「危ない人物という情報があったのに…」 悪質M&A問題で仲介会社の責任訴え提訴 “預金抜き取る”JNN追及の人物めぐり
中小企業を狙って買収後に預金を抜き取るといった悪質なM&A業者が問題となるなか、「危ない人物という情報があったのに伝えなかった」として、仲介会社の責任を訴える裁判が起こされました。
【写真を見る】「出入り禁止確定」DX社がA氏に問題があったと認めたやりとり
訴えを起こした社長
「彼が危ない人材だと分かっていて、僕を紹介している。全くもって責任感の欠片もない」
こう話すのは、東京地裁に提訴した介護施設の社長です。
去年3月、東京に本社のある仲介会社M&A DX社に紹介された買い手企業に会社を譲渡しました。この買い手企業というのが、中小企業を狙った「悪質M&A業者」としてJNNが追及してきた人物、A氏でした。
買収した会社の預金を抜き取るなどして、複数の介護施設を閉鎖や倒産寸前に追い込んでいました。
「(Q.キャバクラで法人カードを使われた?)あれは接待や金額自体は自分の給料と相殺している。(Q.お金を抜いて逃げる手法を取っているように見えるが)それはもう全然間違いだと思います」
この社長の会社でも、経営を譲った直後に預金1300万円あまりが抜き取られるなどのトラブルが発覚しました。
このため、社長は株式をすぐに取り戻し、経営に復帰しましたが、A氏とは連絡が取れなくなりました。今回、社長はM&A DX社に仲介料として、1900万円あまりを支払っていました。
「A氏が別の会社に詐欺的な行為を行っていた」という情報を得ていたにもかかわらず、DX社は調査もしていなかったとして、3000万円あまりの損害賠償を求めて提訴したのです。
JNNの取材では、DX社はA氏を少なくとも4つの会社に紹介していましたが、この4つの会社すべてで財産が著しく流出するなどのトラブルが起きていました。
訴えを起こした社長
「(A氏に)売ったら潰れると、わかっているわけじゃないですか。わかっていて紹介しているので、全く取引の後のことは考えていない」
当時のやりとりには、社長が譲渡契約を白紙に戻した後、DX社の担当者がA氏に問題があったことを認めるこんな音声が残っています。
DX社の担当者
「僕もこの仕事やって5年、いろんなお客様に会いましたけど、ここまで悪質、初ですよ。さすがにないわと。僕、もう彼(A氏)に言いました。出入り禁止確定と」
しかし、担当者はこの後も、さらに違う会社にA氏を紹介していました。
訴えを起こした社長
「(自分の後に紹介された)会社は倒産されているので、本当に気の毒。人の会社、人の人生をなんだと思っているんだ」
DX社は今年1月、社長側に対し、「真偽が不確かな情報を他のお客様にお伝えすることは困難です」などと伝えた一方、取材に対してはこれまでに回答を寄せていません。
訴えを起こした社長
「全くもって悪意で、手数料欲しさの取引でしか考えられない。責任は重たいと思います」