死者の日は、メキシコで特に盛大に祭りが行われるラテンアメリカの国々の祝日です。
ピクサー映画「リメンバー・ミー」が公開されたことで、日本でも存在を知る人も増えてきましたが、日本ではまだまだ知る人ぞ知る存在ですね。
ラテンアメリカのお盆ともいわれていますが、日本のお盆とは全く様子の違う「死者の日」を今回ご紹介します。
死者の日とはどんな日?
「死者の日」は毎年11月1・2日、そして地域によっては10月31日を前夜祭として最大3日間執り行われるメキシコの国中で行われる行事です。
メキシコの人々は盛大なお祭りを催すのが好きですが、「死者の日」はその中でも屈指の規模です。
死者の日はどのような行事なのか
「死者の日」は、これまで亡くなった多くの人に敬意を示すための祝日です。
陰惨なイメージを抱く「死者の日」という名称ではありますが、盛大かつ華やかに死者と語らい楽しむことで供養する行事です。
死者をむかえて弔うという点から日本のお盆に相当するといわれていますが、雰囲気は全く違いますね!
メキシコでは死は終焉としては捉えておらず、死ぬことで死の世界へ行き、今度はそちらでの人生が始まるとされています。
そのため、日本でいう地獄があるかもしれないといった悲壮感のある死生観ではありません。
遠くにある別の新しい世界と考えられているようです。
死者の世界を謳歌している先祖や友達が、年に一度帰ってくるので盛大に祝い楽しむ日なんですね!
期間中は街中に露店が立ち並び、パレードやコンサートが催されます。
また、街のいたるところに切り絵細工「パペルピカド」が飾られます。
このきれいなパペルピカドは、万国旗のように繋げられて街を美しくに着飾ります。
もちろん死者を敬い弔う日ですので、お祭りだけをしているのではなく、期間内には様々なセレモニーが執り行われます。
死者の日の特徴① ガイコツ
死者の日にとって、ガイコツは欠かせない要素です。
切り絵のパペルピカドもガイコツをデザインしたものが多く、死者の日が近づくにつれ街にはガイコツのオブジェやガイコツをデザインしたグッズが増えてきます。
メキシコではもともと祖先のガイコツを飾るという習慣がありました。
その習慣の名残からか、死者の日にはガイコツが街中で見られるようになったと考えられています。
そんなメキシコのガイコツは、決しておどろおどろしい存在ではありません。
カジュアルなデザインをされたものや、多彩な色で配色されたガイコツなど、明るい雰囲気のものが多いです。
頭蓋骨を意味する砂糖菓子「カラベラ」は名前通り頭蓋骨の形をした砂糖菓子ですが、このカラベラもいたるところで見られます。
子供にとっても、ガイコツは恐ろしいものではなく近しい存在だというのがよくわかります。
死者の日の特徴② アルタール・オフレンダ・お墓
死者の日に亡くなった人たちの魂をむかえ、お供えをする祭壇を家の中や作ります。
これは「アルタール」と呼ばれ、マリーゴールドなどの花やパン、「オフレンダ」と呼ばれる故人の好きだった食べ物や飲み物、嗜好品、そしてカラベラなどで色とりどりに飾り付けをします。
他にも十字架や遺影も設置されます。
祭壇を設置するだけでなくお墓を装飾することも重要視されています。
こちらもオフレンダや花、ロウソクなどで絢爛に飾り付けます。より目立つように派手な装いにすることが重要で、墓の周りに故人の砂絵を描いたり、地域によっては墓の飾りつけコンテストを行うそうです。
夜間のお墓を訪れるのが観光的にも注目されており、幾多の墓がロウソクで灯されて幻想的な空間を作ります。
死者の日は日ごとに迎える魂が違う
死者の日は11月1日と2日に催されますが、正確には10月31日の前夜祭の日から始まっているという説もあります。
その説では日毎に迎える魂が違うとしています。
・10月31日は「天使の日」:幼いころに亡くなった子供赤ん坊の魂が帰ってくる日。甘いお菓子などがお供えされます。
・11月1日は「諸聖人の日」:大人の魂が帰ってくる日。食べ物だけでなく酒や嗜好品といった幅広いものがお供えされます。
・11月2日は「万霊節の日」:あらゆる魂のための日。家族でお墓参りをし、墓を派手に装飾します。
11月1日2日で行う場合は、1日に子供の魂が、2日になると大人の魂が帰ってくると信じられています。
パレードなど華やかな一面もありますが、帰ってきた家族の魂と共にゆっくり過ごすためにお墓や祭壇の前で静かに過ごす人もいます。
死者の日の特徴③ マリーゴールド
「マリーゴールドの花」は死者の日で最も大切な花です。
死者を現世に導く力があると信じられているマリーゴールドは、アルタール・オフレンダといった祭壇の飾りつけに用いるのみでなく、街のいたる所で死者を迎え入れるために飾り付けられます。
そのため、街中がマリーゴールドで包まれます。
メキシコのの田舎では、死者の日に向けてマリーゴールドを大量に育てているそうです。
他にもケイトウなどの花が死者を導く花とされていますが、基本はマリーゴールドが供えられるので、街はオレンジ色に染まるようです。
死者の日の特徴④ガイコツメイク
この死者の日の期間中はパレードの中だけではなく、様々な場所で仮装をした人たちを見ることができます。
とはいえ、同じ時期のハロウィンと違い思い思い好きな装いというものではなく、ガイコツをモチーフにしたデザインとしたメイクをするのが基本です。
服装に関しては様々で伝統衣装やスーツなど自由に堪能しているようです。
ガイコツメイクは道端でも施してくれる人がいるため、観光客がその場の勢いで、というのも対応してもらえるそうです。
たとえシャツで行っていてもガイコツメイクをしてもらうだけでも気分は全然変わりそうですね!
死者の日の歴史は長い
ガイコツと共にある文化は3000年前から
メキシコでは古くから祖先の骸骨を飾る風習がありました。
これは後にヨーロッパ人が大陸進出した頃に栄えていた「アステカ文明」の時代でも続いていました。
原型は女神「ミクトランシワトル」に捧げる祭事
アステカ文明に伝わる神「ミクトランシワトル」は冥府を司る女神です。
アステカ族には「死の夫人」とも呼ばれたミクトランシワトルに捧げる祭事が「死者の日」の原型と考えられています。
結びついたキリスト教の「諸聖人の日」
アステカ族では、8月頭に行われていた行事だったと考えられています。
それが毎年11月1日にキリスト教カトリック教会で行われている、全ての聖人と殉教者を讃える「諸聖人の日」と結びついたことで現在のように11月1日・2日の開催になったとされています。
死者の日のシンボル、「死者の貴婦人」カトリーナ
現在、死者の日でそのシンボル的存在となっているのが「死者の貴婦人」ことカトリーナです。
カトリーナというのは実在の人物ではありません。
イラストレーター「ホセ・グアダルーペ・ポサダ」が描いたタイトルを「住み込み女性のガイコツ」というイラストに描かれた人物のことです。
イラストで描かれているのは『貴族の家で住み込みで働くメキシコ先住民の女性が白人のように肌を真っ白に化粧をして貴族女性用の帽子をかぶった姿』です。
自分の文化や姿を恥じて肌を真っ白に化粧をして貴族の服を身に纏うことでヨーロッパ人の振りをした、というカトリーナのその姿。
これは、本来の自分たちを捨てヨーロッパ文化の真似をする人々を風刺するとともに、先住民族を追い詰め贅沢に過ごす富裕層や貴族に対しての皮肉を描いた一枚なのだとか。
このイラストは風刺画であって死者の日のためのイラストではなかったのですが、死者の日を象徴するイラストとして浸透していき、現在も死者の日ではカトリーナの仮装した人の姿が多く見られます。
「死者の日」と「ハロウィン」は無関係
死者の日は前夜祭が10月31日から行われることや仮装することから同時期に行われる「ハロウィン」と同じもののようにされますが、この2つは全く違います。
ハロウィンは古代ヨーロッパで繁栄した「ケルト人」の風習です。
10月31日が1年の終わりであるとされ、そして秋の終わりで冬の訪れの日と考えられていました。
また、この日は死者の霊が帰ってくるとされていました。
死者の霊とともに悪い精霊や魔女も訪れると考えたケルト人は、魔除けとして仮面を被ったり魔除けの焚き火をしていたのですが、これがハロウィンのはじまりと考えられています。
死者が帰ってくるなど同様のキーワードがありますが、「死者の日」と「ハロウィン」は起源が全く異なる風習になります。
まとめ
2008年にユネスコ無形文化遺産に登録された「死者の日」。
帰ってきた先祖の霊と明るく過ごす実にラテンらしいお祭りです。
日本では仏壇やお墓を飾り立てててお盆を迎えよう!と考える人はそうそういないでしょうからさすが地球の裏側、文化が違う!!と感じる風習ですね。