半導体巡る経済安保~IPEF供給網強化で脱「中国依存」なるか~【Bizスクエア】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2023-06-07 15:00
半導体巡る経済安保~IPEF供給網強化で脱「中国依存」なるか~【Bizスクエア】

アメリカが主導し、日本も参加する経済圏構想IPEFが5月27日、半導体などの供給網を強化する協定を結ぶことで合意した。一方で中国は反発している。

【写真を見る】半導体巡る経済安保~IPEF供給網強化で脱「中国依存」なるか~【Bizスクエア】

IPEFは脱「中国依存」。日本は存在感発揮できるか

5月30日、アメリカの半導体大手、エヌビディアの時価総額が1兆ドル、約140兆円を超えた。生成AI向けの半導体開発に期待が集まったためで、半導体メーカーで1兆ドルを超えたのは初めてだ。今や国家戦略に直結する巨大産業に成長した半導体産業。日本政府も製造強化に乗り出している。

5月18日、G7広島サミット前に台湾のTSMCやアメリカのインテル、韓国のサムスン電子など世界の半導体大手7社のトップが総理官邸に集結した。参加したアメリカの半導体大手マイクロンテクノロジーは、日本での次世代の記憶用半導体の生産に向けて、最大で5000億円を投資すると発表した。

G7広島サミットで焦点となったのは、中国との向き合い方だ。G7の声明では対中関係について、経済を切り離すデカップリングではなく、リスクを低減するデリスキングに基づく経済強靭性、経済安全保障において協調することを打ち出した。経済安全保障に関しては、重要物資3品目「重要鉱物」、「半導体」、「蓄電池」を明示し、世界中のパートナーシップを通じて、強靭な供給網(サプライチェーン)を構築していくとした。

さらに、貿易などを通じて相手国に圧力をかける経済的威圧に対抗する新しい枠組み「調整プラットフォーム」を立ち上げると宣言。これに対し、中国政府は反発。21日、日本への投資を決めたマイクロンテクノロジーの製品について、重要な情報インフラに用いる目的での調達を禁止すると発表した。アメリカによるファーウェイ排除に対抗する狙いがあるものとみられる。

こうした中、西村経済産業大臣は26日、アメリカのレモンド商務長官と会談し、次世代半導体の開発に向けた工程表作りで合意した。27日には、アメリカが主導する新たな経済圏構想IPEF閣僚会合で、14の参加国が半導体や重要鉱物などの物資のサプライチェーンを強化していくことで合意した。中国に依存せずに供給できるよう、相互に協力する仕組みを整えていく方針だ。これを受け、中国政府は29日、「排他的保護主義をとるべきではない」とIPEF側を牽制した。

政府は熊本県で工場を建設している台湾のTSMCに対し4760億円、北海道に工場を建設する計画のラピダスには3300億円の補助金を支給している。今回日本に投資することを発表したマイクロンテクノロジーにも数千億円規模の支援を検討している。

――世界の半導体大手にとって日本を取り込まなければいけないという事情が出てきているのか。

明星大学 経営学部教授 細川昌彦氏:
半導体の後工程の部分で、パッケージで積み上げていく技術は日本が素晴らしいので、台湾や韓国、アメリカの企業は自分たちにないものを求めてくる。そういう強みの技術を持っているというところが一つ。もう一つは台湾有事を考えたら、台湾にだけ先端半導体の工場があるといざ有事が起こったときにリスクが大きいということで、安定的な日本に着目するという二つのポイントがあると思います。日本は自分だけでは何も完結しないので、台湾、韓国、アメリカとどう組んでいくかという国際連携の戦略がとても大事になってくる。

――地政学的な時代に入って、日本が台湾あるいは韓国に代われる場所にいるということもある。

明星大学 細川昌彦教授:
中国を念頭に置きながら、信頼できるパートナー国とどう組んでいくかが大きなポイントで、組んでもらうためには「これがなくては作れない」というものを、サプライチェーンの中で技術を押さえているかが鍵になってくる。

「強じんなサプライチェーン構築」「調整プラットフォーム創設」はこれから

――G7サミットでは経済安全保障に関する特別な首脳声明が出された。これまでの懸念を表明するというところから、一緒に行動するというところに踏み込んできたのか。

明星大学 細川昌彦教授:
まだ踏み込めていないと思います。今回はサプライチェーンの原則で合意した。それは信頼性のあるパートナーと組むということです。

――信頼できるパートナーとサプライチェーンを構築していく対象は「重要鉱物」「半導体」「蓄電池」だとはっきり言っている。

明星大学 細川昌彦教授:
重要鉱物と蓄電池は繋がっていて、リチウム、コバルト、ニッケルを持っている資源国はグローバルサウス。中南米やアフリカのコンゴであったりするわけです。ところが、鉱物を採掘して精錬して加工するところの7、8割を中国が押さえている。

――中国が大半を握っている「採掘・精錬・加工」の部分を資源産出国あるいはG7とパートナー国がやるように変えていく。そういうことをやり始めると中国は対抗策を取ったり威圧したりするではないかという話になる。そこでG7の声明文に戻ると、威圧を受けたときには各国で調整しようと。

明星大学 細川昌彦教授:
一方的に経済制裁をするということを中国はずっとやってきています。1か国では対抗できないので、一緒になって共同対処しようというのがテーマです。共同対処といっても二つあって、やられた国をみんなで協力して救済しようというのが一つ。二つ目は、やり返すという対抗措置を1か国がやるのではなく共同歩調でやりましょうと。

ところが、今後G7で協議する場を作ろうというだけなのです。議長国は日本なのですが、対抗措置を一緒になってやろうと呼びかける場はあっても、肝心の日本が対抗措置を持っていないのです。プラットフォームを作って器だけに終わりかねないということを危惧しています。

――経済安保の分野でも、軍事安全保障の分野で言うような敵基地攻撃能力あるいは反撃能力のようなものを持たないといけないということか。

明星大学 細川昌彦教授:
抑止力です。抑止力を持っていることで、相手の標的になるのを避けていくということが大事です。

――日本は競争力も落ちてきて、経済安保が中心になってくる。

明星大学 細川昌彦教授:
今までは関税を引き下げて自由貿易でという流れでしたが、今大事なのは信頼できる相手国かどうかです。信頼の基準をどう作っていくかはこれからの課題ではありますが、経済パートナーを広げていく一歩が今始まりつつあるということだと思います。

――日本が優位なポジションに行くためには、キーになる技術や人材を持つことは必要だ。

明星大学 細川昌彦教授:
サプライチェーンの中の不可欠な存在でないとほかの国からお声がかからないわけです。技術は磨いていかないと陳腐化します。必ずそういう技術は他の国が追いついてくるわけです。カギになる技術を見定めて、その技術を磨く。官民がお互いにコミュニケーションをとっていないと、その見定めもできないと思います。

(BS-TBS『Bizスクエア』 6月3日放送より)

Cube ニュースの注目記事

  1. 【違う文字を探せ!】「末」の中に紛れて1つ違う文字がある!?あなたは何秒で探し出せるかな??【脳トレ】
  2. アクロバット飛行中のパイロット。ダイナミックな技もさることながら、その機内ではさらに驚くことが行われていました!!
  3. ウナギの生態は謎が多い!そんなウナギの研究の歴史を漫画にしたらめっちゃ面白かった!
  4. トイレから帰ってきたら・・・カーテンレールに巨大なセミが乗っていた!?一瞬目を疑う驚きの光景が話題に!
  5. ヒツジがブランコに飛び乗ったら引っかかって降りられなくなっちゃった!!前足が浮いてしまって大変そうです・・
  6. 池に魚を放流!タンクを開けた男性に『とんでもない』ハプニングが!
  7. 速すぎ!!元陸上選手がラグビーやったら誰も追いつけなかった!
  8. 【読めたらスゴイ!】「鸛」って何のこと?総画数は28画!この漢字、あなたは読めますか?
  9. イカには心臓が3つあるってホント!?心臓を取っても死なないの?
  10. 「換骨奪胎」とはどんな意味の四字熟語?どんな時に用いる言葉?その類義語は?
  11. 涙腺崩壊注意!天国の夫から手紙の返事が!ショート漫画「じょうずなてがみ」
  12. 【飛び起きるレベル】お母さんが「ジョジョの奇妙な冒険」のコスプレで朝起こしに来てスタンド発現したかと思った!

キューブ・ソフトからのお知らせ