令和の再建が進む首里城 「琉球本来の赤色」を復活させる新たな試みが…成功のカギは意外なところに【news23】
6年前、火災で焼失した首里城。現在進んでいる「令和の再建」では、これまでにない新たな試みが行われています。琉球の時代に使われていた「幻の赤色」を復活させようというもの。成功のカギとなったのは、ある意外な発見でした。
「絶対に直してやろうって」 焼失後、地元・沖縄で漆芸職人に
一筆一筆、塗り入れられる艶やかな赤。
琉球漆芸職人
「全部塗って完成形を見るのが楽しみ」
「きれいな首里城をお客さんに見せたいなと思います」
6年越しに、鮮やかな色が返ってきた沖縄の象徴・首里城です。
2019年10月、沖縄は大きなシンボルをなくしました。
地元住民(当時)
「悲しいですね。本当に沖縄の文化遺産でしょう」
11時間も燃え続け、正殿を含む7棟が一晩にして焼失。
琉球漆芸職人 宮城杉乃さん
「また焼けちゃうんだ、みたいな、自分たちがシンボルみたいに思っていたものって、結構、簡単になくなってしまうんだという喪失感」
そう語るのは琉球漆芸の職人・宮城杉乃さん(30)です。
「漆芸」とは、色のついた漆で、ものを装飾する伝統工芸です。
宮城さんは、大学で漆芸を専攻した後、県外で働いていました。しかし、地元・沖縄の首里城が焼失し、沖縄に帰ることを決めました。
琉球漆芸職人 宮城杉乃さん
「首里城が焼けた時点で『絶対に直してやろう』って、こういう時に力になれるために(漆を)やっていたのかなって。『やってやろう』という感じがあります。楽しみにしていてください」
職人の熱い思い。令和の復元では、その技を存分に発揮する新たなチャレンジがあります。
赤い水が流れる川を発見 「琉球本来の赤」復活へ
清水建設 川上広行 所長
「『久志間切弁柄』という顔料を使って最後の塗装。我々も未経験の顔料ですから」
久志間切弁柄とは、琉球時代の首里城で使われた茶色がかった赤色の顔料です。
首里城は14世紀なかばに建てられましたが、これまで戦争などで5度にわたって焼失しました。
そのたびに色が塗られましたが、原料は不明。平成の復元では市販のものが使われていました。
より濃い色合いが特徴の「久志間切弁柄」を再現し、令和の時代に琉球本来の赤色を復活させようというのです。
「当時の赤色を復元させたい」、沖縄県北部でのある発見がその思いを後押ししました。
沖縄の風習などの文化を研究している幸喜淳さんは、首里城本来の色を取り戻そうと研究を進めてきました。
見せてくれたのは、流れ出る赤い水です。
美ら島財団 幸喜淳さん
「首里城の大規模改修をすると。古文書が一式残っている。その中に『久志間切で弁柄を33斤収めなさいよ』と」
「久志間切」と呼ばれたエリアで、弁柄を作っていたことがわかったのです。
Q.赤いものがいっぱい浮いていますね
美ら島財団 幸喜淳さん
「小さなこういう小川だったりとか、水たまりみたいなものが赤くなる」
幸喜さんは調査で、赤い水が流れる川を発見。泥を乾かして焼いてみたところ、きれいな弁柄になりました。
琉球王国の首里城を彩ったのは、小さな赤い川に浮く泥だったのです。
美ら島財団 幸喜淳さん
「昔の姿がもう一回よみがえるという風になるのかなと」
漆芸職人とも協力し、幻の赤「久志間切弁柄」が完成しました。
「100年、200年残るかもしれない」 首里城正殿に塗り入れる日を迎える
首里城正殿に塗り入れる日がやってきました。
「首里城を直したい」と熱望していた宮城さんの表情も真剣そのものです。そして、弁柄が正殿へと慎重に塗られていきます。
琉球漆芸職人 宮城杉乃さん
「意外と発色がよくて、この色で首里城が見られるのが楽しみ。100年、200年残るかもしれない仕事として楽しくやっています」
色を再現した立役者の幸喜さんも…
美ら島財団 幸喜淳さん
「昔の先生方も追求しきれなかったものを、こちらが引き継いでやっている。それが一つ形になった。感慨ぶかいものがあるなと思います」
令和の世によみがえった琉球の弁柄色。
この色をまとった首里城正殿は、2026年秋ごろに完成する見込みです。
上村彩子キャスター:
沖縄の人にとって、首里城は象徴的なものですよね。再建への熱い思いも感じましたし、再建や修復という意味を超えて、歴史や文化をどう表現して紡いでいくかなのかなと思いました。
喜入友浩キャスター:
この弁柄が復元のシンボルになりそうですよね。宮城さんはその赤を施すために地元に帰った。そして、幸喜さんは10年以上、色の研究を続けてきたそうです。
ちなみに、赤い川の発見のきっかけは、地元の中学生の「地元に赤い川がある」という情報提供だったみたいです。
上村キャスター:
首里城は、(2026年)秋ごろに完成を目指しているということなので、琉球時代の赤色はどんな色なのか、実際に見てみたいですね。