
9月21日から秋の全国交通安全週間が始まりました。車や人の流れをスムーズにしてくれる信号機は、交通安全に必須のアイテムです。しかし、同じように見える信号機も、よくよく見ると、様々な違いがあることをご存じでしょうか。中には、すべてが『赤赤赤』という摩訶不思議な信号機まで…。奥深い信号機の世界にご案内します。
【写真を見る】信号機なのに「青黄赤」じゃない!? 実は奥深い、レア信号機の世界
信号機はお宝!? レアな信号機の発見時は達成感が絶大!!
信号機マニアの丹羽拳士朗さんは、時間さえあれば全国各地を巡っています。その土地の名物を食べるのも忘れるほど夢中になって、信号機の写真を撮っているのです。しかも写真は、その土地の風景と信号機というわけではありません。ただ、ただ、信号機だけが写っている写真です。
撮影した信号機は、『Let's enjoy signal!!(信号機を楽しもう)』という自身のホームページに掲載。都道府県別に分類され、クリックしても、クリックしても信号機がでてくるという、これまで信号機を実務的にしか見ていなかった方には、よくわからない世界が広がっています。信号機の魅力とはいったい!?
ーー丹羽さんは、なぜそんなに信号機が好きなんでしょうか?
「信号機は、宝探しのような面白さがあるんです。もちろん、ただ信号機を見るのも好きなんですけど、車を運転している時、歩いている時、ふと、ものすごく珍しい信号機を見つけることがあって、その達成感、喜びは絶大なんです!」
ーー「信号機は宝さがし」ですか。何かきっかけがあったんでしょうか?
「信号機を意識するようになったのは4歳の頃です。『青黄赤』と明かりが整然と動いていく様子がとても好きになりました。好きすぎて、友人がテレビゲームやアニメの話をしている中、僕は『どこどこの信号機が・・・』と話したり、信号機を見たいから高速道路に乗らないでくれと父親に頼んだり、ある時は『信号機さん笑っている』と言って親を驚愕させてしまったこともありました」
ーーえ、信号機って、笑うんですか…。どんどんのめり込んでいったんですね。
「はい。はじめのうちは、ただ見ているだけでしたが、小学2〜3年生になると、信号機の形や見え方が違ったり、種類が豊富であることが分かってきました。
信号機の『種類が豊富』であることを、カメラで捉えたい、みんなに伝えたい、そんな思いで活動しています」
信号機の「種類が豊富」が魅力!! 一体どんな違いが?
ーー種類が豊富って、信号機ってそんなにいろいろあるのですか?
「全然違うんです!製造された時代、製造したメーカー、そして、特殊な道路事情などによって変わります。
「まず、信号機は5〜10年ごとにモデルチェンジをしています。そのため年代ごとに信号機の形は定期的に変わっていっています。
また信号機の寿命は30年程度と言われており、視認性が低下した古い電球式の信号機は、どんどん新しくLED信号機へ交換されています。新しいLED信号機への更新スピードには差があり、静岡県など比較的古い電球式の信号機が、今でも残っている県もあれば東京都、福岡県、長崎県のようにほぼ全てLED信号機への交換が完了したところもあります。
いずれ近いうちに見ることができなくなるであろう古い信号機を撮影しに行くことがよくありますが、既に古い信号機が新しいLED信号機へ交換されていることもあり、その時は仕方ないといえど、ちょっとショックですね。ただ古い信号機は見づらいのも事実ですので、少しでも多く見られるうちに古い信号機をたくさん撮影したいと思っています」
ーー珍しい信号機の情報…それはどこから入ってくるんですか?
「他の方の信号機を紹介しているwebサイトや、twitterでの信号機マニアのツイート、google mapのストリートビューが主な情報源です。その情報を元にオフ会を開催して、信号機マニアで集まって見に行くこともあります」
ーーな、なるほど…。では製造メーカーの違いは何ですか?
「信号機を製造しているメーカーは、いくつもあって、それぞれの特徴を持っています。
「信号機を製造しているメーカーはいくつかあって、それぞれよく見ると特徴があります。例えば大手のコイト電工(電球式信号機製造時は小糸工業という社名)の信号機は昭和に製造された電球式のものは、透明度が高く青の色が他社に比べて濃い青色をしているのが特徴で、とても綺麗な色合いになっています」
「また日亜化学工業という大手信号機メーカーにLEDの素子を提供している企業があります。"青色"LEDを発明し、ノーベル賞を受賞した中村修二教授が勤めていた会社です。
この会社は徳島県にあり、そのこともあってか徳島県内ではLED信号機の導入・復旧が他の県に比べて非常に早く、またしばらくは他の県で普及しているLED信号機よりもLED素子が多いものを最近まで使っていました。(現在は他の県に設置されているものと同等のLED信号機を採用)」
『赤赤赤』の信号機まで?!道路事情ならではの違いも
ーー「特殊な道路事情」とは、どういうことですか?
「道路事情によって、普通の信号機を置けないことがあるんです。それによって、ユニークな信号機がいろいろと誕生しているんです。
例えば、歩行者用信号機と車両用信号機が一体になった信号機があります。なぜかというと、交差点が狭く、歩行者用信号機と車両用信号機を、それぞれ別々の電柱に立てるスペースがないためです。すごく斬新な信号機なんですよ。
あとは、信号機といえば、『青黄赤』に順で並んでいると思いますよね?でも『黄青黄』『赤赤赤』といった通常の『青黄赤』からかけ離れた配列の信号機があるんです。
ーーえええ、そんな信号機があるんですか?
「『黄青黄』の並びの信号機は『予告信号』という、前方に信号機があることを知らせる信号機です。交差点の手前にカーブや大きな建物があり、前方の信号機が見づらい場合に、ドライバーに信号機の存在を知らせる役割があります。なぜ並びが『黄青黄』かというと、予告信号の配色には特に基準がなく、各都道府県の警察が交差点ごとの交通事情に合わせて設置しているからです。
さらに『赤赤赤』の配色の信号機があります。
ーー『赤赤赤』?!それじゃ、進めないじゃないですか!!
「おもしろいですよね。東京都品川区のコンテナターミナルに設置されているのですが、基本は左の赤と真ん中の赤が交互に点滅し、押しボタンを押すと右の赤が点灯します。コンテナターミナルから大型のコンテナがよく出入りしており、青で進行させると危険であるため、一時停止してからの進行を促すため、左赤と真ん中の赤が交互に点滅しているそうです。
『宝探しのような面白さがある』と言いましたが、まさしくこのような信号機を見つけると、お宝を見つけたかのような嬉しさがあります」
なんて奥深い…。街中でよく見かける信号機には、様々な個性があるようです。交通安全を意識しながらも、ユニークな信号機を探索してみるのもいいかもしれません。皆さんにも、信号機が笑いかけてくれる、かもしれませんよ。