有罪なら懲役20年も…ロシアでスパイ容疑拘束の日本人記者 2週間ぶりの面会実現も、手札なき日本政府の苦境【Nスタ解説】
FSB=ロシア連邦保安局が今月13日に北海道新聞の記者をスパイ容疑で拘束してから2週間あまり。26日に記者との面会が実現しましたが、記者の解放にむけて今後、日本政府はどのように対応していくのでしょうか?
【写真で見る】ロシアで日本人記者拘束 「即時解放」強く訴える木原官房長官
有罪なら「懲役20年」の可能性も…日本人記者拘束から面会までの動き
高柳光希キャスター:
日本人男性記者の拘束から2週間あまりが経ち、ようやく面会がかないました。まずは今回の経緯から整理していきます。
10月13日、FSB(ロシア連邦保安局)は極東サハリンの中心都市ユジノサハリンスクで、北海道新聞の日本人男性記者がスパイ容疑で拘束されたと発表し、その後、モスクワに移送しました。
ロシアメディアによると、モスクワ裁判所は12月12日までの拘留が決定したと発表しています。もし仮にスパイ容疑で有罪になると、「懲役10年〜20年」の判決が下される可能性もあるということです。
一方で、高市総理はスパイ容疑について「日本政府がロシアでスパイ活動を行っている事実はない」と述べています。
日本人記者の解放に向けて、日本政府としても動いていくわけですが、これまでの動きをカレンダー上で整理していきます。
【面会までの動き 10月】
13日:FSBが記者拘束を発表、日本が事実確認を申し入れ
14日:木原官房長官「接触できていない」と発表
15日:ロシア側から「領事通報」が行われる
16日:在ロ日本大使館員が拘置所訪問も、領事面会はかなわず
19日:駐ロ日本大使がロシア外務省を訪問
20日:日ロの局長級会談
22日:日本側が拘置所に差し入れ
26日:在ロ日本大使館員が記者と面会
10月13日にFSBが日本人男性記者を拘束したと発表しましたが、この時点で日本は事実確認の申し入れを行っています。
その翌日の14日時点では、木原官房長官は「面会できていない」と発表しています。そして15日、ロシア側から「領事通報」が行われましたが、この「領事通報」とは何でしょうか?
TBS報道局政治部外務・防衛省キャップ 渡部将伍 記者:
「領事通報」とは、お互いの国の人間がその国で逮捕されたり拘束されたりした事実を、お互いに通告し合うものです。この通報があって初めて、相互の国が事案を正式に把握することになります。
条約期限過ぎての面会 ロシア側に罰則は?背景に「制裁への不満」も
高柳キャスター:
領事通報を経て、在ロシア日本大使館員がモスクワの拘置所を訪れました。ここで、直接面会をして健康状態や処遇の確認などを行う「領事面会」を求めましたが、この時点ではかなわなかったということです。
その後、週明けの19日に駐ロシア日本大使がロシア外務省を訪問し、20日には日本とロシアの局長級会談が行われました。この時にも領事面会を求めましたが、実現しなかったということです。
そして20日、条約規定の期間内に面会が実現しなかったことに対して、木原官房長官は「極めて遺憾」と発言しています。
「領事面会」には期間が決まっているんですか?
TBS報道局政治部外務・防衛省キャップ 渡部 記者:
「領事通報」と同じように日本とロシアの間で条約が結ばれていて、1967年発効の「日ソ領事条約」では、「逮捕されてから遅くとも4日までに行使できるもの」とされています。
しかし実際は、木原官房長官が期間を超えていると発言した20日時点では会えておらず、結果的に、拘束されてから2週間以上経った26日に面会がかないました。
「領事面会」の期間が守られなかったことに対しては、条約が適切に守られていなかったのではないかと指摘されています。
面会まで長期間…なぜ?
高柳キャスター:
26日、政府は男性記者に関して「食事も摂れていて、健康状態に問題がない」ことを確認したとしています。
井上貴博キャスター:
条約に違反しても罰則などは何もないという考え方なのでしょうか?
報道局政治部外務・防衛省キャップ 渡部 記者:
具体的には定められていません。様々な前提条件もあるので、必ずしもということではないと思いますが、違反したからといって相互に責めることはしづらい状況もあると思います。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
安倍政権の時、日本側はロシアに対して甘すぎたところがありました。それからウクライナ侵攻が発生し、日本は今、制裁を強化している段階です。
ロシアからすると日本の対応に不満があり、国と国との関係を個人の問題にすり替えて嫌がらせに入っている状況なので、かなり複雑になっていると思います。
井上貴博キャスター:
いくら不満があったとしても、こういう行動に出ていいとは全くならないですよね。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
国際法上でも根拠を示さないまま行動することは許されません。しかしロシアは、自らの国際法違反であるウクライナ侵攻に対して日本が制裁を行っていることに不満を抱き、その不満を日本へと向けています。一種のすり替えという形でやっているわけです。
高柳キャスター:
領事面会の期限が決まっている中で、ここまで面会に時間がかかったのはなぜなのでしょうか。
報道局政治部外務・防衛省キャップ 渡部 記者:
政府内でも様々な分析をしているそうですが、明確なことはまだ明らかになっていないということです。
この話をする時に例にされるのが、アメリカ人記者が同様にスパイ容疑で拘束された例です。同じようにアメリカとロシアも領事面会は4日以内と定めていますが、実際は3週間近くかかっています。
慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は、「二国間の外交交渉が身柄の交換につながる可能性があるが、今回の日本人拘束にアメリカのケースを当てはめることはできない」と話しています。
日本政府の今後の動きは?問われる日本の外交力と国際連携
高柳キャスター:
今後、政府はどのような動きをしていくのでしょうか?
TBS報道局政治部外務・防衛省キャップ 渡部 記者:
まず解放を求めるにしても、詳細な事実確認が必要になってくると思います。そのためには面会を繰り返さなければいけませんし、外交交渉を重ねていくしかないということです。
ロシア側がどのようなことを求めているのか、即時解放に向けた交渉を国として行うための材料を集めているという状況だと思います。
井上キャスター:
日本政府として切れるカードは極めて少ないんだろうなと想像します。
政府としても、発表したくても発表できないことももちろんあって、水面下ですべきこともあるんでしょうね。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
アメリカの場合、ロシア関係者を逮捕して交換するという、かなり強引なことをやるんですが、日本はそういうことはできません。
ヨーロッパも同じような問題を抱えていますので、アメリカとの協力も含め、国際世論を高めていくことや早期解放を求めるなど、各国との連携を深めていくしかないですね。
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<プロフィール>
渡部将伍
TBS報道局政治部外務・防衛省キャップ
『劇場版 ブルーインパルスの空へ』監督
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ福島県出身
政治記者歴30年