犬は『赤ちゃん言葉』と『普通のトーン』どちらが好き？　その調査結果に「帰ったら使ってみよ」「自然とそうなってる」

人間は赤ちゃんや幼い子供に話しかけるとき、自然と声のトーンが上がり「赤ちゃん言葉」と呼ばれるような言葉遣いをします。犬に対しても同じように対応する人がいますが、犬にとってはこの「赤ちゃん言葉」は好ましいものなのでしょうか。

「赤ちゃん言葉」の効果

周りに小さなお子さんがいるご家庭や、あるいは街中で赤ちゃんを見かけたときなど、人間は自然と高い声や強い抑揚をつけた「赤ちゃん言葉」を使ってしまいます。実は『乳幼児の脳は言語分野が未発達なため、高い声や大きな身振り手振り・抑揚が強い言葉遣いに大きく反応する』という報告があるのです。

実際に赤ちゃん言葉で話しかけられる乳幼児と、大人に対する落ち着いたトーンで話しかけられる乳幼児では、『前者の方が強く反応する』という実験結果があるとのことです。これは赤ちゃんに対してなんとなく経験したことがある人も多いのではないでしょうか。

この反応の差については、乳児が女性の胎内にいるときから女性の声を聞いていたからだという仮説があるそうですが、まだはっきりしたことは分かっていません。

犬は「赤ちゃん言葉」と「普通のトーン」のどちらが好き？

人間の赤ちゃんと同様、犬や動物たちも言語的な分野の脳の働きが未発達です。

そこで『犬は、赤ちゃん言葉で話しかけられた時にどのような反応をするのか』という件について検証した研究チームがありました。ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学研究チームは、MRIを使って犬の脳の反応を調べたそうです。

犬に知らない人の音声を聞かせ、脳の活動状況を確認すると、驚くべき結果が出ました。実験の内容は次の通りです。

人間との交流経験があり、あらかじめMRI装置の中でじっと伏せていられるトレーニングを受けた19頭の犬に、知らない男女の音声サンプルを聞かせ脳の活動状態をチェックします。

音声サンプルは男女12名ずつから採取し、自分の乳児に話しかける声、自分の犬に向かって話しかける声、大人に向かって話しかける声の3種が用意されたそうです。

犬がサンプルの音声を聞いた時の脳の活動状況を観察すると、大人に向かって話しかける声より、乳児や犬に向けられた声のサンプルを聞いた時に強い反応が見られたとのことです。

特に男性の声より女性の声のサンプルで強い反応が見られたことから、犬は女性の高い声で話しかけられたときに最も脳が活発になるという結果が得られました。つまり、犬は高い声・女性の声・赤ちゃん言葉などを聞くと興奮する、という事が分かったのです。

犬を飼育している方は、犬が子どもたちの高い声や女性の声に強く反応し、興奮が高まることを経験としてご存じの方も多いと思います。この実験結果は、期せずしてそれを科学的に裏付けたと言えるでしょう。

人間の乳幼児の場合、母親の胎内にいたときに女性の声を聞いていたから脳が女性の声を受け取りやすいのだという仮説がありました。しかし犬の場合はその仮説は当てはまりません。

犬同士の場合であっても、女性や子供ほど高い声でのコミュニケーションは行われないので、なぜ犬が高いトーンの声に反応するのかについては、更なる研究結果の報告を待つ必要があります。

まとめ

今回は、犬は「赤ちゃん言葉」と「普通のトーン」のどちらが好きか、という件についての調査結果のご紹介でした。

最終的な研究結果が現時点ではまだ出てはいませんが、『犬は人間から話しかけられるある特定の音声に対しては適応している』ということが示されたと言えます。

今後の研究で人間の話し方の音の成分がより詳しく検証されると、犬に及ぼす影響を行動や脳神経の面で詳しく調べていけるようになるのではないでしょうか。

犬や赤ちゃんに対して話しかけているときに無意識に声が高くなっていたり、赤ちゃん言葉をつかったりしていることが、実は科学的に意味があることだったとは驚きですね。

日々のしつけや、ふれあいの時間など、自分の使う声のトーンや言葉遣いなどで犬がどんな反応をするか観察するのも面白いかもしれません。