「しれっと上げやがって」全国で水道料金上がる “10倍”予測も 老いて破裂する水道管【news23】

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2023-09-27 13:00
「しれっと上げやがって」全国で水道料金上がる “10倍”予測も 老いて破裂する水道管【news23】

全国で水道料金の値上げが相次いでいます。「しれっと上げやがって」。20%値上げした宮城県石巻市では水道代値上げに住民から怒りの声が上がっています。「破裂する水道管」に「人口減少」…こうした課題にどう向き合えばいいのでしょうか。

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水道代値上げ相次ぐ 背景に“老朽化”

9月、大阪府箕面市で水道管の破裂事故が起きました。この破裂は“水道管の老朽化”によるものです。老朽化した水道管の入れ替え作業のコストが膨大なため、料金も値上げしなければならない事態になっています。

全国で目立つ水道料金の値上げですが、例えば、静岡県御前崎市は45.6%↑(2029年度までに)、福岡県飯塚市は35%↑(2022年)、宮城県石巻市と東松島市は20%↑(2023年4月)など、3年で150の自治体が値上げに踏み切っています。

宮城県石巻市で取材したところ、住民たちは怒りの声を上げていました。

「しれっと上げやがって」水道料金2割増

なかの理容 庄子美由貴さん
「『しれっと上げやがって』というのが一番。あれだけ電気料金は騒いだのに、水道だけは静かに上がったんだろう」

宮城県石巻市で理容室を営む庄子さん。憤りを感じているのは、水道料金の値上げです。

庄子さん
「7000円~8000円台だったのが、1万2000円でお釣り来るぐらいになったので、『あれ?』『これは上がってるんだな』と、とにかく感じた」

石巻市では水道料金が2023年6月の請求分から20%値上げ。その結果、庄子さんの自宅では1か月8000円ほどだった水道料金が、1万円を超えるようになったといいます。

「先送りできない」水道管の老朽化

しかし、水道料金が値上げされたのには、やむを得ない事情があります。

その大きな要因の1つが“老朽化”です。

石巻地方広域水道企業団の担当者
「もともとの既設の管は昭和48年(1973年)に敷設された管になります。50年近くなることになります」

水道管の法定耐用年数は“40年”。新たな管に交換する工事が行われていました。多くの水道管が高度経済成長期に作られたため、各地で一気に耐用年数を超えているのです。

問題は更新費用です。

老朽化した水道管は石巻市と隣の東松島市の2つの市だけでも約600km。1000億円近い膨大な費用がかかります。

さらに、浄水場も老朽化。

地域の水道を運営する企業団は、今後40年間で1543億円もの巨額の財源が必要だと試算。

石巻地方広域水道企業団 佐藤義浩事務局長
「先送りにはできない。すぐにでも着手していかなければならない。そのために料金の値上げも検討しなければならない」

こうした老朽化は深刻な事態をもたらします。

2021年、和歌山市で崩落した水を送るための橋。13万8000人が1週間水の出ない生活を強いられたこの事故も、老朽化が原因でした。

老朽化による水道管破裂は、日本全国で年間2万件以上起きているといいます。

20年後までに水道料金の値上げが必要な自治体は94%に上ると予測されていて、安くて安全な水道は今後どうなるのでしょうか?

水道の収入、なぜ減っている?

23ジャーナリスト 片山薫記者:
水道管破裂は年間2万件あり、多くが老朽化によるものだと言われてます。

藤森祥平キャスター:
2023年8月に(アメリカの)マンハッタンにあるタイムズスクエアの駅の辺りで水道管が破裂して、127年間使っていた水道管が破裂しました。

ただ、周りの人も「こういうことよくあるよね」とさらっと流しちゃう、日本とは違う背景がありますが、何かがあったら大変です。

片山記者:
老朽化以外に深刻なのが、水道収入が減っているという問題があります。

<水道収入が減っている理由>
【その1】人口の減少
その理由の1つは人口減少です。人口が減れば水を使う人が少なくなる。水道事業者にとっては水が売れなくなるので、結構深刻です。

【その2】節水技術の進化
さらに拍車をかけているのが節水技術の進化です。

例えば…
▼トイレ:30年前は1回流すと13リットル現在3.8リットル(TOTOより)
▼洗濯機:縦型(12kg)約150リットルドラム式だと約83リットル(日本電機工業会調べ 2021年7月現在)
▼洗い物:手洗い 約88リットル食洗機 約7.5リットル(Panasonicより)

大幅に水の量が減るので、自治体の事業者にとっては収入減となります。

フリージャーナリスト 浜田敬子氏:
水道事業は各自治体がやっていますが、コスト削減のために人員を削減している。人員を削減したから老朽化の手当ができていない側面もあるという記事を先日読んだので、悪循環ですよね。

小川彩佳キャスター:
この人口減少や老朽化は“見えていた未来”でもあったわけです。それをここまで先延ばしにしてきたこともあるのかなとも思うのですが。

東京大学准教授 斎藤幸平氏:
水道システム自体ができたのは高度経済成長の時代なので、そのときは人口も増えて人々が水を使うようになるという楽観的な状況のもとで作ってしまった。現在は過剰投資の状態で、稼働率も6割ぐらいなので、そのあたりを見直していく必要が出てきているのではないでしょうか。

片山記者:
人口減少を自治体が直視していたのかは少し疑問で、産業の活性化や企業誘致などで一定の需要があるのでは?という見込みを立てていたところもあるようです。

もう1つは、水道行政を担当している人は人口も減っているので値上げしなければならないのを分かっているのですが、市長が値上げを判断するのに相当ハードルがあったようです。

小川キャスター:
民営化という選択肢はあるのでしょうか。

斎藤氏:
「公」に任せておくと効率が悪いので民営化してコストダウンしようという話になるんですが、むしろ海外では民営化をした結果「やっぱりうまくいかない」ということで再公営化をする都市がかなり増えてきています。

何が起きているかというと、コストダウンしようとすると一番手っ取り早いのは、専門知を持った職員の削減、あるいは利益を上げるために水道の値段を上げることがむしろ加速してしまいます。水のメンテナンスをする人もいなくなり、水質が安全ではなくなることも起きています。

一番有名なパリでは、25年の契約後に再公営化して、市民が参加する形で公的企業が建て直す形になっているんです。

「安い水道を」「値上げすべき」変わった認識

片山記者:
1つ面白いなと思ったのが、住民側から値上げを提案した自治体があります。岩手県矢巾町で、あるワークショップを(2009年から)やって、住民に向けて行政サービスを学んでもらう機会を作りました。そこで水道行政も見る中で、普通だったら安い方がいいと住民も思っていましたが、実は子どもたちのためには値上げをすべきじゃないかという意見に変わってきたらしいです。

実際に老朽化した施設を見て、今後水道をどうしたらいいんだろうと議論する中で、子どもたちの立場に立った方がいいんじゃないかという話になったそうです。

将来、子どもたちにどういう立場にいてほしいのかという未来の立場で考えると、現役世代が負担した方がいいのはないかという「フューチャー・デザイン」は、新しい考え方だと思いました。

「将来世代」として考える水道

浜田氏:
そういった手法で、住民同士で街づくりを話し合うことは注目されていますが、水道事業だけではなく、将来世代の目線で見るということで見れば、おそらく街づくり全体を考えなければいけないのかな。

つまり、人口が増えていた高度経済成長期は街がどんどん郊外に伸びて、結局、水道管も伸びているわけです。でも人口減少の時は街をコンパクトにしていく。つまり住みたいところに住めるわけでもなくなっていく。もっと言えば、水道事業だけではなくあらゆる公共サービス・行政サービスがこれから財政難の中で維持できなくなることがあるわけです。今、奈良市でやっているのは、ゴミの収集を住民自治の形でやることで、財政難を補っていくことも実験的に始まっているので、注目していきたいと思います。

斎藤氏:
岩手県矢巾町は現状を知るだけではなく、40年後の市民の気持ちになってディスカッションしてみようと相手の立場になってみることで人々の意識が変わっていきます。

あともう一点言っておきたいのは、値段が上がることは別に確定してないんですね。例えばダウンサイジングして適正規模にして広域統合をして、浄水場の数や取水施設を減らしていく方法もできます。また、小水力発電を組み合わせて少しお金がもうけられる形にしていくなど別の方法もあるので、今はラストチャンスだということです。

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