成田悠輔さん語る「人類みんなちょっと不安と思えばそんなにつらくない」“不確実な世界”で変わる働き方

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2022年11月24日 (木) 15:45

勤労感謝の日、イェール大学助教授・経済学者の成田悠輔さんがスタジオ生出演。成田さんは「そもそも働きたくない」そうですが、働き方が多様になっていく時代。若者、中高年、それぞれ不安を抱えています。成田さんは「不確実な世界に変わっちゃった」「自分だけが辛いわけではなく、日本人みんなちょっと不安、人類みんなちょっと不安というくらいに思っておけばいいのでは」と語りました。

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■“10年以内に転職” 変わる若い世代の働く意識

まずは若い世代の意識についてのデータを見ていきます。

「2022年新入社員 今の会社であと何年くらい働く?」(マイナビ転職 調べ)
・3年以内:28.3%
・4~5年くらい:13.8%
・6~10年くらい:8.9%

・10年以上:8.0%
・定年まで:18.5%

国山ハセンキャスター:
10年で区切ると、10年以内の退職予定が51%、つまり半分以上が転職を考えているということになります。私も転職を公表してるんですけれども、ちょうど10年目なのでそこで決断したという形で…

イェール大学助教授・経済学者 成田悠輔氏:
何か不満が?

国山キャスター:
そんなことはないです…

小川キャスター:
終身雇用が当たり前だった時代と比べると、ずいぶん意識は変わったという感覚はありますよね。

成田氏:
ここ10年ぐらいで一気に変わりましたよね。僕は大学を卒業したのが2009年ですが、その頃はまだギリギリ終身雇用の古い日本社会の残滓というか遺産が残っていた時期だったと思うんですよね。2010年代になってから一気に日本社会・日本経済は変わったなっていう印象がありますね。

国山キャスター:
1つの会社でずっと働くとは思わない理由にこういった答えがあります。

「ずっと働くとは思わない理由は?(複数回答)」(マイナビ転職 調べ)
・ライフステージに合わせて働き方を変えたいから:30.7%
・給料がいまいちだから:27.5%
・いろいろな会社で経験を積んでいきたいから:26.8%
・転職でキャリアアップしていきたいから:26.8%
・仕事がハード/厳しそうだから:19.9%

■いまの会社、30年後にありますか?年功序列に期待できない若い世代

国山キャスター:
日本は転職によって給料がアップする環境が整っているんでしょうか?

成田氏:
どちらかというと1つの企業にずっと勤め上げても報われなくなってるという側面の方が大きいんじゃないかと思うんですよね。昔は同じ会社にずっといれば、その会社の中の事情が段々と良くわかっていって、ほぼ間違いなく段々と役職も給料も上がっていくという感じで、何が起きるかわかりやすかったと思うんですよね。

今の社会だと1つの企業にずっと勤め続けていると、むしろその企業の業績が悪くなったらどうなるのか、他の会社に行ったら通用しなくなるんじゃないかという心配の方が大きい。だから転職するのが自然な流れとして、転職を考えざるを得なくなってるという感じが強い。

国山キャスター:
社会構造で見ても、上の世代の方が数は多い。1つの大きな企業で見ても、上の人の数が多いので、上司の数が多いから、なかなか自分は出世できないんじゃないか、若い人が活躍できないんじゃないか、という声もあると思う。

成田氏:
今の中高年の人たちは、まだ年功序列で賃金も上がっていく、というスタイルで働いていて、正社員の方が多い。そうすると、その人たちの給料はすごく高いということになるので、若い世代は相対的に不利なポジションに置かれがち、というのはあると思うんですよ。

昔だったら、若いうちは不利なポジションに甘んじていても、30年たったら報われると期待できたと思うんですよね。だけど今だと30年経つと、その会社があるのかどうかもわからない

国山キャスター:
アメリカの場合はどうなんですか?

成田氏:
そもそもアメリカの場合は日本みたいな「しっかり保護された正社員」という仕組みはない。今話題のTwitter社や、他のIT企業みたいに、業績が悪くなるとクビになるのも仕方ないという仕組み。そうするとみんなが転職するということを常に念頭に置きながら仕事をする。もし他の会社で、今よりも給料が高かったり、より働きやすい環境があったりしたら、転職したり、あるいはそれを材料にして今の会社と交渉したりするのが普通。大学の先生でさえ、それが普通なんです。他の大学から引き抜きの誘いがあると、それを使ってガンガン給料交渉して。人によって給料やタイプが違う。

■“伝統的企業”と“新しい産業”を組み合わせてキャリアを考える時代に

小川キャスター:
とはいえ、転職してもうまくいくかどうかわからない中で、どういう意識で働いていったらいいのか。不安を抱えている人は多いのでは?

成田氏:
日本社会が変わってしまって、みんな多かれ少なかれ不安を感じながら生きていくしかない社会になった。受け入れてしまうのが早いんじゃないかなと思う。

昔の日本社会と今の社会を比べると、いろいろな形で不確実でよくわからないという感じがする。これだけビジネスの環境や技術の環境の流れが早くて、20年経つとトップの企業の顔ぶれも一新してる。そういう世界になってしまって、世界中の人がそういう環境で戦っている。日本人もその例外じゃなくなってしまった。なので、自分だけがつらいわけではなくて、日本人みんなちょっと不安で、人類みんなちょっと不安で、というぐらいに思っておけば、そんなにつらく感じる必要もないんじゃないかなと思います。

小川キャスター:
これから仕事を始めようという就活生や新卒の人はどういう観点で会社選び・仕事選びをしていったらいい?

成田氏:
昔みたいに、その会社に新卒で入ったら運命共同体で何十年もいるという感じじゃないわけですよね。だから、数年で他のキャリアに移っていったり、さらにステップアップしていったりすることが前提となる。そうすると、最初の段階で、その後のキャリアに役に立つような教育や訓練をやってくれるような会社の魅力が増すのかもしれない。そうすると転職市場が増えていって、昔みたいな大企業があって年功序列じゃなくなっているからこそ、教育や訓練の場が整っている企業の魅力が、新卒で就職する場所としては高まっている側面もあるのかな。

最終的にフリーランスになったりスタートアップに入ったり、起業したりする方でも、最初の数年は、結構保守的で伝統的な大企業で働くみたいなスタイルの方も多いと思う。古い日本の大企業から、新しい産業に完全に移行してるというわけではなくて、その2つの組み合わせ方が変わっているという感じ。どちらかを選ぶのではなくて、ライフステージ・キャリアのステージに応じて、うまく小分けにして組み合わせる、みたいな時代になっている。

■“何をやっているのかよくわからない人”を目指せ!

小川キャスター:
成田さんは、先日、女性誌でママたちのお悩み相談までされていて、見ない日はない活躍ぶりですが、働く中で一貫して持ち続けてらっしゃる感覚って何かあるんですか?

成田氏:
僕はそもそも、あまり働きたくないというのと、わかりやすいキャリアとか仕事をできるだけ作らないようにしている。はっきりとカテゴリーがあるものや仕事の名前がついてるものって競争も激しいし、いろいろな人も入ってくる。そうすると人と競争しなくちゃいけなくてつらいんですよね。

自分自身の場合は、できるだけ「何をやってるのかよくわからない人」になって、他の人と競い合わなくてもいいようにしたいと思って、よくわからないことをやってるという感じ。

国山キャスター:
たまに成田さんってどういう人なんだろうってよくわからなくなります(笑)

■若い人の転職、背景に「働かないおじさん問題」?

小川キャスター:
若い人たちが退社・退職を前提に動き始めているのにはSNSでも話題になっている「働かないおじさん問題」も背景にあるのではといわれています。

国山キャスター:
「働かないおじさん(おばさん)」とは、勤続年数を重ね高い給与をもらいながら、それに見合った働きをしていないとされる人。若い世代が不満を抱いていることなどからSNSなどでも話題となっているということです。

その働かないおじさん・おばさんについて当事者、同世代の方に聞いてみました。

60代会社員
「私が感じたのはこいつら何してんだっていうのが多いね。会社に収まっちゃったらもう自分はクビにならないと思い込んで、仕事を一生懸命やらない人が多いから。いらないね。おじさんたちは」

50代会社員
「ただ働かないと言っても、ノウハウやスキルを培ってきてないと。歳をとって、あと10年20年でもう人生(のゴールが)見えてしまっている時になって、そこまで気合い入れて働くかどうかとなると分からない」

60代会社員
「同じセリフもベテランの人が言うと、何か重みがあって聞こえるみたいな。そういう感じじゃないですかね。ベテランはそういう存在価値みたいのが何かありますよね。そこに居るだけで求心力があるとかチームパフォーマンスが上がるみたいな。オーラが出てるみたいな、そういう人もいますよね」

▼50代:
僕らの年代ではある一定数いるのは否めない。若者が批判的になるのは当然

▼60代:
自分はクビにならないと思い込んで仕事を一生懸命やらない人が多い

▼60代:
同じセリフもベテランが言うと重みがあったりオーラがあったり、少ないけれどそういう人もいて、そういう価値もあるのでは

国山キャスター:
弁護士ドットコムが調べたデータによると、働かない“おじさん”(おばさん)が職場にいるかという質問に「いる」 58.7%、「自分がそうだ」 4.2%、「将来自分もなる可能性がある」22.9%、となりました。

小川キャスター:
成田さんは、働かない中高年という立場の方に出会ったことはありますか?

成田氏:
自分もちょっとそうなりつつあるなって最近感じるところで・・・でもある意味しょうがないのかなと。“働かないおじさん”みたいな言い方をすると、おじさんたちが悪くて、老害化しているみたいになりがちですが、その背後には年功序列のような給料の立て方が今でも根強いという問題があると思うんですよね。実際、年齢と給料、経験年数と給料の関係を見てみると、ずっと右肩上がりの年功序列が今でも普通に支配しているんです。人間の生産性は大体40代ぐらいがピークで、自然に下がっていきます。仕事の付加価値が出せていないのに給料だけが高い中高年がいるのは、社会の構造上そうなっているからで、問題はその働かないおじさんたちではなく、それを作り出している社会の仕組み、それが時代に追いつけていない方が問題ではないでしょうか。

国山キャスター:
中間管理職が一番つらいという説がありますよね。ずっと頑張ってきて年功序列でポジションを築き上げたのに今度は下からは煙たがられるという。

成田氏:
一番つらい世代は氷河期世代だと思います。今40代で付加価値や生産性でいうと一番脂が乗っている時期のはずなのに、就職の時期にたまたま不況だったということで今でもそのダメージが続いてしまい給料が低いんですね。この仕組みや世の中のひずみに翻弄されている世代と、給料が高いままの世代がいるという、世代間の不平等が大きな問題だと思います。

小川キャスター:
若ければ体力があるので転職を考えられますが、40代50代になると今から働き方や環境を変えようと思っても、踏み込めない方は多いですよね。

成田氏:
難しいですよね。さらに働かないおじさんたちも少し経つと急に崖下に落ちるようなことがあります。年功序列的な給料形態の企業で働いていても、一旦リタイアすると急にものすごく安く、ボランティア同然で働くのが当たり前になりますよね。そうすると働かないおじさんのステージを越えておじいさん、おばあさんのステージになると逆に苦しめられる。これもまたひずみだと思うんですよね。

小川キャスター:
段々この話がつらくなってきている方も多いと思います。

成田氏:
社会全体として、見合った給料や報酬が出るようにシフトしなくてはいけないのに、世の中が追いつかず、必要以上に苦労してしまう世代と、必要以上に特権を享受してしまっている世代が存在している。それで社会全体として「なんとなくおかしいよね」という不満が溜まってしまっている状況なのかなと。この仕組みをどう変えるかというのが大事だと思います。

国山キャスター:
誰が変えますか?

成田氏:
いわゆるジョブ型の雇用への移行があります。人それぞれの仕事ぶりに見合った報酬を与えようという重要な試みだと思いますが、日本の場合は正社員の保護もあるので、簡単にジョブ型に移行することが出来ない難しさもあると思います。