物価高いつまで続く? 東京23区の消費者物価3.3%上昇【Bizスクエア】

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2023年3月8日 (水) 15:58
物価高いつまで続く? 東京23区の消費者物価3.3%上昇【Bizスクエア】

2023年2月の東京23区の消費者物価指数は3.3%上昇となり、1月から1.0ポイント下がった。ただ、食品価格の高騰は加速しており、先行きは予断を許さない。

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3月は3442品目の食品が値上げ 物価上昇の基調は高いまま

帝国データバンクによると、2023年1月から4月に値上げされる食品は1万4451品目におよび、前年同時期と比べ、3倍のペースで推移し、さらに3月から3442品目の食品が値上がりする。こうした状況を受け、岸田総理は自民、公明の政調会長と会談し、追加の物価高対策を3月17日までにまとめ、政府に提言するよう指示した。

今後賃上げするという企業の数は、2022年と比べ増加傾向にある。日本商工会議所が行ったアンケートの途中集計によると、主に東京都内に本社を置く中小企業の58.2%が今年の春闘を含め、2023年度に賃上げを実施すると回答している。

日本商工会議所の小林健会頭は「賃上げ率もある程度上昇してきている。これはもちろん価格転嫁がある程度進んでいるということ。一言で言うといい傾向が見えてきたということ」と述べた。

3月3日に発表された、2月の東京23区の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除いて、2022年より3.3%の上昇となった。電気や都市ガスの負担軽減策が始まったことで、1月と比べ物価上昇率は、1ポイント押し下げられたが、日銀が重視する生鮮食品とエネルギーを除いた数字では、前年比3.2%の上昇と、1月の3.0%から加速。経済対策など特殊要因を除いた物価の基調は、むしろ強くなっている。

物価の先行きについては、日銀総裁候補の植田和男氏が、物価の基調が改善しつつあるとした上で、「消費者物価の上昇率は、23年度半ばにかけて、2%を下回る水準に低下していくと考えられます」と述べた。物価高は落ち着きを見せるとする植田氏だが、現在の状況をどう見ればいいのか。第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は、食品の値上げが続く中では物価の基調は高いままだと言う。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏
「物価上昇の基調が非常に強く、食料品はまだまだ値上げが続く。それも1回の値上げではなく、3回目、4回目と、4―6月にかけても食料品の値上げが相次いでいますし、値上げの品目が激増しているというのは驚きなので、物価上昇圧力は非常に強いと思います」

今後の物価の見通しについては、以下のように述べた。

第一生命経済研究所 熊野英生氏
「4月以降の物価上昇圧力は、人為的に抑え込むかもしれないので、基調的な動きは4―6月がピークなのではないか。食料品の値上がりが、何千品目増えていくような状況では、おそらく年度後半も2%を上回るのではないかと思います」

東京23区の消費者物価指数は伸び率が急上昇 中小企業の6割が賃上げ予定

3月3日に発表された東京都区部の消費者物価指数は、生鮮食品を除く数字では、2月は前年同月比で3.3%の上昇だった。12か月連続で伸び率が拡大してきた。13か月ぶりに伸び率が縮小になったということで、見出しとしては、伸び率鈍化ということになる。これは電気代とガス代に政府の補助金が出るようになったことが大きいが、エネルギーと生鮮食品を除いたいわゆるコアコアという数字で見ると、1月の3.0%から3.2%へと上昇率が拡大している。コアコア指数は2%に乗ったのが2022年秋で、1月に3%に乗り、2月には3.2%になった。ここに来て伸び率が急激に拡大している。

――日銀はコアコアで2%に行かないから物価の上昇はエネルギー、食料の値上げにより一時的なものだと言っていたのだが、内訳を見ると生鮮を除く食品が7.8%で、スーパーで毎日買っている人は3%、4%よりもっと上昇していると感じている。家庭用の耐久材、冷蔵庫や洗濯機などは14.4%も上昇しており、実感としては物価上昇は強まっている。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏
「値上がりするものがどんどん増えて幅が広がっている感じがします。最近は外食の料金もすごく上がっています。3.3というのは庶民感覚から言うとそんなものではないだろうということだと思います」

主要食品メーカーによる値上げは、3月は3442品目、4月は4892品目となっている。1月、2月の1回あたりの平均値上げ率は16%となっている。

――2022年10月は値上げのラッシュだと言っていたが、この2、3、4月はもっとラッシュになっている。しかも値上がり率が16%だ。今値上げしているものは一度に2桁など、かなり思い切って値上げしてきているものもある。価格転嫁できるという感じを企業側は深めてきているのか。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏
「世の中全体のムードが変わってきて、上げても消費が大きく減るとことにはならないと。売り上げも落ちないから逆に言うと値上げができると。どうも値上げの連鎖の領域に入り始めたのではないかなという感じがします」

賃上げの動きも中小企業に広がってきている。東京都を中心とした中小企業493社のうち、約6割に当たる287社が賃上げを予定していると回答した。その287社のうち、物価上昇率の4%を上回る賃上げを予定している企業は28.5%となっている。

――中小企業はなかなか価格転嫁ができないので賃上げは難しいというのが当初の言い方だったが。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏
「中小企業のトップに聞くと、これだけ賃上げムードになっているので、さすがに今賃上げしないわけにいかないというのは現実だと思います。収益が上がってそれを分配しているという形になっているかというとそうではなく、むしろ賃上げした分がこれから価格に転嫁されて物価上昇になる。物価が2%ぐらいで安定しているところで賃上げがされるのと違い、賃上げすることがまた物価上昇につながるという想定していない悪循環なのか」

――まさにそれこそが物価上がり賃金が上がり、それがまた物価を上げるということにつながるということが、日本経済が10年間目指してきた物価と賃金の好循環ということだ。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏
「物価上昇率の問題だと思うのです。一応2%で安定させるというのが目的だったはずなので、それが4%、5%とどんどん上がっていくとなるとちょっと話が変わってくるのかなと思います」

――連合によると、傘下の組合の今年の賃上げ要求は今平均で4.49%で、何十年ぶりかの高さになっている。賃上げが今年は進み、今価格転換が全部できているわけではないので、賃上げ分も含めてさらに転嫁の動きが出てくるのではないか。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏
「企業収益にプラスになってくればまた再成長路線に入っていくということですね」

9割の人が物価上昇を予想。現行の政府軽減策は9月まで。追加策は?

それを可能にするのが世の中の雰囲気だが、人々の意識が変わっている。内閣府の消費動向調査で、1年後の物価上昇はどうかと聞いたところ、「5%以上上昇する」と思っている人が3分の2、日銀が目標とする2%以上まで含めると9割の人が上昇すると答えている。

――調査開始以来というすごい数字が出てきている。物価上昇を予想する人がこれだけいるということは、物価上昇は仕方がないと思っているということでもある。この意識の変化が先ほどの企業側の価格設定に影響してきているのか。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏
「そうは言っても、給料がこれに追いついていくかという問題があって、給料が追いつかないとなると、消費を減らすという悪循環に入ってしまうことになるかもしれないのです」

――今はコロナ明けでサービス消費などを含め、結構消費が活発だが、これが実際に給料が上がるよりも、物価が上がっているということになってくると、景気の腰折れを心配しなければいけない。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏
「特に、国内産業で生産コストが上がっている人たちが価格転嫁できるのかというと、消費が落ちてくるので、なかなか値段が上げられないということになってしまうのを、なんとか避けなければいけないということです」

そこで、ちぐはぐなようだが、政府は物価を抑える対策を取らなければいけない。現在、行われているエネルギーの負担軽減策は、電気は月額2800円程度、都市ガスは900円程度軽減されている。この軽減策は9月の使用分までとなっている。

――政府は新しい物価対策の検討を始めたが、現在の対策をもう少し続けられないかということを考えるのか。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏
「特に、ガソリンも本来は激変緩和措置ということだったので、ある程度のところでやめるはずなのが、結局1年以上続いているわけです。電気代、ガス代も9月となっていますが、実際1回始めてしまうと多分やめられなくなるということだと思います。そうすると、大盤振る舞いしていると財政は赤字が膨らむわけですから、もしかすると、それが円安に繋がってまた物価が上がるということです」

背景にあるのは、電気代の値上げが控えているということだ。電力各社の値上げ申請額を見ると、軒並み3割、4割の値上げとなっている。電気代が補助金で2割下がったことになっているが、3割、4割値上げしたら逆にプラスになってしまう。しかも、9月になって補助金がなくなったら、もっと上がるということになってしまうので追加対策という話になるわけだ。

――時間が経てば値段が元に戻るのならいいが、戻らないのだとすれば、永遠にガソリンと同じように補助金を出し続けるということになりかねない。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏
「ガソリンだけではなく小麦もそうだし、価格統制のように国が価格を決めていくという政策をやっているわけですが、果たしてそれが今これだけ経済が自由化している中で通用するのかどうかですね。日本だけ特殊なことをやっているような感じになっているのではないかと思うのですが」

――景気の腰折れを防いだり、所得の低い層の生活を守るということをやりながら、そうしたアンバランスを是正するためには、どういう政策を取ればいいのか。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏
「本来は価格を調整するのではなく、価格が上がると当然消費が減ってきて、そこで需給が緩むと言いますか、それは価格が下がる要因になるわけです。価格が上がってしまうと生活が大変なので、生活をサポートする政策を打つということで、一般的に言うと減税が効くのではないかと思います。そうでない場合には困窮世帯に対する補助金と同じやり方を出すということ。あまり業者とか特定の業界にお金を入れるというのは賢いやり方ではないのではないかなと思います」

(BS-TBS『Bizスクエア』 3月4日放送より)

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