
南米ガラパゴス諸島の生き物が独自に進化したように、その場所だけで、他の国とは違うものになっていった「ガラパゴス商品」。
【写真を見る】日本でだけママチャリが売れる理由 「ヤバい!」と思ったメーカーが行った“3つの改良”【がっちりマンデー!!】
実は、島国日本には、このガラパゴス商品が結構多い。しかも、それが最近スゴイことになっているんです。
そこで、今回のがっちりマンデー!! x TBS NEWS DIGは「日本だから生まれた!ガラパゴスな儲かり商品」その誕生とヒットの秘密に迫ります!
日本でだけ人気!?ママチャリが独自に進化したウラ話とは!?
日本の儲かるガラパゴス商品は「自転車」。でも自転車でガラパゴスって、ありましたっけ?実は…あるんです!それはママチャリ!!
実はママチャリは日本独自の商品なんです。このタイプの自転車は、アメリカでも中国でも売っておらず、日本でだけ自転車売上げの約70%が「ママチャリ」と、まさにガラパゴス!
一体なぜ日本でだけ「ママチャリ」が売れるのでしょうか?なぜ作られ始めたのか、その歴史と秘密を探るべくやってきたのは、大阪府柏原市にある「パナソニックサイクルテック」。売上げは、どれくらいなんでしょうか?大西一正専務に話を伺いました。
大西さん:「昨年度は404億円ということで。」
スタッフ:「ママチャリの方は、どうなんですか?」
大西さん:「約70%を占めております。」(※2023年3月当時)
なんと売上げの7割、約300億円がママチャリ。今、自転車業界のドル箱はママチャリなんです。では、そもそもママチャリはいつ生まれたのでしょうか?
自転車作り55年のベテラン、山城戸治さんに話を伺いました。
山城戸さん:「1950年代半ばくらいに出てきたという感じですね。」
今から70年ほど前、それまで順調に伸びていた日本の自転車の売上げが、
自動車やオートバイの普及などで頭打ちに。「これはヤバい!」と思った自転車業界が目をつけたのが…
山城戸さん:「女性用の自転車ですね。」
当時、女性で自転車を持っている人は全国平均わずか8.4%。だったら、女性に向けた自転車を作ろう!となったんです。
山城戸さん:「車体の形状なんですけれども、スカートでも乗れるようにとなりますとこのパイプが邪魔になりますので、パイプを下にずらしたようなU型のフレーム形状にしました。」
改良の1つ目は、フレームをダイヤ型からU字型に変更させました。
そして改良2つ目として、小柄な女性でも乗りやすいようサドルの位置を下げ…
さらに改良3つ目、ライトの部分に前カゴを取り付けました。
こうして、日本独自の女性向け自転車「ママチャリ」の原型が誕生したのです。これを普及させるためにパナソニックは宣伝も考えました!
山城戸さん:「自転車を嫁入り道具に使っていただこうということで…」
その名も「自転車!嫁入り道具で普及」作戦!
山城戸さん:「ナショナルの『ビューティー花嫁』(正式名:ビューティーはなたば)という自転車がありまして、花嫁道具として持っていって欲しいという思いを込めて、花柄をチェーンケースのところに印刷したりした、そういった自転車を発売したことがあります。」
すると、この作戦が見事的中。当時、日本のおよそ半分の花嫁が、自転車を花嫁道具の中に入れていたというからスゴい。
そしてこの後、国内でスーパーマーケットが広まってくると、そこへの買い物の足としてのママチャリのニーズは、さらにアップ!10年ほど前からは、お手頃なのに多機能で丈夫な乗り物として、アフリカやロンドンでも「mamachari」の名前で売られるようになり、今や庶民の足に。まさに逆輸入になっているんです。
しかし令和の日本では、このママチャリに異変が。
山城戸さん:「ここにきて第2進化を遂げていると思います。」
ママチャリの第2進化…?
よくわからないので、それを作った方に会いに行くと…
商品担当の柏谷さんと企画担当の吉堂さん、工場担当の森田さんに調達担当の吉桑さんという畑違いのママさん社員たち。
柏谷さん:「(これまでは)男性社員が女性の気持ちを汲んで、『こうだろう』という設定でママチャリを作っていた。」
吉桑さん:「ママの思いを汲んでいただいてる商品にはなっていなかったところもありますね。」
実はみなさん、当時のママチャリに不満を持っていた社内のママさんたち。ある時…
吉桑さん:「『本当にママさん達が乗りたい自転車はこうなんです!』という思いを直接、社長に訴えました!」
なんと、社長に直談判。すると、プロジェクトチームが誕生し、ママさんたち自身が自転車を作ることになったのです。
吉桑さん:「ああいうものもあればいいな、こういう機能もあればいいな、というのがたくさん出てきました。」
森田さん:「溢れ出るぐらい出ました!」
そんな皆さんが作ったママチャリが…「ギュット」。
街でよく見かける、子乗せタイプと呼ばれる自転車。何を変えたんでしょうか?
吉桑さん:「26インチのタイヤを20インチに変更しました。」
ママチャリのタイヤを26インチから、なんと20インチに変更。このアイデアを聞いた本家・開発チームの中田充生さんに話を聞きました。
中田さん:「当時の自転車業界の常識というのは、20インチは売れないと。そんな自転車を作っても売れないのにな、と思っていました。」
車輪は大きい26インチの方が安定するし、速く走れる。だから当時、20インチの自転車は売れない!というのが常識。ところが…
中田さん:「ママさんチームが『20インチが欲しい』と言うから20インチも作るけど、カタログにも大きい方をメインで売り出したんですね。そしたら大きい方が全く売れずに、ママさんチームが推した20インチが売れてしまってですね…」
柏谷さん:「やったー!って感じでした。」
自転車業界の常識を覆し、なんと20インチのママチャリが大ヒット!そこにはママだから気づいた、売れる自転車のヒミツがありました。
中田さん:「盲点だったんですけど、お子さんを乗せた状態で引き上げるのが、女性の中ではかなり大変というのがありました。」
3人乗りママチャリで大変なのが、自転車のスタンドを立てること。
26インチより20インチの方が、サドルからスタンドまで距離が短く、子どもを乗せても自転車を立てやすいのです。
吉桑さん:「一瞬で立てることができます。」
さらに、ママさんリクエストNo.1が日よけの「フォロ」(サンシェード)。
森田さん:「朝日に向かって保育園に送っていって、帰りは夕陽に向かって帰っていくので。」
そこで、日差しを遮りながらも前がちゃんと見えるフォロの網目を開発したというから細かい!
こうして、現代のママさんのニーズに応えまくった進化型ママチャリは、社内の前評判をひっくり返して大ヒットしたんです!
柏谷さん:「皆さんで喜びましたね。」
森田さん:「祝杯をあげました!」
スタッフ:「ちなみに何食べたんですか?」
森田さん:「フランス料理です!とっても美味しかったです!!」
「パナソニックサイクルテック」は…ママチャリで…がっちり!
TBS系列「がっちりマンデー!!」より
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