
トラブル続きのマイナンバーに、新たな問題が…
本来、本人名義の口座でなければならない「公金受取口座」に、“家族名義”の口座がひも付けられている事例が多数報告されました。
なぜこのような事態が起きたのでしょうか?専門家を交えてお伝えします。
【写真を見る】「子どものマイナンバーに親の口座をひも付けはNG」給付金が受け取れない可能性も カギは“フリガナ”【ひるおび】
マイナンバーの活用に「不安」7割
6月3日・4日に実施されたJNNの世論調査では、マイナンバーに関する「不安を感じている」人は、7割を超えるという結果になりました。
Q.マイナンバーの活用に不安がありますか?
大いに感じている・・・32%
ある程度感じている・・・40%
あまり感じていない・・・21%
全く感じていない・・・6%
答えない・分からない・・・2%
6月5日の参議院本会議において河野太郎デジタル大臣は
「マイナンバーカード関連サービスの誤登録等の事案に関しては、国民の皆様に不安を与えていることは申し訳なく思います。」
と謝罪の言葉を述べています。
マイナンバー公金口座 家族名義の登録多数
そんな中、ひも付け済みの5000万件超の口座情報の再点検において新たな問題が発覚しました。
本来、本人名義の口座でなければならない「公金受取口座」に、“家族名義”の口座がひも付けられている事例が多数報告されたのです。
松野官房長官(6月5日)
「家族名義の口座のままでは給付金の受け取りに支障が生じる可能性を踏まえ、本人名義の口座に変更するよう呼びかけていく予定と承知しています。」
「公金受取口座」を紐付けると国の給付金などを速やかに受け取れるメリットがありますが、名前が異なると給付金の受け取りに支障が出る可能性があります。
「子どものマイナンバー」に「親の口座」をひも付けはNG
複数あると考えられる間違ったひも付け例としては、
▼夫・妻・子 3人のマイナンバーをまとめて妻の口座にひも付け
▼夫・妻 2人のマイナンバーをまとめて夫の口座にひも付け
▼年配の母のマイナンバーを息子の口座にひも付け
などがあります。
マイナポータルの「よくあるご質問」には
Q.子供の公金受取口座として、親名義の預貯金口座を登録できないのでしょうか?
A.公金受取口座は、ご本人名義(口座登録しようとするご本人のマイナンバーカードに記載されているお名前)の口座をご登録いただくこととなっております。
大変お手数ですが、お子様名義の口座をご用意いただくようお願いします。
という記載があります。
子ども名義の預貯金口座 ありますか?
子ども名義の預貯金口座を作っているか、番組でアンケートを行いました。
79人中
ある・・・52人
ない・・・27人
▼「ある」と答えた理由
「誕生の記念通帳を作りたかった」
「児童手当を家計の通帳とは別に貯めておきたかった」
▼「ない」と答えた理由
「ネット銀行で口座を作りたいけれど、年齢的にまだ作ることができない」
「必要がない」
街の人はーー
「子どもの口座は一応あるけど、ひも付けたくない。」
「子どもの分はまだ口座を作ってなくて、ひも付けはしてないんですけど、する人が人いるんだなと思いました。」
「自分の銀行口座とひも付けていて、子どもの口座は作ってないです。全部スマホでやりました。最初できないのかなと思ったけど、できちゃったって感じです。」
‟他人の口座登録” 河野大臣「それはできる」
6月5日の国会で、こんな質問が出ました。
立憲民主党 杉尾秀哉参院議員:
家族以外の口座、全く赤の他人の口座も登録できるということになりませんか?
河野太郎デジタル大臣:
全く赤の他人(の口座)にひも付けをすることができるかといえば、それはできるわけです。意図的にやれば、イレギュラーな操作の中でそれはできます。
なぜ、本人以外の口座のひも付けが可能なのでしょうか?
ITジャーナリスト 三上洋氏:
そもそも今回の問題は、マイナンバーカード自体に、実は「フリガナ」の登録がないこと。私たちの名前の文字の「読み」が入っていないんです。
だから、そもそもチェックのしようがない。照らし合わせができないというところが問題です。
戸籍に「フリガナ」なし 公金口座との照合は不可能
マイナンバーカードは氏名(漢字)・生年月日などを登録し、「フリガナ」の登録はありませんが、銀行口座の名義の照合は‟カタカナ”。
だから、ひも付けした「公金受け取り口座」と「マイナンバーカード」の照合は、システム上不可能なのです。
戸籍謄本にも、「フリガナ」の記載はありません。
日本政策総研の若生幸也理事長によると、フリガナは公的なデータではなく、国は把握していないということです。
日本政策総研理事長 若生幸也氏:
国は「フリガナ」を持っていない。口座はカタカナで登録していますので、そこがひも付けられないという形になってますね。
ITジャーナリスト 三上洋氏:
法律では戸籍自体にフリガナがない。マイナカードも戸籍を見本にするのでフリガナがない。この状態でマイナカードを作ったのがそもそも問題です。
まさか銀行口座とひも付けするということまで想定して作ってなかったから、こういうことが起きてしまっている。
恵俊彰:
でも最初にマイナンバー急がなきゃってなったのは、コロナの時とかに、給付金とかを一気に配れないからでしたよね。
日本政策総研理事長 若生幸也氏:
おっしゃる通りです。給付金を払うのが遅くなってすごく困った人たちがいっぱい出てきたというところで口座をひも付けようと。ただ、フリガナはなかったというところで、実際制度的には穴があるということになりますね。
恵俊彰:
でもこれは今後統一していかなきゃいけないですよね?
ITジャーナリスト 三上洋氏:
そうですね。それは今回の法律改正で変える方向になっています。
マイナンバー法改正へ 今後は
6月2日、マイナンバーカードの活用拡大に向けた「改正マイナンバー法」などの関連法が可決されました。
▼カード券面に氏名の「フリガナ」を追加
▼戸籍法の改正 戸籍・住民票に氏名のフリガナを追加し、公証されたフリガナが各種手続きでの本人確認で利用可能にする
などの事項も盛り込まれています。
この改正マイナンバー法の施行日は、公布から2年以内となっています。
恵俊彰:
今、不都合がある人たちを、まずはどういうふうに正常な状態に戻していくのか、ということですよね。
日本政策総研理事長 若生幸也氏:
そうですね。やっぱりひも付けのミスの部分については、早急に自治体の方も直していかなきゃいけない。
ただフリガナを付けていくという作業はものすごく大変です。郵便を出して、それぞれの住民の方々に返してもらって、というのを考えると法を変えてもやっぱり時間がかかってしまう。確定させるのに時間がかかるので、制度の問題と運用の問題を解決していかないといけない。
恵俊彰:
実際、マイナカードはもう9700万人ぐらいの方が申請しているでしょう。
もうとっくに運転免許証よりも多いわけだから、これだけの方が持ってるんだったらそれはもう徐々に使っていった方がいいわけですよね。
日本政策総研理事長 若生幸也氏:
そうですね。やっぱり個人が特定できるということは、個人にカスタマイズして情報を伝えたり、それぞれの人に合ったサービスを提供する基盤にもなりますから。そういった意味では行政サービスをより良くしていく基盤には使えると思います。
ただやっぱり当然信頼性が重要ですよね。
恵俊彰:
とにかく何か間違った情報が入ってますよっていう方は早急に自分の情報をしっかり入れる、入れてもらう。そういう環境を急いで作っていただきたいなと思いますね。
(ひるおび 2023年6月6日放送より)