたんですか?」

ニカライさん:
「爆風で飛ばされた私を、仲間が建物の中に運びました。私は自分で応急措置をしました。痛み止めを注射して、止血帯を巻こうとしましたが、左右の手足は血だらけで、顔に温かいものが流れていると感じたので触ってみるとそれは血でした。傷が非常に多かったので、どうすれば良いか分かりませんでした。それでも応急措置をして、私は戦いを続けました。でも仲間は、私を避難させるために撤退を始めたんです。そして、捕虜になりました」

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連行されるウクライナ兵

■手を縛られ地下室へ。「横になって、ただ殺されるのを待っていた」

捕虜になったニカライさん。目隠しをされて手を縛られ、どこかの民家の地下室に閉じ込められたと言う。

ニカライさん:
「6人がぎゅうぎゅう詰めの状態で拘束されていました。私はケガをして出血が多かったため寒気を感じていました。仲間と体をぴったり合わせ、体温で暖をとりました」。

ハセン:「食事は?」

ニカライさん:
「最初の3日間は何ももらえませんでした。3日後、ゆでたジャガイモを2個とたまごを1個、水を2口与えられました」

ハセン:「最初の3日は水ももらえなかったのですか?」

ニカライさん:
「そうです。私は出血で死ぬと思っていました。大量出血でずっと喉が渇いていました。冷たい鉄の板に息を吐いて、結露を作って、少しでも水分をとるためになめていました」

加えて、1日に何度も厳しい尋問が繰り返されたと言う。

ロシア軍は、ニカライさんから、銃火器の置き場や司令部の場所などの機密情報を聞き出そうとした。

それは、耐え難いほどの拷問だった。

ニカライさん:
「目隠しされたまま横たわっているんですが、ときどき尋問に呼び出されます。そこで暴行され、情報を話すように言われます。その後また目隠しされ、手を縛られたまま地下室へ。横になって、ただ殺されるのを待っていました」
「尋問では、ひざまずかされ殴られます。電気による拷問もありました。私の場合は、傷口に指を突っ込まれました。家族も危ないと脅され、自分は処刑されるとも言われました」

ニカライさんの傷

ハセン:「拷問は、暴力によるものがほとんどですか?」

ニカライさん:
「精神的な暴力もありました。仲間と離れ離れにされました。私は『仲間は処刑されたんだ』と思いました。そして私も3回『処刑する』と言われました。目隠しをされ、手を縛られ、ひざまずかされて、こめかみにピストルを突きつけられます。そして実際に撃つんです。頭には当たらないように。毎回命に別れを告げました。母と妻に別れを告げました。恐ろしかった。こめかみにピストルが突き付けられていることを感じて、射撃による熱を感じるんです。顔のすぐそばで発砲されるんです」

ケガの治療もしてもらえなかったというニカライさんだが…。

ニカライさん:
「拘束されて7日目、出血量が多くて尋問中に失神しそうになり、彼らの軍の病院に搬送され、傷から破片をとる手術を受けました」

その後、別の場所に移送されたニカライさん。
そこに、ロシアの国営放送が取材にやってきた。

その取材というのが…

ニカライさん:
「ジャーナリストたちは、自分たちのシナリオ通りに話をさせました。『ここではジュネーブ条約に従って扱われ、食事と水をもらい、治療を受けている』と言わなければなりませんでした。しかしそれは嘘です。治療を受けたのは7日目でしたし…」

さらに屈辱的だったのは、仲間の悪口を言わされたこと。

ニカライさん:
「ロシアのシナリオ通りに話さなければならなかったんです。『ウクライナ軍が悪い』『ナチがいる』『多くの兵士がアルコール中毒だ』『ウクライナ軍はロシアを恐れている』。しかし事実は違います。兵士はみんな命を捧げて自分たちの領土や国のために戦っているんです。ロシア軍が侵略して、私たちは守っています。自分たちの領土、家、家族を守っているだけなんです」

ニカライさんがロシア国営放送の取材に答えた動画は、ユーチューブで世界に公開された。ロシアのプロパガンダに利用されてしまったのだ。

■ある日…それは突然の出来事だった

朝4時に起こされ、仲間と一緒に車に乗せられたニカライさん。車内でロシア兵から意外な言葉が告げられた。

ニカライさん:
「『ロシアの兵士と交換に行くから静かにしろ』と言われたんです。そしてザポリージャ州のある橋まで連れて行かれました」

ハセン:「捕虜交換の様子を教えてください」

ニカライさん:
「私たちは向き合って歩いていきました。橋を渡ったとき、ウクライナの国旗を見ました。とても嬉しかった。その後、バスに乗ってからみんなに電話が配られ、家族の連絡先を渡されました。私たちはそれぞれ家族に電話して、『私は生きている。捕虜交換で戻ってきた』と伝えました。最高の気持ちでした」

ハセン:「ニカライさんは、最初に誰に連絡したんですか?」

ニカライさん:
「母に連絡しました。『私は生きている。元気だ』と言いました。ケガのことは言いませんでした。母親は泣いていました。生きているだけで幸せでした」

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最後に、聞いてみた。

ハセン:「軍に戻りたいという気持ちはありますか?」

ニカライさん:
「はい、あります」

ハセン:「命を落とすかもしれないと分かっていても、戻りたいですか?」

ニカライさん:
「国のためではなく、自分の家族、ウクライナ国民のためなら、覚悟はできています」。

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