
現在のウクライナ出身の現代美術家で、妻との共同制作で国際的に評価されたイリヤ・カバコフ氏が27日、死去しました。89歳でした。
イリヤ・カバコフ氏は旧ソ連時代の1933年、現在のウクライナ・ドニプロペトロフスク州生まれ。モスクワ芸術大で学んだ後、絵本画家として生計を立てつつ、政府の監視から逃れ、30年近く非公式での芸術活動を続けます。
1980年代にニューヨークに拠点を移し、その後、同郷でのちに妻となるエミリア氏とともに「トータル・インスタレーション」と呼ばれる作品を次々に発表。旧ソ連時代の人々の日常生活などを風刺的に再現した作品群が国際的な評価を受け、1993年にはヴェネチア・ビエンナーレのロシア館代表をつとめました。
日本でも2000年、新潟で開催される「大地の芸術祭」で農業に関わる人々をテーマとした作品を発表するなど人気が高く、この芸術祭では去年も新作のモニュメントが展示されました。
2008年には高松宮殿下記念世界文化賞を夫妻で受賞しています。
夫妻の財団は27日、イリヤ・カバコフ氏が親族にみとられて死去したと発表。詳しい死因などは明らかにされていませんが、「偉大なアーティストであり、最愛の夫だった」「ユートピアを想像し続けた」などと死を悼みました。