男子110mHの泉谷駿介が13秒07の今季世界2位記録!ブダペストでこの種目初の決勝進出も期待【ゴールデングランプリ2023横浜】

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2023年5月27日 (土) 06:00
男子110mHの泉谷駿介が13秒07の今季世界2位記録!ブダペストでこの種目初の決勝進出も期待【ゴールデングランプリ2023横浜】

泉谷駿介(23、住友電工)が世界陸上ファイナルへのステップを1つ上がった。ゴールデングランプリ(GGP)2023横浜は5月21日、今年は横浜市の日産スタジアムを舞台に15種目が行われた。男子110mハードルは泉谷が、2位に0.18秒差を付ける13秒07(+0.8)で快勝。19年ドーハ、22年オレゴンと世界陸上2連勝中のグラント・ホロウェイ(25、米国)が4月15日に出した13秒01(±0)に次ぐ今季世界2位のタイム。21年に泉谷自身が出した13秒06(+1.2)の日本記録に0.01秒差と迫った。2度目の13秒0台は1回目より、さらに世界に近づいた手応えがあった。

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前半の改善ができれば12秒台も可能な状況に

序盤は6レーンの泉谷と5レーンの髙山峻野(28、ゼンリン)、4レーンのイリバルネ・ロヘル(27、キューバ)が並んでいた。3台目から泉谷が僅かに前に出て、以降はじりじりとリードを広げ、フィニッシュでは13秒25の髙山に0.18秒差を付けていた。3位の石川周平(27、富士通)は13秒36、4位のロヘルが13秒37だった。

昨年の世界陸上オレゴン準決勝の各組4位のタイムは、1組が13秒46(-0.6)、2組が13秒40(+0.3)、3組が13秒22(+2.5)。安易な比較はできないが、追い風参考記録となった3組以外は今大会よりタイムが低い。今年のGGPは世界大会準決勝をシミュレーションするには格好のレベルで、そこで快勝した泉谷は世界大会決勝進出が期待できる。

序盤でリードできなかったのは髙山とロヘルも速かったからで、この3人は国際大会でも前半に強い選手に分類できる。だが泉谷はレースの振り返りで、序盤を「もたついた」と話していた。

「ウォーミングアップで(前レースの)木南記念より動いていたので、前半から突っ込んでしまうと(ハードルへの接触など)ちょっと危ないかなと思って、気持ち抑えめに行きました。2年前の13秒06は前半も、中盤以降もほぼ完璧というか、結構うまくいったレースでした。今回はハードルに何台かぶつけましたし、前半のもたつき具合だとか、中盤以降のハードル間のさばきだとか、全てをもう一段階上げればタイムは上がってきます」

山崎一彦コーチ(順大監督)も「前半から行くと(勢いが付きすぎて)歯止めが効かず、グチャグチャになってしまう可能性がありました。その点は想定通りの走りができた」と評価する。

ハードル間のインターバルタイムは、動画からの簡易分析では1台も1秒を切っていなかった。「1秒ちょっとでずっと行った」(山崎コーチ)と推測される。後半で他の選手が少しずつペースダウンするところで、泉谷はペースを維持したことでリードを広げたのだ。

「2台目から3台目、4台目がまだ向上させられる」と山崎コーチ。前半が上がれば後半で、多少のペースダウンをしてもスピード自体は高くなる。「1秒を2回くらい切れば12秒台が出る」(同コーチ)と期待できる。

13秒0台を安定して出せれば「メダルも」

泉谷が21年6月の日本選手権で13秒06(+1.2)を出したとき、陸上界は驚愕した。そのシーズンの世界5位タイの記録で、当時の日本記録の変遷からも驚異的なレベルアップだったことがわかる。

【2000年以降の110mハードル日本記録変遷】
13秒50 2001年10月17日 内藤真人
13秒47 2003年7月20日 内藤
13秒39 2004年8月24日 谷川 聡
13秒36 2018年6月24日 金井大旺
13秒36 2019年6月2日 髙山峻野
13秒36 2019年6月30日 髙山
13秒36 2019年6月30日 泉谷駿介
13秒30 2019年7月27日 髙山
13秒25 2019年8月17日 髙山
13秒16 2021年4月29日 金井
13秒06 2021年6月27日 泉谷

髙山峻野(28、ゼンリン)の19年の13秒25も、世界大会の決勝進出を期待できるレベルだった。実際に同年世界陸上ドーハでは、予選で13秒32(+0.4)をマーク。準決勝ではハードルに脚をぶつけて敗退したが、前述のタイムは予選全体で5番目だった。

21年に金井が出した日本人初の13秒1台で、世界大会決勝進出の期待がさらに高まった。それから僅か2か月で、泉谷が日本人初の13秒0台をマークしたのである。

今年の木南記念で泉谷は13秒25の自己サード記録を出したが、セカンド記録は13秒21だった。「13秒1台を出したことがないので」と、13秒0台よりも13秒1台を安定して出すことを重視していた。それができれば世界大会で決勝進出が可能な、準決勝での13秒2台を確実に出すことができる。

しかしGGPの13秒07で、泉谷は目標を修正した。「コンスタントに13秒0台を出せるようになったら、決勝は(間違いなく)見えてくる。あわよくばメダルも取れるんじゃないか、と思います」

自身も400mハードルで世界陸上に入賞経験のある山崎コーチは「110mハードルでも海外で後半が強い選手と戦うときに、前半で焦らないことです」と前半の重要性を指摘する。6月の日本選手権後に出場予定のダイヤモンドリーグを利用して、スキルを研いていく。

2度目の13秒0台で、世界陸上日本人初の決勝進出の可能性は高まった。それを確実にするためにも、そして12秒台を出すためにも、泉谷の前半の走りが重要になる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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