
広域連続強盗について、私たちは、「指示役」と疑われるフィリピンの収容所にいる男4人に関する新証言と独自画像を入手しました。
【写真を見る】「裏切り者は血だるまに」特殊詐欺Gの元メンバーが明かす“恐怖支配”【報道特集】
「裏切者は血だるまに」。4人を知る特殊詐欺グループの元メンバーが明かす、恐怖支配の実態です。
元メンバーが明かす4容疑者の現在 今村容疑者は「絶望」 一方、他は「俺らは大丈夫だろう」
フィリピンの入管施設の一室。煙草をくわえ、携帯電話を眺めているのが、特殊詐欺事件で逮捕状が出ている今村磨人容疑者(38)だ。
2021年7月、今村容疑者は日本に強制送還される直前だったという。
この写真を撮影した特殊詐欺グループの元メンバー「A氏」が報道特集の取材に応じた。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「僕が送還されるのに隔離されたんです。1週間。その小屋で今村容疑者とかと過ごしてる」
当時、A氏もこの収容所の一室にいて、他の収容者とともに送還を待っていたという。しかしこの時、今村容疑者の送還は見送られた。フィリピン国内で今村容疑者への告訴が受理され、裁判手続きのため、移送ができなくなったという。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「(協力者の)上の人間に何回も電話して、どうですか?(送還)止まりましたか? ちょっと待ってくれみたいな。本当に最終の最終までずっと焦っていて、何とか当日に間に合って。多分ケースが間に合って(送還を)止められた」
今、この収容所にいる特殊詐欺グループ4人のうち今村磨人容疑者と藤田聖也容疑者(38)の2人については、フィリピン国内での裁判が棄却され、フィリピン側は日本への送還が可能だとしている。
しかし、残る渡辺優樹容疑者(38)と小島智信容疑者(45)は元妻らからの告訴が退けられておらず、強制送還の行方は不透明だ。
当時、収容所にいたA氏は、今も内部にいる知人と連絡を取っているという。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「(今村容疑者は)ベッドでずっと横になっているとか、今まではお金が入ってきたが、入って来なくなったので配給のご飯を食べている」
村瀬健介キャスター
「配給のご飯食べているっていうのは今村容疑者のこと?」
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「そうです。絶望していると」
一方、渡辺容疑者については・・・
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「渡辺容疑者はVIPルームにいて携帯電話も使えて、ご飯も配給を食べずに外の食材を自分で料理して食べている。今村容疑者に関しては送還することに怯えている状態だけど、渡辺、藤田、小島に関しては『オレらは大丈夫だろう』と」
“VIPルームでビール”「大ボス」と呼ばれた渡辺容疑者
この4人の関係についても重要な証言をした。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「渡辺容疑者が他の詐欺グループも含めた大ボス。小島容疑者に関しては渡辺容疑者の右腕。主にはリクルートとか送金とか細かい分担に指示をする。ボスの代わりに、という役割」
渡辺容疑者のもとにある複数の詐欺グループ。今村容疑者は、その1つのリーダーで、藤田容疑者は現金化を担っていたという。さらにA氏は、詐欺グループの衝撃の実態を次々と語った。
番組は3年前(2020年12月)、「フィリピン当局に拘束されたグループのメンバーが収容所内からも詐欺を続けている」との内部告発を受け、動画や写真を入手していた。
ビクタン収容所には不法滞在者や指名手配犯がいた。A氏は自ら撮影した写真も見せてくれた。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「これが渡辺(容疑者)が過ごしているVIPルームの中の写真。見てわかる通りビール飲んでる」
村瀬キャスター
「麻雀やってるんですか?」
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「カジノ部屋というか麻雀。中国人のスペース。お金で全部が解決する。人権も何もない。お金を持っている奴が偉い」
「根性焼きとか、耳をペンチで潰してみたり」グループを“仕切る”今村容疑者の“恐怖支配”
収容所には韓国人マフィアや中国人マフィアのボスがいて、統率がとれていた。日本人グループを取り仕切っていたのが、メンバーより先に収監されていた今村容疑者だったという。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「(今村容疑者は)日本人をまとめたがるっていうか、36人を仕切りたがる。(その手段が)本当に根性焼きとか、耳をペンチで潰してみたり、自分の指揮下に置いて。自由を奪われて、朝5時に起きて何もせず部屋の前のベンチに1日ずっと座らされる。それが(夜)12時になったら解放される。誰ともしゃべっちゃいけないとか、本当に地獄でした」
暴力でメンバー5、6人に詐欺を続けることを強要していたという。動画には、キャッシュカードなどを奪う日本の犯行現場にいた仲間との連絡も。
「今、現場なんで、また連絡させていただきます」
「すみません。何時頃になりますか?」
「夜通しです。すいません」
現金のやりとりをする様子もうかがえる。
「送金の方、段取って頂きました」
今村容疑者の上にはさらに別の人物が。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「渡辺容疑者が36人、他の詐欺グループも含めた大ボス。全盛期で250人いたって聞いている」
当時は、まだ拘束されていなかった渡辺優樹容疑者だという。
村瀬キャスター
「渡辺容疑者とは面識がある?」
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「一緒に食事をした。(渡辺容疑者は)全身ブランドに包まれて、でっかい時計つけて綺麗なお姉さん横に連れて、アタッシュケースの中に現金とカジノのチップがすごい入っている」
“受け子”は「R」 グループは「箱」 巧妙な“詐欺マニュアル”
2019年11月、この詐欺グループの拠点にフィリピン当局が踏み込んだ。その場所の1つが、A氏が“かけ子”をやっていた拠点だという。当時、現場に残されていたのが、詐欺のマニュアルだ。
「Rが客宅を確認出来たら」
「1線から突入指示がでたら」
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「『R』は“受け子”の略」
村瀬キャスター
「日本にいる“受け子”のことを『R』?」
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「『R』って呼んでます。『1線』が警察官役、『2線』が銀行職員役、『3線』がそのRを動かす指示をする」
日本の現場でキャッシュカードなどを騙し取る「R」。フィリピンには日本に電話をかける1線、2線、3線がいるという。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「(報酬は騙し取った金の)1線で5%、2線で5%。1線、2線出来る人は10%といった割合」
グループは「箱」と呼ばれ、リーダーの名前をつけられることが多かったという。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「僕は〇〇っていう方がリーダーだったので、〇〇箱っていう言い方をする。今村容疑者が持っているのはK箱と言われている。今村キヨト容疑者の『K』ですね。キヨト箱でK箱」
村瀬キャスター
「そういう箱が何箱もある?」
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「何個も。僕が知ってるだけで6つ」
村瀬キャスター
「強盗をやっているようなことも?」
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「シークレット・SP箱っていうのはそういうのもやってたと聞いている。ぱっと作ったような感じではない。本当に練って練って練って考え抜いて作ったスタイル」
「前いた年寄りは1日に1000万円ぐらい」 特殊詐欺の実態
別の「箱」で詐欺グループのメンバーに騙され、1週間“かけ子”をやらされていた男性がいる。フィリピン在住の日本人。3LDKのコンドミニアムの部屋で7人の男女がそれぞれの役割を果たしていたという。
別の「箱」で“かけ子”をさせられていた男性
「電話するのは100件ぐらい1日にします」
最初に日本にいるターゲットに電話をかけるのは、この男性ら5人の『1線』。警察官役の“かけ子”たちだ。「あなたのキャッシュカードの情報が洩れている」などと騙す役だ。
別の「箱」で“かけ子”をさせられていた男性
「『内線を回しますから電話を切らないで待っててください』って言ってる間に、電話をかけた人間が、私なら私がその女のところへ行って『あとお願いします』って振るわけですよね」
『1線』の男に代わって、次にターゲットと話すのが『2線』の女だ。“金融当局の担当者”と信じ込ませ、「これから警察官がそちらに行く」などと相手に伝えるという。
村瀬キャスター
「ここに座っている男(3線)の人は、日本との連絡?」
別の「箱」で“かけ子”をさせられていた男性
「お金を下ろす人間。それとの連絡です。『何番地に行ったら次に行け』と指示して、携帯を日本サイドでキャッシュカードとか取る人間が。携帯を常にあいたままですよね。切らないで」
村瀬キャスター
「ずっと通話がつながっているまま?」
別の「箱」で“かけ子”をさせられていた男性
「そうです」
その頃、フィリピンから電話をかけるのと同時に、日本ではターゲットの家の近くで待機していた「R」と呼ばれる“受け子”が、「3線」と電話をつないだまま自宅を訪問。警察官を名乗りキャッシュカードを封筒に入れさせ保管するよう指示する。
のり付けした後、「割り印として印鑑が必要」などと伝え、ターゲットがその場を離れた隙に、キャッシュカードが入った封筒と事前に用意していた別の封筒をすり替える。そして「開封せずに保管して下さい」と言って、被害の発覚を遅らせていたという。
別の「箱」で“かけ子”をさせられていた男性
「(キャッシュカードを)取ったら1分も経たないうちに『すぐ出ろ』とコイツ(3線)が指示して『〇〇でタクシーが待ってるからタクシーに乗って〇〇銀行に行け』と言う。『マックス(限度額)まで下ろせ』と言う。家(被害者)によったら、2枚3枚(キャッシュカードが)封筒の中に入っている。だから1件下ろしたらすぐに次に移動する。多いときは、前いた年寄りは1日に1000万円ぐらいやったらしい」
村瀬キャスター
「フィリピンにいながら、本当に細かくコントロールをしているんですね」
別の「箱」で“かけ子”をさせられていた男性
「そうですね」
銀行のATMで振りこませるのではなく、被害者と直接対面する手口。相手に危害を加えることもあったという。
渡辺容疑者と今村容疑者の関係性 そして“かけ子”から強盗への“変化”
「1線」「2線」「3線」役を担っていた36人の詐欺グループのメンバーは2019年11月、フィリピン当局に拘束された。先に収容所にいたのは今村容疑者だった。そして2012年5月、渡辺容疑者も拘束され、2人は収容所内で合流する。
グループの元メンバーA氏は2人の関係性について…。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「元々今村容疑者と渡辺容疑者は地元も一緒で仲が良くて、詐欺グループも一緒だった。ただある時を境に敵対し始めた。でも(渡辺容疑者が)いざ入ってきて、今村容疑者も頼る先、渡辺容疑者しかないっていう状況で、うまく和解したのか、一緒にたぶん強盗とかやってる」
配下のメンバー36人は2020年から4回に分けて送還され、2021年7月に全員が帰国した。“かけ子”がいなくなったため特殊詐欺をやめ、残された日本にいる仲間だけを動かしてできる「強盗」が犯行の主流になっていったのか?
村瀬キャスター
「なぜ詐欺じゃなくて強盗になる、どうしてそこがつながるのか?」
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「一応、僕らも電話かけて資産状況を調べる。騙せればいいが、逃してしまったときに『お金ない、盗れなかった。でもあの家には3000万ある』『じゃあ叩いちゃう(強盗する)』 という感覚だと思う」
村瀬キャスター
「(聞き出した)情報を再利用する?」
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「そうですね」
「スプーンで目玉えぐられ、頭を撃ち抜かれて」組織内の“恐怖支配”
なぜ、詐欺グループのメンバーは渡辺容疑者を頂点とする組織の言いなりになっていたのか?
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「いたれり尽くせりじゃないが、やってることは多分、普通の企業と同じ。どうすれば社員が集まるのか、どうすれば社員のやる気を起こせるのかとか」
渡辺容疑者が電話をかける現場に来ることはなかったが、それでも強い恐怖を感じた。ある時、グループがいた拠点で組織を裏切ったとして1人のメンバーが暴行されたという。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「ビルの中でボコボコにされて血だらけになって、『こいつこれからいなくなる。裏切ったらどうなるか知らないよ』と。そのまま連れていかれて」
真偽は不明だが、その後についての噂も耳にした。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「ベッドに縛り付けられて3日後ようやく解放された。スプーンで目玉えぐられ、頭撃ち抜かれて細切れにされて。豚に遺体食わせて処理したという話を聞いた」
さらに、こんな話も聞かされたという。
村瀬キャスター
「ご自身のグループでもそういうことが起きた?」
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「僕の“かけ子”のグループのリーダーはホテルの1室に入った途端、後ろから頭を撃たれて死んだと。『〇〇さん死んじゃったんですか?』って 聞くと『殺されたよ』と。手を下すのは、渡辺容疑者は手を下さない。やっぱりフィリピンのマフィアとか。本当に今ニュースになっているのは氷山の一角」
「もっと迅速に動いてくれてれば、救えなかった命も救えた」
3年前の時点で拘束された36人のうち半分のメンバーは帰国し、警察も聴取していた。
特殊詐欺グループの元メンバーA氏
「僕らは1年近く送還遅れたが、(他のメンバーは)もう先に送還されて(警察は)話も聞いていると思う。(渡辺・今村容疑者らが)捕まった段階で早く送還しておけばこんなことにならなかった。本当もっと迅速に動いてくれていれば、救えなかった命も救えた。被害者も全然少ないと思う。こればかりは無いものねだりになる」
「報道特集」は2020年、詐欺グループ36人の一人と交際していた女性を取材。収容所からの犯罪行為について警視庁に通報したと証言していた。
メンバーと交際していた女性
「オレオレ詐欺を日本にしている。あとは日本の仲間に命令して、強盗だったり…」
女性は警視庁の特殊詐欺の担当窓口に数日間にわたって何度も連絡したと言うが…。
詐欺グループメンバーと交際していた女性
「『海外なんで日本から捜査はできない』『(アニメの)「銭形警部」みたいなことはできない』って。なんで何もしてくれないんだろう?話もろくに聞いてくれない」
女性は携帯電話に警視庁の担当者だという人物の名前や内線番号をメモしていた。今週、国会でも警察の当時の対応について質問が出た。
立憲民主党 後藤祐一衆議院議員(1月31日)
「2019年の特殊詐欺事件の時、渡辺・今村容疑者を含む4人の引き渡しをフィリピンに求めたのか?強く求めるべきだったのでは?」
村瀬キャスターが3日、谷公一国家公安委員長に聞いた。
村瀬キャスター
「ここに至るまで送還が実現していないが、この間の日本警察の対応は適切だったとお考えか?」
谷公一 国家公安委員長
「日本政府としてはフィリピン当局に対し2019年11月以降、順次、退去強制の要請を行ってきました。何もしていないということではありません。ただ我々は要請する立場ですから、フィリピン当局において、どう検討が行われてきたのかについては、国家公安委員会委員長として答える立場にありません」
村瀬キャスター
「強盗殺人事件が起きて初めてグループの幹部の強制送還が動き始めたことからすると、重大な事件が起きない限り、ことが動かなかったのではないかとも見えます」
谷公一 国家公安委員長
「今回初めてというお話がありましたが、繰り返しになるが、そういうことはございません。強盗殺人という大変ショッキングな事件がありました。こういうショッキングな事件がなければ動かなかったということはございませんので、その点だけどうかご理解いただければと思います」
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