この4年で“トランプ嫌い”が4割弱から2割強に~TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」~【調査情報デジタル】

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2025-02-08 08:00
この4年で“トランプ嫌い”が4割弱から2割強に~TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」~【調査情報デジタル】

今年(2025年)1月20日に、ドナルド・トランプ氏が第47代アメリカ合衆国大統領に就任。17年から第45代大統領を務め、20年の選挙でジョー・バイデン氏に敗れましたが、再び大統領に返り咲きました。

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第1期トランプ政権といえば、21年1月6日に起きた連邦議会占拠事件。「選挙に不正があった」というトランプ氏の主張に煽られた支持者たちが、バイデン氏大統領就任の正式確定手続き中の連邦議会を襲撃し、議事堂を占拠。
選挙結果が受け容れがたいからといって実力行使に及ぶなんて。民主主義大国アメリカでのこの事件に非常にショックを受け、「偉大なアメリカ」というイメージに大きな疑問符がついたことをよく憶えています。

その後、23年8月にアメリカ連邦大陪審は、この事件に関わったとしてトランプ氏を起訴。「大統領経験者として米国史上初めて起訴」(朝日新聞、23年8月2日)されながら、そこから再出馬。
再選はないと思いきや、ふたを開けると「トランプ氏が七つの激戦州すべてを制し」「各州に割り振られた選挙人538人のうち、過半数(270人)を大きく超える312人の獲得を確実にし、2016年の初当選時(306人)も上回る結果」で当選(朝日新聞、24年11月12日)。

その直後の11月25日、トランプ裁判に関わる特別検察官が起訴の棄却を申し立て、「大統領選をめぐる事件では首都ワシントンの連邦地裁が25日、即日で申し立てを認め、起訴は棄却」に(朝日新聞、24年11月27日)。
さらに先日の就任演説で「バイデン政権が作り出した災難をひとつ残らず修復する」と語り、「20日の就任以来、30本を超える大統領令に署名」しています(朝日新聞、25年1月27日)。

大統領になれば、それまでのゴタゴタが一気に正当化されたり、不問に付されたり。これまでと正反対の政策に次から次へとゴーサインが出され、その権限の絶大さに驚きを超えて怖さを感じるほど。
しかし、アメリカ中がトランプ支持なわけではなく、国内の分断・対立も深刻だと言われるのはご存じの通り。支持者にとっては救世主でも、反対者にとっては悪魔のような存在かも知れません。

好きな大統領、好きになれない大統領

日本にとってアメリカは安全保障でも貿易でも極めて重要な存在であり、そのリーダーも、聞こえてくる評判で好意を持ったり、好きになれなかったり。そうした日本側のアメリカ大統領への思いを調べたデータがあります。

TBS総合嗜好調査(注)が、国内外の政治家・著名人を選択肢に「好きな人」および「好きではない人」としていくつでも選ばせる質問を、2014年から毎年実施。そこに含まれているアメリカ大統領について、東京地区での好き嫌いの数字の動きをまとめてみたのが次の折れ線グラフです。

質問を始めた14年は、第44代大統領バラク・オバマ氏が2期目の2年目。
オバマ氏を嫌う人は極めて少なく、好意度は14~15年の1割程度が、伊勢志摩サミット来日の16年に倍増。このとき、現職大統領として初めて広島平和記念公園を訪問したことなどが、日本の人々に好感をもたらしたのかも。

一方、トランプ氏は就任前の16年で不人気度が4割近く。ウィキペディア曰く、「出馬当時から日本を中国やメキシコと並べ、『米国から雇用を奪った国』として責めたてるなど、『ジャパンバッシング』の急先鋒」だったとか。
とはいえ、就任した17年の訪日時には北朝鮮拉致被害者家族と面会し、解決に向けた協力を約束したこともあってか、嫌う人は3割に減少。

翌18年、「アメリカ第一主義」が中国と衝突して貿易戦争が激化。「安全保障を理由に関税引き上げ等を認める」通商拡大法第232条(ウィキペディア)が適用された日本でも緊張が高まり、トランプ不人気も再び上昇。
19年は「我々が彼らを守るなら彼らも我々を守る必要がある」(ウィキペディア)と日本に防衛費の負担増を求め、不人気も定着状態に。
トランプ氏に責められ振り回されて「オバマさんはよかったなあ」と思ったのか、退任後のオバマ氏人気がここで上昇したのは何とも皮肉。

そして20年。新型コロナウイルス対策では感染拡大を過小評価したと批判され、経済への影響も深刻化。黒人への暴力や人種差別撤廃を訴える「ブラック・ライヴズ・マター」運動には、沈静化に軍の投入を示唆して批判されるなど、あちこちで評判を落としたトランプ氏は大統領選で落選。

21年就任のバイデン大統領は、日本人(厳密には東京の人)には好きも嫌いもない感じ。それでも好意より不人気のほうが多いのは、ガザへの攻撃を止めようとしないイスラエルを支持するからだと思うのは、筆者だけでしょうか。

そして再びトランプ氏。24年11月本選直前、10月の調査結果で好意は1割未満で以前と同様ながら、19年に4割弱(38%)だった不人気が2割強(24%)まで低下。昔は不快の念と反発が強かった日本人も、すっかり慣れて気にならなくなったとか……?

年配者のアメリカ愛憎

TBS総合嗜好調査では、大統領の好き嫌い同様、国の好き嫌いも質問。
その中から「アメリカ」について、2014年以降の数字の推移を年代別にまとめると、次の折れ線グラフのようになりました。

グラフでは、全体としてアメリカが好きな人のほうが圧倒的に多く、嫌いな割合は1割未満。年代別では、若年層(10~20代)や中年層(30〜50代)より年配層(60~70代)のほうが好意度にアップダウンが見られます。

年配層を細かく見ると、オバマ政権時の4割程度がトランプ政権で3割に低下。バイデン政権前半に4割弱まで戻すも、後半は3割まで低下。
一方、若年層では、オバマ政権から第1期トランプ政権にかけて5割弱で変わらず。トランプ政権末期の20年に数字を落とし、バイデン政権になって持ち直すも徐々に減少。中年層はこの10年、4割前後の好意度で安定。

思うに、年配層でアップダウンが大きいのは、年配層ほどアメリカへの憧れが強いからではないでしょうか。

戦後の日本にとってアメリカは、仰ぎ見る大きな存在でした。
戦勝国アメリカが、敗戦国日本の軍国主義を一掃して民主主義を持ち込む。電化製品、自動車、広い邸宅といった「豊かな市民生活」を見せつけ、戦後の貧しい日本人が憧れを抱く。アポロ月面着陸、ベトナム反戦運動やロック、ヒッピー、カウンターカルチャーもアメリカ発。

もちろん憧れだけでなく、経済では日本が力をつけると対米輸出が問題になったり、ドル・ショックにオイルショック、リーマン・ショックとアメリカに振り回されることもしばしば。国際政治でも冷戦終結、湾岸戦争、イラン戦争と、アメリカの思惑が絡んで世界の形が大きく変わってきました。

こうしたことを見つめてきた年配層にとって、アメリカへの憧れが大きかった分、トランプ氏が振り回すアメリカ第一主義への反発も大きいのでは。
逆に、豊かな日本に暮らし、年配層ほどアメリカとの差を感じていない中年層や若年層では、大統領とアメリカ自体への好意は別物なのかも。
それでも意識が高いZ世代の若年層は、環境問題や人権問題へのトランプ政権の対応がひどすぎて、20年にはアメリカへの好意も下がったとか?

「愛国者」の国アメリカ

2期目の就任演説でトランプ氏は「わが国は権利と自由のために全てをささげた何世代にもわたる愛国者たちによって築かれてきた」と述べました(2025年1月21日付時事通信)。
彼は「2021年の議会襲撃事件で有罪となり服役している支持者を『愛国者だ』とたたえ、敬礼したことが物議を醸して」います(産経デジタル、2024年3月21日)。

彼を支え、彼がたたえる「愛国者」。アメリカの作家アンブローズ・ビアスによる、政治や人間関係への鋭い洞察で有名な『悪魔の辞典』では、以下の定義が与えられています。

愛国者(patriot ​n.)部分の利害のほうが全体のそれよりも大事だと考えているらしい人。政治家に手もなくだまされるお人好し。征服者のお先棒をかつぐ人。

こう言われて、ニヤリとする人と真っ赤になって怒る人が、今、アメリカを二分しているのでしょうね。

注:TBS総合嗜好調査は、衣食住から趣味レジャー、人物・企業から、ものの考え方や行動まで、ありとあらゆる領域の「好きなもの」を調べる質問紙調査です。TBSテレビが、東京地区(1975年以降)と阪神地区(1979年以降)で毎年10月に実施し、対象者年齢は、1975年が18~59歳、76~2004年が13~59歳、05~13年が13~69歳、14年以降は13~74歳となっています。

引用・参考文献
・「ドナルド・トランプ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2025年1月27日(月) 12:11
・「1962年通商拡大法」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2024年10月11日(金) 18:45
・アンブローズ・ビアス著・西川正身編訳(2017)『新編 悪魔の辞典〔電子書籍版〕』岩波文庫

<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング局も兼任。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。

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