政府は27日開かれる対策本部で、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけについて、大型連休明けの5月8日から、従来の2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げる方針を正式決定します。そこで注目されるのは、マスクの着用の見直しについてです。政府は基準を緩和して“個人の判断”に委ねる方向だとのこと。その判断の背景は?現場の医師からの声は?専門家とともに解説します。
【写真を見る】マスクの着用は“個人の判断”? 新型コロナの5類引き下げ方針決定へ 背景に「慎重な専門家や世論」
5月8日から新型コロナ「5類」へ 1月27日から適用されるものも
南波雅俊キャスター:
政府は1月27日、夕方に開かれる対策本部で、新型コロナを大型連休明けの5月8日から、感染症法上の位置づけをこれまでの危険性の高い感染症である2類相当から、季節性インフルエンザなどと同じ5類に引き下げる方針を1月27日に正式決定するという状況です。
その一方で、1月27日から適用されるものもあります。スポーツやコンサートでは、マスク着用で、声を出していいというのは、これまで収容率50%まででした。Jリーグのクラブですとか、アーティストの皆さんも声を出してほしいけれども、人を100%入れられないのはジレンマがあったと思いますが、それが収容率100%まで大丈夫というのが、1月27日からです。
また、マスク着用が非常に注目されていますが、屋外・屋内問わず“個人の判断に委ねる”という状況で、時期については、引き続き検討するというわけです。
これまでのマスク着用ルールとは?
南波キャスター:
これまでは、政府としては「屋外は原則不要」としてきた一方で、「屋内は着用を推奨する」方針でした。条件として、距離の確保や会話がほぼない状況ではマスク不要としてきました。
マスクをつけること自体について、政府としては“基本的な感染防止対策として重要”だとしてきたわけです。
加藤勝信 厚労大臣(2022年11月衆院予算委での答弁)
「マスク着用の効果に対する研究結果、専門家の意見も踏まえ、基本的な感染防止対策として、適切なマスクの着脱をお願いしている」
なぜ「個人の判断」に? 背景に専門家と世論
南波キャスター:
なぜ今回、マスクの着用が「個人の判断」になったのかというところについて、TBS政治部・川西全官邸キャップによりますと、「本来なら屋外に加えて、『屋内』も原則不要と打ち出したかったが、専門家や世論が想像以上に慎重だった」ということです。
マスクの着用の緩和時期も決められず、当初の想定よりも対応を弱めた形になり、「個人の判断」という言葉を使うことになったそうです。
「個人の判断」について現場の医師は、どう考えているのかというところですが…
インターパーク倉持呼吸器内科 倉持仁医師
「なぜ『個人の判断』とするのか、根拠を説明すべき。今後感染が拡大した場合、どうするのかも示すべき」
ひなた在宅クリニック山王 田代和馬医師
「感染症が拡大しやすくなり、高齢者やリスクの高い人の死亡が増えるのは避けられない」
「個人の判断」とした政府の思惑は?
ホラン千秋キャスター:
マスクの着用は「個人の判断」というふうに、ざっくりとするのではなく、政府としてマスクに関して、様々な意見はありますが「こういう方針で行く」ということを具体的に打ち出すことは可能だったとは思うのですが、あえて漠然とした感じに留めたのは、どういう背景があると思われますか?
国際医療福祉大学感染症学講座 松本哲哉 主任教授:
本来であれば、屋内でもマスクを基本的には外していいと、それはどんな場面でも外せるということを、政府側は言いたかったのかもしれないが、それをもし言ったら明らかに感染は広がるし、反発も大きいだろうと。
具体的にもうちょっとこういうところだったらマスクを外していいと、本来であれば説明して、みなさんが納得した上で、屋内であっても「このタイミングだったらマスクを外せる」「ここはやっぱり着用する」というふうになると思うのですが。
それがもういろいろと細かい所まで言うこと自体が段々と難しくなってくると、結局は「個人の判断」でというふうに大雑把に言ってしまった。
正直に言って、もうこれから先は、国は何もコメントもせずに「あくまでマスク着用は、自分たちの判断でやってください」というふうに投げてしまっているので、ある意味、みなさんに対する責任転嫁になってしまうのではないかと思います。
ホランキャスター:
マスク着用は「個人の判断」と言われても、やはり自分の気持ちだけでは…。周りの目もあるし、どうにもこうにも個人では決めきれないところもあるのではないでしょうか?
歴史・時代小説家 今村翔吾さん:
僕個人に置き換えてみたらどうだろうと思ったら、やっぱり「個人の判断に任せる」と言われても、正直周囲の目が気になったりして、マスクを外すのは勇気がいるなと思います。だから、ちょっと政府のこの言い方は、ずるいなというのは感じます。もう少し責任を国民側に投げるのではなく、ある一定程度は政府に持って欲しいという思いはあります。
ホランキャスター:
政府は、言い切ってしまうことによって、責任を負うのが怖いのかなと?
歴史・時代小説家 今村翔吾さん:
そんな感じがします。
「個人の判断」 私たちはどうマスクと向き合っていくべきか?
日比麻音子キャスター:
なんだか、政府のマスク着用に関する発言で、ますますマスクとの向き合い方が難しくなったと思いますが、この判断の軸とは何かあるのでしょうか?
国際医療福祉大学感染症学講座 松本哲哉 主任教授:
マスクは、コロナウイルスに対する一番有効な手段、感染対策の手段ではあります。ただ、どうも政府の方たちは、マスク着用を推奨することが何か経済の足を引っ張っているように思っているのかもしれません。
むしろ感染対策をしっかりやって、感染を抑えてからこそ、経済が動くのだというふうに思います。変な意味で、もうどんどんマスクを外していいように持っていくことは、間違った方向ではないかなと思っています。
ホランキャスター:
政府がこういった判断をどんどんとしていく中で、何か納得がいかない、納得感があるなど、マスクに関して個人としてのお気持ちは?
国際医療福祉大学感染症学講座 松本哲哉 主任教授:
マスクはあくまで感染対策上必要な部分であるので、当然必要な場面では皆さんは、ちゃんと自分の判断になるけれど、今でもマスクを着用しています。
ただ、何となくマスクを外す方向に行こうとしている。今の医療現場からすれば、300~400ぐらいの人たちが1日に亡くなっている厳しい状況の中で、これから先はコロナ感染が落ち着いて行くというような雰囲気を持っていっていますけれど。別に医療提供体制が何も改善してるわけでもなく、国民が本当に安心できるような状況を作れたわけではないので。
何か変に誤ったメッセージがこの段階で広がってしまうと、これから先に新たな波が来た時に、またひどくなるのではないかということを心配しています。
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