「コメ価格」来年どうなる?“業者間で様子見の状態”で再び最高値に迫る…一方「値下げ」の兆しも【Nスタ解説】
再び最高値に迫る勢いのコメ価格。高騰が続く一方で、スーパーによっては、ようやく3000円台に値下げする動きもでています。来年のコメの価格は、どうなっていくのでしょうか。
一部店舗では価格に変化も…再び最高値に迫る
山形純菜キャスター:
農林水産省が毎週発表している「コメ5kg スーパー平均販売価格」、2024年12月第2週は3485円でした。備蓄米の放出もあり一時価格は下がりましたが、再び上昇し、2025年12月第2週の価格は4331円と、最高値に再び迫る勢いとなっています。
※(株)KSP-SPが提供するPOSデータに基づき農林水産省にて作成
高値が続いている理由について、宮城大学名誉教授・農業経済学者の大泉一貫さんは、「夏の“集荷競争”で買取価格が非常に高かったため安くできず、業者間で様子見が続いている状態」としています。
ただ、一部店舗では価格に変化が出てきています。
●マルヤス下戸田店(埼玉)
秋田県産あきたこまち(新米)
12月上旬:4750円→12月23日:3994円
●スーパーイズミ業平店(東京)
千葉県産こしひかり(新米)
12月24日、25日に特売3985円
スーパーイズミ・五味衛社長によると、「卸売業者から『少しおまけします』と声がかかり特売をすることにした」ということです。
一部のスーパーでは価格が下がっているようですが、まだ平均価格には反映されていないという状況です。
東京大学 斎藤幸平 准教授:
この間までは「足りない」ということで値段が上がったと思ったら、今度は高く買いすぎてしまって余っている。しかし、価格は下げられないということですね。
そう考えると私は、一時の繋ぎとして「おこめ券」はそこまで悪くないものだと思いますが、農協の利権ではないかとも言われて、すごく批判されていますよね。農協が利権を持っているのであれば、なぜ今までコメがこんなに安かったのかと、私は少し怒っています。
農家がコメを作って暮らしができて、私達も安心して食べられるようなところに落ち着いてほしいです。そういう制度を政府が作ってほしいと思います。
新米収穫前に「売りつくし」で値下がりか
山形キャスター:
岐阜市のコメ卸売業者「ギフライス」によると、コメの在庫は約4000トンで、2024年の同じ月に比べて2~3割多い状況で、「半端なく余っている状況」だということです。
これほど余っているのは珍しいということですが、来年のコメ価格はどうなっていくのでしょうか。
「ギフライス」によると、現在5キロ4500円を超えている「銘柄米」は、年明けには4000円を切る商品も出てくるのではないかということです。
そして、節目となるのは“3月”だといいます。
3月は徐々に気温が上がるため、コメを保管するために「低温倉庫」が必要になり、今の在庫を抱えていると、さらにコストがかかる可能性があるということです。
さらに、3月は決算前ということもあり、多少の赤字覚悟でも安く卸す企業が増えるかもしれないといいます。
また、5月以降は2026年産の新米収穫前の在庫整理の時期で、“売りつくし”のため、3500円台まで値下がりの可能性もあると予想されています。
おこめ券配布で“高止まり”に影響は?
山形キャスター:
物価高対策として、政府が自治体へ活用を促している「おこめ券」。
宮城大学名誉教授・農業経済学者の大泉一貫さんは、おこめ券は“需要を支えるもの”としていて、コメの需要が増えれば、コメ価格は高止まりするのではないかということです。
そもそも、「米価を維持して農家を再生産可能なものにしたいというのが、農水省の基本的な考え方」で、「消費者のためにコメ価格を安くしようという発想は、元々農水省の運営方針にはない」としています。ただ、「自治体の動きが鈍いままなら、価格に影響ないのでは」と分析しています。
東京大学 斎藤幸平 准教授:
増産すれば(コメの価格が)安くなって農家が苦しくなる可能性もあるし、農家の人たちのために値段を高くしようと思ったら、それがコメの消費量を減らしてしまいます。
主食であるコメがなくなっていくことは、日本の食文化や伝統など、いろいろなものにも影響するので、政府にはもっと良いビジョンを出してほしいと願っています。
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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学 准教授 専門は経済思想・社会思想
著書『人新世の「資本論」』50万部突破