前代未聞のエルサルバドル「刑務所ビジネス」受刑者収容の見返りに8.5億円 “世界最恐ギャング”専用「テロリスト監禁センター」日本人も標的に?【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-04-16 13:40

中米・エルサルバドルにある“世界最恐”の刑務所「テロリスト監禁センター」。エルサルバドル政府が、いま乗り出しているのが外国から受刑者を受け入れる“刑務所ビジネス”。「日本人も収監されるかもしれない」と指摘する声も出ています。

【写真を見る】刑務所の秩序を維持する手段として、監房に隣接する「懲罰房」の内部

見返りに8.5億円 前代未聞の“最恐刑務所”ビジネスとは

14日、ホワイトハウスを訪問したのは、エルサルバドルのブケレ大統領。トランプ大統領との関係はとても良好なようです。

アメリカ トランプ大統領
「あなた方の素晴らしい仕事に礼を言います。感謝しています」

エルサルバドル ブケレ大統領
「我々は小さな国ですが、お手伝いできます」

不法移民対策をアピールするトランプ政権は3月、アメリカで拘束した200人を超えるベネズエラ人らをエルサルバドルに移送しました。全員が“凶悪犯罪を繰り返すギャング”のメンバーだと主張しています。

エルサルバドル政府は移送されたベネズエラ人をギャング専用の巨大刑務所「テロリスト監禁センター」に収容。見返りとして、アメリカから600万ドル(約8億5000万円)を受け取るということです。

ブケレ大統領(SNSより)
「アメリカは非常に安い料金を支払うが、我々にとっては高い額だ」

外国人の受刑者を手数料を取って受け入れる、前代未聞の“刑務所ビジネス”です。

人口は約600万人、面積は九州の半分ほどの中米・エルサルバドル。

9日、私たちは国会を訪れました。巨大刑務所への外国人移送をめぐり、「世界中の人に知ってほしいことがある」という議員に会うためです。

中米・エルサルバドル“最恐刑務所”次なる標的は…日本人も収監へ?

野党・アレーナ党のマルセラ・ビジャトロ議員。近い将来、アメリカから日本人を含む各国の人々が、エルサルバドルに移送される可能性があると危惧しています。

野党 ビジャトロ議員
「日本人も刑期を務めるためにこの国に来る可能性が高い。それは残念なこと。私たちエルサルバドル人は、犯罪者を収監する国として記憶されたくない」

エルサルバドルでブケレ大統領はカリスマ的存在。支持率は9割を超え、議会も60議席中、57議席をブケレ派が占める事実上の一党独裁体制です。

野党 ビジャトロ議員
「エルサルバドルは書類の上では民主的だが、実際には違う。かなり独裁的な人物が政権を維持している」

国民の支持を背景に絶大な権力を持つに至ったブケレ氏。その力の源は「ギャングとの戦い」です。エルサルバドルは、かつてギャングの縄張り争いが絶えず、「世界で最も治安が悪い国」と呼ばれるほど、国民生活は荒廃していました。

「全土で愛されている」ギャング撲滅で権力握る大統領

ブケレ氏の大ファンだというマリアさん。自宅の壁には大統領の写真がたくさん飾ってあります。

ブケレ大統領を支持 マリアさん
「彼は本当に偉大で、エルサルバドル全土で人々から愛されています」

ブケレ氏を支持する理由は、孫娘の「誘拐事件」です。5年前、当時12歳だった孫のパオラさんが学校からの帰宅途中、同級生の母親によって連れ去られました。

マリアさん
「彼女は私たちが小さな商売を営んでいるのを見て、僅かな稼ぎを奪おうとしたのです」

同級生の家族はギャングの構成員で、身代金目当てでパオラさんを誘拐。薬で眠らせて監禁しました。その後、決死の覚悟でギャングのアジトに侵入したパオラさんの父親が、娘の救出に成功。

ギャングに誘拐された 孫・パオラさん
「ギャングは私を誘拐したとは一度も言いませんでした。外出はできず、アジトのような場所でした。今ここにいることを神に感謝しています」

――神様のおかげですね

マリアさん
「心から神に感謝します」

「10年間で500件以上の罪を犯した」“最恐ギャング刑務所”内部は 

2019年、こうした状況のもとで誕生したブケレ政権。ギャング対策を最大公約とし、司法手続きを経なくても逮捕を認めるなど、強権的な措置で世界最悪だった殺人事件の発生率は劇的に改善しました。

そのブケレ政権の象徴が、「テロリスト監禁センター」です。
2024年8月、特別な許可のもと私たちの取材に応じた受刑者は...

ギャンググループ元リーダー
「10年間で500件以上の罪を犯した。殺人、暴動、テロ行為だ」

施設の責任者は、刑務所の秩序を維持する手段として監房に隣接する「懲罰房」の部屋を紹介しました。

記者
「一度ちょっと体験してみてはどうかということで、中に入ってみます。真っ暗です」

トラブルを起こすなどした受刑者は、この真っ暗な懲罰房に入れられます。法律では15日間までこの部屋に隔離することが認められているということで、初めは反抗的な受刑者もすぐに“従順”になるそうです。

刑務所の責任者
「食事は通常3回。監禁中は医師が常に監視しています」

エルサルバドル政府は、ギャングを「テロリスト」と定義し、受刑者たちは原則として24時間365日、この建物の中で過ごします。「社会復帰させない」ことが前提で、家族はもちろん、外部との接触は一切認められません。

この巨大刑務所の定員は4万人。現在収容されているのは2万人程度とみられます。
今、その空いているエリアに、トランプ政権が移送したベネズエラ人らが収監されています。

“刑務所ビジネス”拡大で世界中の犯罪者を収監?

ベネズエラでは「不当な人権侵害だ」と大規模な抗議活動が起きています。

不法移民対策をアピールするトランプ政権は、移送したベネズエラ人は「全員がギャング組織のメンバー」と主張していますが、移送された人の家族や人権団体は「ギャングとは無関係な人たちばかりだ」と訴えています。

ベネズエラ政府の代理人を務めるオルテガ弁護士は、「まずは移送された人たちの安全と健康状態だけでも確認したい」と交渉していますが、刑務所内に入ることもできないそうです。

ベネズエラ政府の代理人 オルテガ弁護士
「テロリスト監禁センターで拘束されているベネズエラ人とは一切連絡がとれていない。彼らのほとんどは犯罪とは無関係です」

――刑務所から公式に生きて出てきた人はいないと聞いたが
「1人もいない」

オルテガ弁護士は今後、刑務所ビジネスが拡大し、各国の受刑者がエルサルバドルに移送される可能性が高いと指摘。「もし日本人が収容されることになれば日本政府はとても苦労するだろう」とみています。

14日、ホワイトハウスで立ち話をするトランプ氏とブケレ氏。

トランプ大統領
「次は“ホームグロウン”だ。あと5つは建設しなきゃ」

ブケレ大統領
「そうですね」

「ホームグロウン」は、アメリカ人の犯罪者のことを意味するとみられ、アメリカ人をエルサルバドルに送り込むのではないかとの懸念がでています。

“刑務所ビジネス”で移民を国外へ アメリカ人も対象に?

小川彩佳キャスター:
真山さんはどう見ていますか。

小説家 真山仁さん:
人権を無視しているし、酷いことをやっているが、アメリカでは面倒な人がアメリカからいなくなってくれるのはいいことだと思う人が多いのではないか。元々国際的にモラルの見本をしていたアメリカだが、トランプ政権になってからは「アメリカにとって嫌なものは全部国外に追い出そう」、「自分たちさえ良ければいい」ということが徹底され始めた。誰もそれに対して反論できないし、文句も言えなくなっている。

こうなってくると「もう勝手にやってください」と言わざるを得ないのですが、一方でそれを止めるのが国際政治です。これだけのことをやっておいて「ひどい話だよね」では済まない。だからこそ、「ちゃんとまともな国になってください」ということを世界中の国が言わなくてはいけない。

小川キャスター:
止められないどころか翻弄され続けていますからね。

========
<プロフィール>
真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「ロスト7」

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