ラーメン1杯“1000円の壁” 人件費・原材料費高騰のなか、注目は“具なしラーメン”【Nスタ解説】
人件費や原材料費が高騰していますが、ラーメン業界でなかなか破れないのが一杯“1000円の壁”です。値段をおさえるため、“具なしラーメン”を提供するお店も登場しています。
【写真を見る】原材料費高騰でも値上げしない!ラーメン(全増し)900円
ラーメン値上がりしたら「食べる頻度が減る」約7割
小林由未子キャスター:
物価高のなか、ラーメン業界が「1杯1000円の壁」で苦しんでいます。
「1000円以上のラーメンに抵抗はあるか」というアンケートがあります。
市場調査会社「アスマーク」が16歳から69歳の500人を対象に調査したところ、「高いと思う」が56%、「やや高いと思う」が37.2%だったということです。
1000円以上になると、9割以上が“高い”という抵抗感を抱いているようです。
また、ラーメンが値上がりしたら、約7割が「食べる頻度が減る」と回答しています。ラーメンのイメージもあってか、値を上げるのは抵抗があるようです。
ラーメン評論家 山路力也さん
「現代のラーメンは昔と違って、原価や人件費(手間暇)もかかっている。安いというイメージに、お客さん、ラーメン店ともに引きずられ、値上げに踏み切れないのでは」
日比麻音子キャスター:
1杯にかける時間、労力、研究など、手間暇がありますよね。ただ、イメージもあるので難しいと思います。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
ドイツから一時帰国しているのですが、ドイツでは1杯4500円のものもあります。
日本に帰ってきたので、ラーメン店で(トッピング)全部のせをして、1000円や1400円だったとしても、(ドイツと比べると)「安いな」みたいに感じ、富豪のように注文しています。
南波雅俊キャスター:
原価が上がってきていて、ラーメン店の倒産も多いじゃないですか。そう考えると、払う側も、高く感じつつも「1200円くらいしても当たり前だよな」という感覚にも変わってきたと感じます。
日比キャスター:
トッピングをすると、1000円どころか2000円ということもあるじゃないですか。それは驚きますね。
「注文されるとヒヤヒヤ」“野菜マシマシ”が特徴のラーメン “ある工夫”で値上げせずに
小林キャスター:
ラーメン店も工夫をしています。
鳥取・米子市の「笑福」米子陰田店では、ラーメン(全増し)900円です。
二郎系ラーメンということで、野菜マシマシが特徴です。
1日1ケース(8玉)使うそうで、約1000円から1200円だったものが、昨今のキャベツ高騰で4800円に値上がりをしているといいます。
ただ、キャベツが高騰しても、ラーメンの値上げせず、もやしとキャベツの割合を変え、もやし対キャベツの割合を、7対3→8対2に変更しているということです。
笑福 遠藤和明 店長
「他のラーメン店も苦しんでいると思う。“野菜マシマシ”は無料なので、注文されるとヒヤヒヤします…」
野菜の割合が変わると味の変化は、どうなんでしょうか。
南波キャスター:
若干キャベツの甘みが強い二郎系のお店と、もやしが強いお店はありますが、二郎系の醤油にもやしは意外と合うので、もやしが多いのは好きです。
学生のころはマシマシどころか、チョモランマと言って注文していたので、ご迷惑おかけするなと思いました。
「スープや麺本来の味を」“具なしラーメン”で400円
小林キャスター:
メニューの一部を変更して提供しているところもあるようです。
福島県福島市の「RAMEN NOODLES #フユツキユキト」では、カマタマが700円と、汁なし“釜玉スタイル”で提供しているラーメンがあります。
スープを作らないので、水道代やガス代が大幅に減らせるということです。
また、“具なしラーメン”を提供しているお店もあります。
埼玉県を中心に104店舗を展開する「ぎょうさの満州」では、「素ラーメン(しょうゆ)」を400円で提供しています。
2023年から販売していて、「スープや麺本来の味を知ってほしい」ということです。
他のメニューと一緒に注文する人も多く、ラーメン(400円)と餃子(330円)と豆乳杏仁プリン(140円)を注文しても、合計870円になります。
“具なしラーメン”のSNSの反応
「シンプルだが逆にその方が濃厚なスープの味がしっかりと味わえていい」
「麺とスープ、すすりたいだけだから、具なしラーメン最高」
「具なしでスープの味を堪能するのが至高やねん」
日比キャスター:
スープだけ、麺だけなど、それだけでもかなりこだわりがあります。むしろ、味はチャンスにもなるのかなと思います。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
やはりチャーシューや煮卵にもラーメン店ではこだわっているし、それを含めて味わいたいですよね。
南波キャスター:
スープと麺だけで味わいたいという人もいるんですよね。
“スープが重要視” コンビニでも具なしラーメン
小林キャスター:
コンビニでも具なしラーメンを販売しています。
ローソンでは、スープ激うま!シリーズをやっていて、「京都背脂醬油ラーメン」(238円)と「札幌味噌ラーメン」(238円)の2種類を販売しています。
ラーメンに求めるものを調査したところ、「麺」、「具材」、「スープ」のうち、具材の優先順位が低く、スープが最も重要視されていたそうで、“具なし”でスープの品質を高めたということです。
また、野菜を炒めたような風味をスープに溶け込ませる工夫もしているといいます。
ローソン商品本部カップ麺担当 妹尾翔さん
「お手頃な価格で高品質な商品を食べたいというニーズが増え、具材を入れず、スープに特化しました」
想定の2倍を超える販売数ということで、第3弾も発売も予定しているそうです。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
物は言いようで、エンゲル係数の指数がすごく高くなって、42年ぶりの水準などになっていますが、おにぎりは200円を超えてきています。
払えない人たちがこういうものを買わざるを得なくなっていると考えると、複雑な気持ちになります。
日比キャスター:
安さに飛びついてしまいますが、それを提供しないといけないような事例もあると思いますが、日本全体の意識の変革を求められるのかなとも感じます。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
しっかり対価を払っていくことをやらないと、将来的には安い日本が外国に買われたり、消費されたりして終わることにもなりかねません。これをきっかけに、考え直すこともやらなければいけないですね。
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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済思想 社会思想
著書『人新世の「資本論」』が50万部突破