日米首脳会談、日本への要求は?トランプ関税が経済に与える影響とは【Bizスクエア】

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2025-02-12 06:00
日米首脳会談、日本への要求は?トランプ関税が経済に与える影響とは【Bizスクエア】

トランプ大統領の関税を使ったディール=取引が本格化している。

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トランプ流“ディール”関税の発動延期も…

トランプ大統領:
メキシコとはすばらしい話し合いができた。

トランプ大統領は2月3日、突然、翌日の4日に予定していたメキシコとカナダへの
25%の関税の発動を1か月遅らせることで合意したと明らかにした。

理由は、メキシコとカナダがトランプ大統領が問題視しているアメリカへの不法移民や合成麻薬「フェンタニル」の流入への対策を打ち出したため。メキシコは兵士1万人を国境地帯に派遣することを決め、カナダも13億ドルを投じ、ヘリコプターや最新技術を使って国境の警備を強化するとしている。

アメリカの追加関税に中国が報復 パナマ運河めぐりアメリカの圧力も…

メキシコとカナダへの関税の発動は延期された一方で、中国とは貿易戦争の幕開けとなった。トランプ大統領は2月4日、予告していた通り中国に対する10%の追加関税を発動した。

これに対し、中国政府は、2月10日からアメリカの石炭や液化天然ガスなどに15%、原油や農業機械などに10%の関税を課す報復措置を表明した。習近平国家主席との首脳会談の可能性についてトランプ大統領は…

トランプ大統領:
適切な時期に話すだろう。急いではいない。急いではいない。

このように話し、報復関税についても「結構なことだ」と述べ、強気な姿勢を示した。
さらに、アメリカが中国との関係で問題視しているのが、中米のパナマ運河の問題。

トランプ大統領:
中国が運河を運営している。我々は運河を取り戻す。さもないと、大変なことが起こる。

大西洋と太平洋を結ぶパナマ運河は、世界の海上貿易を支える重要な運河。両端の港を香港に拠点を置く企業が管理していて、トランプ政権は、有事の際に中国が封鎖する恐れがあると強い警戒と不満を示し、パナマ政府に対して運河の現状を正さないと「必要な措置を講じる」と迫っている。

パナマ政府は2月2日、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」から離脱する方針を表明した。

日米首脳会談 日本への要求は?

こうした中、日本時間の8日未明に行われた日米首脳会談では…

トランプ大統領:
アメリカは日本に対しておよそ1000億ドルの貿易赤字を抱えている。しかし、私たちはそれを縮小し、対等な関係にまで持っていきたい。簡単にできると思う。

注目の日本への関税については会談後の記者会見の中で、具体的な言及はなかったが、トランプ大統領は、貿易相手国と同様の関税を課す「相互関税」について「来週の月曜日か火曜日に発表するつもりだ」と表明した。対象国などについては言及しなかったが、ロイター通信は複数の国が対象になる見通しだと伝えている。

トランプ大統領は、日本製鉄によるUSスチールの買収計画をめぐっては「買収ではなく多額の投資を行うことで合意した」と述べている。

日米首脳会談 USS買収計画に大きな変化

日米首脳会談が行われていたワシントンから中継で、涌井記者に話を聞く。

――USスチール問題。「買収ではなく投資」の意味は?

ワシントン支局 涌井文晶記者:
トランプ大統領としては買収に反対というこれまでの姿勢を示しつつ、投資を受け入れるとして日本側のメンツも一定に立てるという形でディールを演出したように見える。ただトランプ大統領の買収ではなく、多額の投資を行うことで合意したという言葉、これが何を指すのか。日本製鉄がUSスチールの全株を取得するという現在の計画を見直すことを指しているように聞こえるが、具体的なことははっきりしていない。またトランプ大統領は日本製鉄にUSスチールの所有権が移るのは心証が良くないと述べていて、引き続き買収には反対だという姿勢を強調している。来週トランプ氏は日鉄のトップと会談して具体的なことを調整すると話していて会談の行方が焦点になる。

――日米首脳会談で関税について日本に対して、具体的な言及がなかった。

ワシントン支局 涌井文晶記者:
今回トランプ氏が強く求めていたのが、貿易赤字の削減・解消。石破総理はそれに応える形でトランプ氏とアメリカ産の液化天然ガスLNGの輸入増加や、日本に近いアラスカ州からのエネルギー輸入も検討していくことで合意した。日本のエネルギーの拡大が赤字削減に貢献するという見方からかトランプ氏は関税についてはそれほど話し合っていないと記者会見で話した。

また石破総理は日本からアメリカへの投資を増やしていくという意向を示したほか、防衛費の増額をしていくという方針を示した。こうした日本側の姿勢がトランプ氏の理解を得られたのではないかと思う。

トランプ関税発動 強硬姿勢は今後も続く?

――カナダやメキシコに対しては猶予、そして中国に対しては発動。この先は?

ワシントン支局 涌井文晶記者:
トランプ大統領は記者会見で、貿易相手国がアメリカの輸入品にかけているのと同じ関税をかける「相互関税」に言及。来週の月曜日か火曜日にその詳細を発表すると明らかにした。

高関税をかけているとして問題視している国に対して課税する方針だとみられている。これまで名指ししている国として中国のほか、インドやブラジルなど名前を挙げたことがある。日本も農業分野では関税が残っているので、今まで名指しは避けられているが狙われる可能性も否定できない。

また個別の国への関税だが、メキシコとカナダに対しては移民問題での成果を得て、支持者にアピールできたということで交渉の道具という成果が強かったため、一旦延期ということになったわけだが、中国に対してはもう少し腰を据えて貿易赤字の削減を目指した本格的な貿易戦争を仕掛ける可能性が高いというふうに見ている。現在の10%の追加関税というのはいわばジャブのようなもの。今後選挙戦の中で言及していた60%、あるいはそれ以上という形で関税の引き上げをちらつかせてくるということは十分考えられて、今後も世界経済を振り回していくということになりそうだ。

日米首脳会談 注目点は?

会見の要旨。「USスチールは買収ではなく多額の投資を行うことで合意した」「アメリカへの投資を1兆ドル(150兆円)規模に引き上げる」「アメリカのLNG輸出拡大で合意」「アメリカの貿易相手国と同様の関税『相互関税』を課すと表明」として、これについての対象国は言及されなかった。

――日本側にとってまずまずの内容。

BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
成功と言えるのではないか。何人か外国人の投資家と少し喋ったが、彼らの注目点も「今回は日本が関税を持ち出されなかったら、石破政権の成功」と言っている人が多かった。なのでその意味から見ても成功だったと感じている。

――LNGを買ってくれという話は心配か。

BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
心配だ。というのは今のトランプ政策の一つとして、気候変動対策はいらないと言っていて、石油・石炭を掘りまくれという。アメリカの経済的にはそれでいいが、やはり地球規模で気候変動対策をしなければならないことを考えると、LNGを日本がバンバン輸入することになれば、日本としてもCO2を出すことに組してしまうことになるわけだから、これどうするんだろうと。そもそもコストも高い。ここはどう落とし前をつけるのかわからない。

――もう一つは投資。日鉄も投資だということであればこの1兆ドルに入る可能性がある。

現在の対米投資額。日本は一番たくさん投資をしている。既に8000億ドル弱。1兆ドルは無理な目標ではなく、日本企業にとってもアメリカに投資することはメリットが大きい。

BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
アメリカの市場が魅力的なので、どんどん出ていくことにはなるが、日本が長いこと経済成長できなかった一つの理由は、対内直接投資がなさすぎること。外にばかりお金を出していて、中に持ってこれてないという大問題を合わせて日本はどう解決するのか。

――日本企業はアメリカには投資するが、国内には全然投資しない。

BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
日本の経済成長は毎年1%ずつしていくと言っている。海外に投資するのはいいことだと思うが日本の投資はどうなるのかということをセットで考えてもらわないといけないと思う。

トランプ流“ディール”関税の発動延期も…

そして、焦点の関税。大きな動きがあった。メキシコとカナダに対しては25%の関税を予定していたが、不法移民や合成麻薬の流入対策として、メキシコは国境地帯に兵士1万人を派遣するカナダは13億ドルを投じると表明したことによって、1か月延期となった。

一方で中国は発動。中国は10%の追加関税発動し、これを受けて報復措置として石炭、液化天然ガスなど25%、原油、農業機械などに10%の関税を課すとしている。

――メキシコ・カナダに対しては不法移民対策をさせるために脅しに使った?

BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
トランプ政権の第1期のときも、口で言っているほど移民に対して厳しくもなかった。今回もすごく口で言っていたり、今不法移民と言われてる人たちを捕まえたりして恐怖政治を強いていてそれをやることによって、不法移民が入ってこなくするという効果もある。トータルで見たらどうかというのはすごく悩ましいところだが、メキシコに対して「不法移民対策をやります」と言われたので、関税をかけないようにするのは本当にディールとしてうまくやっている。

――中国の方は結局ディールの狙いが、まだ我々にもよく見えてない。

BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
アメリカにとって中国というのは、他の国よりも大きくて魅力的なマーケットだと思う。言い方が悪いが、カナダとかメキシコは、それはアメリカに対しては、どちらかというとフォロワーで従属する感じ。中国は取っていきたい市場。そこに対してどういう措置を取るかということが本当にトランプ大統領にとってもキーだと思う。なので、できるだけあのディールを中国から取りたいと思うので、どんどん段階を経てうまく考えてはいる。だが、中国も中国で考えているのだろう。

――トランプ関税政策が、世界経済に与える影響は?

BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
関税そのものをかけるというと、普通は米国と中国の景気は悪くなります、インフレは上がっていきますというのがまず定石。だが、それだけで本当にいいかというと、セクターによって違う。商品によって関税を変えたりとか、どうしても欲しいものは買わざるを得ないので、他のところに移すとか、得をする人も出てくるかもしれない。なので、関税をかけるというとすぐネガティブなことしか出てこないが、ものによっては得なものも出てくるかもしれないというのもあわせて見なくてはいけないというのが、難しいところ。

――対中関税で日本の輸出は逆に伸びて、日本のGDPはプラスという試算もある。

BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
そういう見方をしてる人も結構いる。トータルで見るとそうなんだと。ただ当然だが、日本から中国に物を輸出して、中国からアメリカに行ってるものもある。なのでそういうことを考えるとそこは×になる。だがトータルで見ると中国から出たものが、日本や台湾、別のところから買うことにはなるのでプラスになるという見方もある。トータルで見て、自由経済ではなくなっていくと、何かしらの損は出てくる。トータルで見て本当にポジティブだとは思わない。

――いつ、どこの国の関税がどうなるかわからないと、予見性がなくなり、いろんな投資が止まるのでは。

BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
何でもネガティブではないので、視聴者で投資をしている場合は、全部×ではないということだ。セクターによっては得をするセクターもあるかもしれないので、そこは中身を見て考えていただきたい。

(BS-TBS『Bizスクエア』 2月8日放送より)

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