東京で今季一番の冷え込み 今年の冬はどうなる?北極圏の海氷が観測史上最小となり日本は“大雪”の可能性も…森田予報士解説【news23】
東京では今季一番の冷え込みとなりましたが、浅草で開催された「酉の市」では温かい“甘酒”が人気となっていました。今年の冬はどうなるのか?北極圏の海氷が観測史上最も小さくなったことがわかりました。実はこの変化が日本の冬を左右する可能性があるというのです。
甘酒が人気「寒いから温まる」関東など今季一番の冷え込みに
東京・浅草では、一年の無事を感謝する「酉の市」が開催されました。祭りに欠かせないのが、商売繁盛などを願う縁起物の熊手です。
熊手を買った人
「繁盛します!させます!頑張ります!」
師走前の風物詩ですが、肌寒くなってくる時期です。東京の午後7時の気温は11.6度で、屋台の甘酒が人気となっていました。
酉の市を訪れた人
「寒いからよ、温まるよ」
「寒いね。初めてマフラーしてきた。この冬、ことしはじめてのマフラー」
12日は関東甲信や東海などを中心に今季一番の冷え込みに。最低気温は東京都心で8.1度など、確実に冬が近づいています。
「台風26号」沖縄に接近 フィリピンでは大きな被害
一方、沖縄では台風26号の影響で11日の夜から12日の朝にかけて激しい雨となりました。久米島では1時間に47.0ミリを観測。国頭村の一部の畑では、パパイヤやさとうきびが倒れていました。
住民
「11日は夜中に懐中電灯を準備して、2~3回ぐらい外に出て川を見たり、これを繰り返していた」
台風26号は、13日沖縄地方に近づく見通しで、沖縄や奄美に断続的に雨雲がかかり続ける見込みです。
この台風26号、フィリピンで大きな被害をもたらしました。
フィリピンの地元メディアによると、少なくとも27人が死亡、100万人近くが避難する事態となっています。
「気象リスク」世界100位→34位
世界で気象災害が起きている中、気候変動対策を話し合う国連の会議「COP30」が開催されています。それにあわせドイツの研究機関「ジャーマンウォッチ」は、気象による人的被害と経済的被害に基づく「気象リスク」を分析し、ランキングを発表しました。
日本は2024年の100位から34位と大幅に上昇。その要因は、猛暑により熱中症などの人的被害が相次いだことと、2024年の梅雨前線による7月の記録的豪雨での経済的被害を8億ドルと評価したことなどを、ドイツの研究機関はあげています。
気候変動をめぐってはさらに心配なことがあります。
北極圏の海氷“観測史上最小”
WMO=世界気象機関は、2025年の北極圏の海氷面積が「観測史上最も小さくなった」と発表しました。
気象庁が公開している北極圏の海氷分布図を見ると、1979年はユーラシア大陸まで氷に覆われていましたが、2025年は海氷のエリアが激減していました。
北極の氷が減るとホッキョクグマは狩りが困難になり、生息数の減少も懸念されています。北極では毎年、北海道の面積に匹敵する海氷が失われているということです。
この北極での氷の減少。実は、日本の冬に影響を与える可能性があるといいます。どういうことなのでしょうか?
“北極の氷”が日本の冬を左右?
藤森祥平キャスター:
北極圏の海氷面積ですが、1979年にはあった部分が、2025年にはなくなっています。
気象予報士 森田正光さん:
だいたい日本列島8個分がなくなり、毎年北海道1個分の海氷が消えている状況です。今後、ますます温暖化によって海表面積が小さくなっていくと思います。
藤森キャスター:
このままどんどん進むわけですよね。海表面積が小さくなるとどうなるのでしょうか。
気象予報士 森田正光さん:
一言で言うと、極端な気象が多くなります。
そもそも氷には重要な役割があり、太陽光の約8割を反射します。ところが、氷が溶けると海は太陽光の約1〜2割程度しか反射しないので、海が温まります。そのため悪循環が始まり、氷がなくなればなくなるほど、海水温の上昇が起こります。
藤森キャスター:
海水温が上昇することで、さらに氷が溶けやすくなるわけですね。
トラウデン直美さん:
毎年減少していけば、北極の氷がなくなってしまう未来もあるのでしょうか。
気象予報士 森田正光さん:
そこまで極端なことはすぐには起こらないと思います。今は氷河がある時代なので氷河期ですが、かつて恐竜が生きていた時代は、北極や南極の氷がなかったようです。何十万年という単位で見たらあるかもしれませんが、今現在はそういうことは起こらないですね。
今年の冬は暖かい?寒い?カギは「偏西風」
小川彩佳キャスター:
北極の氷が減少している影響で、私たちに関わる部分で起こりうることはどういうことでしょうか。
気象予報士 森田正光さん:
一番重要なのが、偏西風の位置です。
偏西風は簡単に言うと、暖かい空気と冷たい空気の境目に流れています。暖かい空気が北の方に上がると偏西風も上がります。
つまり、北極圏の氷がなくなると、その分暖かい空気が北へ入りやすくなり、押し上げられた偏西風は、その分南の方に下がり、蛇行した偏西風となります。
そうすると、暖かい空気のところではものすごく気温が上がり、逆に冷たい空気が入ってくるところは、すごく寒くなります。
藤森キャスター:
通常の偏西風はまっすぐに吹いているのでしょうか。
気象予報士 森田正光さん:
イメージを大きく言うと、まっすぐと蛇行を繰り返しているのですが、その蛇行の頻度が大きくなる、あるいは蛇行する場所が変わることによって、極端な天候が現れやすいところと、現れないところが出てきます。
トラウデン直美さん:
空気がとどまることで、極端な気候が起こりやすくなるということでしょうか。
気象予報士 森田正光さん:
簡単に言うと、偏西風が早いときの方が天気は綺麗に移りますが、偏西風が蛇行すると、例えば太平洋側では低気圧が発達して、大雪が降ることがあります。
トラウデン直美さん:
一度ここまで大きく蛇行してしまうと、なかなか簡単には戻らないのでしょうか。
気象予報士 森田正光さん:
偏西風は基本的には繰り返しますが、その度合いが大きくなるということが問題です。
通常西から東に吹いている偏西風が、今年の場合、大きく蛇行するのではないかと気象庁は考えています。
偏西風が南に下がっている場所には、北からの寒気が入ってきます。ところが偏西風が北に上がってくるところでは暖気が入るので、日本列島は寒くなりますが、隣の中国はものすごく暖かくなる可能性があります。偏西風がずれると、逆に日本列島が暖かくなることもあり得ます。
今年の寒さは「平年並み」予報…でも大雪になる可能性も
トラウデン直美さん:
日本は今年かなり寒くなるのでしょうか。
気象予報士 森田正光さん:
気象庁の予報では平年並みと言われています。
しかし、平年並みの“平年”は過去30年を指します。過去30年の平均ということは、極端に言うと30年前の冬と同じということです。だから平年並みの冬ということは、とても寒い冬だと言えます。
それはなぜかというと偏西風が蛇行するからであり、偏西風はなぜ蛇行するかというと、北極圏の氷が少なくなっていることと関係があるかもしれないからです。
小川キャスター:
これだけ寒気が入ってくると、どういったことが起こりうるのでしょうか。
気象予報士 森田正光さん:
日本海側では大雪になります。特に2020年にもありましたが、ドカ雪が降ったり、日本海側でも太平洋側でも大雪になったりします。
藤森キャスター:
いわゆるこれまで見たことがないような地域でも、大雪が降る可能性があるのでしょうか。
気象予報士 森田正光さん:
ないとは言えません。ただ毎年どこかで降るので、あまり大げさに言うことはないかもしれませんが、全体的には極端な気象が現れやすくなっていると言えると思います。それで警戒が呼びかけられてるわけですよね。
小川キャスター:
夏場は線状降水帯というのが猛威を振るっていますが、冬はその雪バージョンが起こりうるということでしょうか。
気象予報士 森田正光さん:
最近は「線状降雪帯」といって、線状に雪が降るところが起きるというようなことも言われています。
異常気象は30年に1回の出来事ですが、例えば今年は3回、猛暑が続きました。30年に1回の出来事が、何回も何回も続くことを「気候変動」と言います。今、その気候変動の最初に当たっているのではないか、我々が今体験しているのではないかというのが、多くの人が考えるところです。
トラウデン直美さん:
今年は、例年雪が降る地域にも、そうではない地域にも降る可能性があるということで、交通や雪下ろしで地域の方は大変そうですか。
気象予報士 森田正光さん:
事前に気象情報をよく見てくださいと言うしかありませんが、そう思います。
小川キャスター:
こまめに確認して、心構えを変えていかなければならないということですね。
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<プロフィール>
森田正光さん
気象予報士 東京造形大学 客員教授
趣味は将棋・沖縄の島バナナの研究
トラウデン直美さん
Forbes JAPAN「世界を変える30歳未満」受賞
趣味は乗馬・園芸・旅行