【全日本実業団ハーフマラソン】男子は3年連続の大接戦を2年連続でルーキーが制覇 2位の太田は兄弟合計タイム日本一に

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2024-02-12 09:06
【全日本実業団ハーフマラソン】男子は3年連続の大接戦を2年連続でルーキーが制覇 2位の太田は兄弟合計タイム日本一に

2年連続で新人選手が快走した。第52回全日本実業団ハーフマラソンが2月11日、山口市の維新みらいふスタジアムを発着点とする21.0975kmのコースで行われた。男子は四釜峻佑(23、ロジスティード)が1時間00分42秒の自己新で優勝。前回3位の近藤亮太(24、三菱重工)に続き、ルーキー選手が日本人トップを占めた。同タイムの2位に太田直希(24)、6秒差の3位に鎌田航生(24)と、ヤクルトの入社2年目コンビが続いた。太田の兄・智樹(26、トヨタ自動車)は、1時間00分08秒の日本歴代3位記録を持つ。兄弟合計タイムで、太田兄弟が日本トップになった。

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明暗を分けたスパートのタイミング

四釜はスパートのタイミングを、ある程度決めていた。1月28日の大阪ハーフマラソンで1時間01分41秒の自己新をマークしたが、最後で定方駿(26、マツダ)に逆転された反省からだった。

「大阪ハーフは残り2kmからスパートして、最後で力尽きてしまったんです。その反省から今回のスパートは少し短い距離にして、競技場に入るために曲がる残り700mと決めていました」

それに対して太田直希は、ニューイヤー駅伝1区最後の接戦を制した実績もあり、「最後のスピードは自信があった」と、トラック勝負を想定していた。四釜のスパートに対応できず、10m程度引き離された。

「トラックに入ってもあと500mあったので、そこで自分がスパートできていれば」と、四釜との差を詰め始めた。だが四釜も、同タイムで敗れた大阪の二の舞は絶対に演じたくなかった。「(3、4コーナー間の)電光スクリーンに映っている差を見ながら走っていました。ラスト100mはもう、気持ちで乗りきった感じです」。大阪に続き同タイムの大接戦となったが、山口では四釜が競り勝った。

今大会も3年連続大接戦が演じられている。22年大会は優勝した林田洋翔(22、三菱重工)と2位の中山顕(26、Honda)、3位の田村友佑(25、黒崎播磨)が1時間00分38秒の同タイムだった。昨年は日本人トップの近藤亮太(24、三菱重工)が1時間00分32秒で、日本人2位の茂木圭次郞(28、旭化成)と同3位の今江勇人(26、GMOインターネットグループ)の2人が近藤と1秒差。昨年の近藤も、今年の四釜と同様に順大出身のルーキーだった。大接戦と新人の活躍が、今大会の特徴になりつつある。

四釜の目標は“山の神”。順大OBたちが活躍する理由は?

今大会では四釜だけでなく、4位・鈴木創士(22、安川電機)、7位・西澤侑真(23、トヨタ紡織)、10位・福谷颯太(23、黒崎播磨)とルーキーの活躍が目立った。四釜と西澤に加え20位の野村優作(22、トヨタ自動車)、21位の伊豫田達弥(23、富士通)が順大OBである。

学年は彼らの3つ上になるが、13位の藤曲寛人(26、トヨタ自動車九州)は「同じ集団で走っていると、やっぱり意識しました。勝手に視界に入ってきますから。負けられない気持ちはあったのですが」と後輩たちの頑張りを認め、順大OBが活躍する理由を以下のように話した。

「順大はクロスカントリーで、スピードを出せる動きを身につけます。自分で考えて練習する習慣もつけさせてるので、どの実業団チームに行っても、そのチームのスタイルと自分の練習を上手く融合させられる」

近藤と四釜は近藤が大学3年、四釜が2年時に寮で同部屋だった。普段から連絡を取り合う仲で、近藤は大会直前の取材で「四釜が一番のライバルになると思っている」と話していた。四釜は「レース2日前に近藤さんと会ったときに、15kmまではペースが速くても、余裕を持って行けるから」と前回の体験談を聞いていた。近藤は1時間02分08秒で48位と今年は振るわなかったが、後輩の四釜が前年の活躍を引き継いだ。

四釜は順大では、箱根駅伝山登り区間の5区で活躍した(4年時には区間2位)。トラックのスピードよりも、アップダウンや向かい風に強いスタミナ型の選手だった。それがロジスティード入社後は、昨年12月に10000mで27分50秒05までタイムを縮めている。

「自分の場合は長い距離を走るほど、肩の力が抜けたり、速いペースの余裕度ができたりします。それを実業団に入って感じ始めていて、スピード練習をがんがんやるより、(タイムトライアル的なスピード練習よりも少し遅い)ペース走や距離走をやっていく中で、1km3分00秒や、2分55秒というペースに余裕をもって走ることができるようになってきました」

学生時代から秀でていたスタミナに、実業団でスピードが加わり、ルーキー・シーズンでハーフマラソンの全国タイトルを獲得した。マラソンにも「来年か再来年には走ってみたい」と意欲を見せる。ニューイヤー駅伝公式ガイドの尊敬する選手欄には、今井正人(39、トヨタ自動車九州)の名前を載せている。初代“山の神”から世界陸上マラソン代表(15年)に成長した順大の大先輩である。

兄弟合計タイム日本最高よりもパリ五輪

2位の太田直希が1時間00分41秒を出したことで、兄の太田智樹の1時間00分08秒(日本歴代3位)と足して、ハーフマラソンの兄弟合計タイムが2時間00分49秒となった。これは設楽啓太・悠太兄弟の2時間01分29秒を上回り、日本人兄弟選手最高記録である。太田兄弟は昨年12月の日本選手権10000mでも、智樹が27分12秒53(日本歴代2位)、直希が27分52秒10をマーク。10000mでも兄弟合計タイム日本トップに立っていた。

だが、今大会前に智樹からのアドバイスは特になかったという。兄弟選手はお互いの存在が、なんらかのプラスになっているのは間違いない。ファンやメディアは注目する部分だが、当人同士は世間の注目とは反対に、ドライに考えているケースが多い。太田兄弟の場合は現時点では兄が大きくリードし、パリ五輪代表を現実的に狙えるポジションにいる。それに対して直希は「あまり考えられる位置にはいない」と自覚している。

それでも、今回のハーフマラソン出場は、「トラックにつなげるためです。10000mは5月の日本選手権で3位以内に入ることが一番の目標」と言う。

「パリ五輪は現実的じゃないかもしれませんが、1個1個の大会で良い結果を残していくことは、自分がやりたいこと。ワールドランキングのポイントを積み重ねることは、狙って行きたいです」

直希の成長で、兄弟でパリ五輪を意識できるレベルになった。合計記録がどうこうよりも、太田兄弟にとってはそこが重要かもしれない。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)