「一度もないです。あったら私、犯罪者じゃないですか」有名居酒屋店主を逮捕 裏の顔は国内最大の詐欺“電話屋”か【調査報道23時】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2022年9月21日 (水) 15:18

バラエティ番組に度々出演していた居酒屋の名物店主が逮捕されました。詐欺グループに電話番号を提供する国内最大の「電話屋」だったとみられています。私たちはある詐欺事件で使われた電話番号を手がかりに詐欺グループを支える「電話屋」ビジネスの実態に迫りました。

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記者
「店から佐々木代表が出てきました。捜査員でしょうか、佐々木代表に声をかけています」

19日夜、捜査員に任意同行を求められる佐々木式部容疑者(55)。バラエティ番組にも出演する居酒屋の名物店主だ。

裏の顔は詐欺グループに電話番号を販売する“電話屋”だったのか。

記者
「この電話番号が特殊詐欺に使われると分かって卸していたか?」

佐々木式部 容疑者
「一度もないです、そんなことは。あったら私、犯罪者じゃないですか」

記者
「おばあちゃんが被害に遭っていることについてはどう思うか」

佐々木式部 容疑者
「それは大変ですよね」

■03から始まる番号…「だまされない自信があった」

私たちの取材は、ある詐欺事件から始まった。

「だまされない自信があったのでショックです」

都内に住む71歳の女性は今年2月、突然かかってきた電話で詐欺被害にあった。電話で区役所職員を名乗る男たちにだまされ、98万円を振り込んでしまった。

なぜ、信じてしまったのか。原因は電話機に表示された相手の電話番号だ。

詐欺被害に遭った女性
「これが一番最初ですよね」

電話の自動音声
「03―35…」

詐欺被害に遭った女性
「(最初が)03になっていますよね、信じますよね。これ携帯電話の番号だったら詐欺に遭うことはないと思う」

固定電話なら信用できる、そう考えてしまったという。

では、その詐欺に使われた電話番号は誰のものなのか。私たちの追跡取材が始まった。

電話番号の「03」は東京都。続く4桁は地域を表す番号になっている。

ではこの4桁は、どの地域の番号なのか。この4桁を含む電話番号を片っ端からネットで検索し、住所を地図上に落とし込んでいくと、神田周辺の地域番号であることが分かった。

ところが、奇妙なことに気が付いた。神田から離れた住所にも同じ地域番号を使っている会社がいくつかある。しかも、詐欺に使われた番号に極めて近いのだ。

それらの住所をたずねると、会社がなかったり、レンタル私書箱だったりして話を聞けなかった。

そこで、電話をかけてみると…

「どういったご用件でしょうか?」

記者
「こちらの電話番号について取材をしておりまして。こちらの電話番号はどこから購入したのか?」

「“電話屋さん”ですね」

記者
「どこですか?」

「会社名はわからないです。振込先はわかります」

“電話屋”。つまり大手電話会社とは別に電話番号を販売する会社が存在するという。

■「20回線とか買っていく」元電話屋が明かす詐欺グループの手口

どんな会社なのか。かつて、電話屋を経営していた男性が取材に応じた。正当に電話番号を販売している電話屋もあるというが、中には…

元電話屋の男性
「ろくなもんじゃない。ボロ儲けですから。NTTなどですよね、その下に一次代理店ってことですよね。ここも2倍で売ってたわけで、倍々ゲームになってますよね。元の値段から言ったら8倍とかになってる」

大手電話会社から電話番号を買う際には厳格な本人確認がある。そこで、詐欺グループは捜査の手から逃れるため、本人確認が甘い電話屋を複数はさんで電話番号を入手するのだ。

元電話屋の男性
「詐欺に足がつかないようにってことでしょうね」

詐欺グループは犯行が終わると、すぐにその番号を新しい番号に取り替えるという。

元電話屋の男性
「(1人)20回線とか買っていくんですよ。03の番号で3日間使ったらそれでもう(番号)変更する。相当な番号がどんどん生まれ変わってすぐ使えなくなるので、すごい代謝の速度」

男性が転売した番号は1000以上。その9割以上が特殊詐欺に使われ、売上は月300万円を超えていたという。

■“電話屋”の親会社は…番号をたどっていくと

では、女性が騙された番号を詐欺グループに売ったのは誰なのか。取材の結果、ある電話屋A社の存在が浮かび上がってきた。

その電話屋A社の代表が取材に答えた。

記者
「詐欺事件で使われた電話番号をたどっていくと…」

“電話屋”
「うちで出してるやつ(電話番号)ね、それで?」

詐欺で使われた番号を売ったことをあっさり認めた。しかし、自分は詐欺に使われると知らずに、転売しただけだと主張する。

“電話屋”
「親会社から番号を卸して私たちに来て、私たちが末端に番号を流す、そういう形です」

記者
「電話番号の仕入れ先の業者はどこなのか?」

“電話屋”
「アシストライズですか。アシストライズ」

A社の親会社「アシストライズ」という電話屋が、大手電話会社から購入した番号をA社に転売したというのだ。

アシストライズの住所は、東京・神田だ。あの詐欺に使われた番号の地域とも一致する。

■「一度もないです。あったら私は犯罪者じゃないですか」居酒屋店主を直撃

記者
「アシストライズの社長の住所は居酒屋になっていますね」

アシストライズの佐々木代表は、バラエティ番組にたびたび出演する居酒屋の名物店主でもある。強気な接客態度から「逆クレーム店主」とも呼ばれている。

早朝、居酒屋の前で本人を待つ。詐欺に使われると知りながら番号を転売していたのか。佐々木代表に直接聞く。

記者
「アシストライズという会社を経営されていますよね?」

アシストライズ 佐々木式部 容疑者
「はい、してますよ」

記者
「この電話番号を卸したか?」

アシストライズ 佐々木式部容疑者
「それは卸したかもしれません、分かんないですよ。うちは何千回線も扱っているんで」

記者
「この電話番号が特殊詐欺に使われるって分かって卸したことはないか?」

アシストライズ 佐々木式部 容疑者
「一度もないです、そんなことは」

記者
「これまで特殊詐欺に何度も何度も使われたことはご存知ですよね?」

アシストライズ 佐々木式部 容疑者
「それは警察から聞いたことはありますよ」

記者
「自身は全く関係ないということか?」

アシストライズ 佐々木式部 容疑者
「ないですね。あったら私は犯罪者じゃないですか」

記者
「やましい点はないですね?」

アシストライズ 佐々木式部 容疑者
「ないです。しっかり書類もチェックしていますし、そんなのあるわけないじゃないですか」

記者
「卸した電話番号が結果的に特殊詐欺に使われて、おばあちゃんが被害に遭っている。それについてはどう思いますか?」

アシストライズ 佐々木式部 容疑者
「それは大変ですよね。それは大変だと思いますよ」

記者
「それだけですか」

アシストライズ 佐々木式部 容疑者
「はい」

私たちの取材には、詐欺に使われるとは知らなかったと話した佐々木代表。しかし…

記者
「店から佐々木代表が出てきました」

警察は19日夜、佐々木代表の逮捕に踏み切った。警察は、佐々木容疑者が詐欺に使われると知りながら電話番号を詐欺グループに提供したとみている。

警察当局の調べによると、アシストライズは詐欺グループが使う電話番号の販売会社として国内最大規模で、今年東京都で発生した特殊詐欺事件の半分以上は、アシストライズが販売した電話番号が使われたという。

提供した電話番号による詐欺の被害額は東京だけで10億円。全国では数十億円に上ると見られている。