「タワマン節税」「空き家問題」2つの不動産相続ルール変更で何が変わる?マンションや古い物件の活用方法は?

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2024-09-22 08:00
「タワマン節税」「空き家問題」2つの不動産相続ルール変更で何が変わる?マンションや古い物件の活用方法は?

今年、不動産の分野で重要な法改正が2つ行われました。いわゆる「タワマン節税」と「空き家問題」それぞれに歯止めをかけるための新制度は、私たちの相続にどう影響するのでしょうか。専門家が分かりやすく解説します。

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不動産での相続対策は、新制度でも依然として有効…収益物件が相続に有利?

まずはタワマン節税について見ていきます。これまでマンションの相続税は、建物と土地それぞれの「相続税評価額」を足し合わせて算出する方法が取られていました。

しかし、住戸数が多いタワーマンションでは1戸当たりの土地の敷地利用権が小さくなるため、市場価格と比べて評価額が非常に低くなる現象が起きていました。

これまで問題視されてきたタワマン節税はこの相続税の計算法を活用していました。市場で高額で取引されているタワーマンションの高層階の物件をあえて購入することで、相続税評価額を相対的に低く抑えてきたのです。

「平成30年の全国の分譲マンションの相続税評価額と売買実例価格(市場価格)の乖離は平均で2.34倍、かつ65%の事例では2倍以上の差があった」と三菱UFJ信託銀行MUFG相続研究所主任研究員の玉置千裕さんも、国税庁のデータを引きつつ指摘します。

つまり、相続税評価額が市場価格の半分以下になるケースが多発していたのです。また、2022年には最高裁がタワマン節税を公平性の観点から問題視する判断を示しています。

そこで今年から国が導入した新たな評価方法では、マンションの階数などを考慮することで、市場価格より少なくとも60%低い程度で相続税評価額が収まるよう調整されました

今回の変更は「”タワマン節税“がなくなったわけではなく、戸建て物件の相続税との差が是正され、公平性がある形になった」のが実態だと、不動産運用のコンサルサービスを手がける株式会社ヤモリ代表取締役の藤澤正太郎さんは評価しています。

つまり、賃貸など収益物件として正当に活用すれば相続税評価額は下がり、不動産での相続対策は依然として有効だという見立てです。

収益物件の評価額が下がるのは、その土地や建物を借りる人が借地権や借家権などという形で地主と権利を分け合う法律上の立て付けがあるためだと、玉置さんは指摘します。

ともすれば”土地を持てる者がますます富める“とも受け取れる仕組みですが、玉置さんは個人的意見だと前置きしつつ「土地を自分だけで持ったままだと、需給のバランスが満たせない。政策的判断もあり、経済が循環していくためこのような仕組みなのでは」と解説します。

藤澤さんも金融資産や単なる土地と違って流動性が低い(換金しにくい)という収益用不動産の特性が考慮されているのでは、と言い添えます。

古い物件、焦って売るのはもったいない… 実は需要があるケースも

マンション相続税評価の見直しは、不動産価格にも一定の影響を与えそうです。不動産市場自体は依然として上昇基調にありますが、相続対策としての需要減が価格を抑える効果をもたらすかもしれない、と藤澤さんは予想しています。

マンション相続とともに注目されるのが、不動産を売買する上での権利関係を明確にする「相続登記」の義務化です。今年4月から、不動産の相続人は取得を知った日から3年以内に相続登記を行う義務が課されました。これを怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。

これまで相続登記が進まなかった背景には手続きの煩雑さのほか「土地の価値が低いと売却も難しく、登記する動機付けが低かったことや、遺産分割協議で誰が土地を引き継ぐが決まっていないケースがあったこと」を玉置さんは挙げます。

特に地方の土地や空き家は活用が難しいことから、これまで相続登記は避けられがちでした。総務省によると2023年10月時点での全国の空き家の数は、住宅全体の13.8%にあたる900万戸に上ります。人口減少や高齢化などを背景に過去最多を更新しており、深刻な社会問題といえます。

地方の実家など古い物件については「こんな古い家、すぐに処分した方がいいのでは?」という意見が家族会議などで出るかもしれません。

ただ、空き家の再生にも取り組んでいる藤澤さんは「リフォームした広い戸建てで子育てをしたい世帯や、金利が上がっている段階で家を買うまで踏み切れない人が賃貸で戸建てに住みたい、という需要は結構ある」とこれまでの経験から力説します。

藤澤さんは「時間が経つほど建物は傷み、価値が下がって負債になる」と指摘します。まずどこに誰の名義で、どんな状態で不動産があるのか整理すること。その上で「これは価値がないだろう」と主観で判断せず、不動産会社以外の様々な人にも相談して早めに手を打つのが良いということです。

「突然の相続で焦ってしまい、売ってしまうのは非常にもったいない。この法改正が、議論が進むきっかけになればと思っています」

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<取材協力>
三菱UFJ信託銀行MUFG相続研究所 主任研究員 玉置千裕[たまき・かずひろ]
株式会社ヤモリ 代表取締役 藤澤正太郎[ふじさわ・しょうたろう]

(TBS NEWS DIGオリジナルコンテンツ「あかさか不動産相談所」より)

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