人間関係の表現として使用されるのが「天涯比隣」です。
これらは遠く離れていても近くに感じられる関係を言います。
要はそれほど親しい間柄にあることを言う表現となります。
しかし、なぜそれが「天涯比隣」と表現されるのでしょうか。
今回はそれら「天涯比隣(てんがいひりん)」について解説します。
特にここではその意味だけでなく成り立ちも説明します。
「天涯比隣」とは
まずは「天涯比隣」の意味について見ていきましょう。
「天涯比隣」の意味
「天涯比隣」とは遠く離れていてもすぐ近くにいるように親しく思われることを意味します。
これらは真逆の意味を持つ「天涯」と「比隣」という言葉を組み合わせた表現となります。
事実、空の果てほど遠くにいても隣の家のように近くいると感じられることを言う四字熟語となっているのです。
特に親友などとても親しい間柄について言う表現とされます。
実際に親しい友達は遠くにいても近くに感じられます。
そこに物理的な距離は関係ないのではないでしょうか。
そういった関係を表現したのが「天涯比隣」というわけです。
「天涯」とは
「天涯比隣」の「天涯」は非常に遠いところの例えとなります。
この言葉には空の果てという意味があるのだとか。
つまりはとても遠いということを意味する言葉です。
「比隣」とは
「天涯比隣」の「比隣」は非常に近いところの例えとなります。
この言葉には隣の家という意味が含まれているのだとか。
要はとても近いということを意味する言葉となります。
「天涯比隣」の由来
では「天涯比隣」はそもそもどこから来たのでしょうか。
ここからは「天涯比隣」の成り立ちについてもまとめます。
由来となった王勃の詩「杜少府之任蜀州」
「天涯比隣」は古代中国で活躍した王勃の詩「送杜少府之任蜀州」にちなむそうです。
この詩には「杜少府の蜀州に任ぜらるるを送る」というタイトルが付けられています。
その詩の中に「天涯若比鄰」という一節があったとされています。
これは「遠くにいても心は常に通っていて近くに住んでいるのと同じように親しく思える」という気持ちを詠ったものです。
そこから「天涯比隣」という言葉が広まったそうです。
「天涯比隣」のように深い結び付きを指す言葉
最後に「天涯比隣」のように人と人との深い結びつきについて表す言葉についても見ておきましょう。
比翼連理
「比翼連理」とは男女の情愛が深くとても仲睦まじいことの例えです。
これらは相思相愛の仲であることを言った四字熟語となります。
特に夫婦やカップルが仲良しであることの例えとして使用されることが多いです。
「比翼」とは雌雄それぞれ目と翼が1つずつで常に一緒に飛ぶ空想上の鳥のことを意味します。
「連理」とは根元が別々の2本の木で幹や枝が途中でくっついた木のことを意味します。
それほど男女の間柄が離れがたいことを表した表現となるのです。
それらの点が「天涯比隣」とも似ているかもしれません。
刎頸之交
「刎頸之交」とは深い友情で結ばれていることの例えです。
「刎頸」は首を切り落とすという意味の言葉となっています。
これは相手のためなら首を切り落とされても構わないということから来ている言葉なのだとか。
中でも古代中国の「史記-廉頗藺相如伝」にある言葉から来ているとされています。
事実、中国の戦国時代に活躍した将軍の廉頗と蘭相如が深い友情を結んだという故事にちなむそうです。
それらの点が「天涯比隣」と重なるものがあります。
水魚之交
「水魚之交」とは離れがたいほどの友情で結ばれていることの例えです。
「水魚」は水と魚のことを意味しています。
それら両者の関係を魚と水に例えた言葉です。
これは「三国志」にある「蜀志-諸葛亮伝」の話にちなみます。
中国の三国時代、蜀の劉備が仲の良かった諸葛亮を軍師に迎えたそうです。
その際、蜀を支えてきた古参の武将は不満を漏らしたとか。
しかし、その時劉備は「魚に水が必要なように私には孔明が必要だ」と言ったとされています。
それらの点が「天涯比隣」に通じるものがあります。
まとめ
「天涯比隣」は両者の関係が非常に親しいことを言います。
実際に親しい人ほど遠くにいても近くにいるように感じます。
それを表現した四字熟語、それが「天涯比隣」となるのです。
ちなみに「天涯比隣」のように人と人との繋がりについて言った四字熟語というのは他にもたくさんあります。
ぜひ、そこは併せて覚えておきましょう。