”good-bye” ”God”
日本語の「さようなら」と、英語の”good-bye”。
どちらも別れの挨拶として用いられますが、その語源や意味が大きく異なります。
同じ別れの挨拶なのに、そこまで違うか!というほどです。
これが言語の面白いところかもしれません。
今回は、そんな「さようなら」と”good-bye”の違いについて解説します。
”good-bye”は祝福の言葉
”good-bye”という言葉は、別れの挨拶の中でも祝福の意味が込められた言葉となっています。
別れの挨拶なので、英語を学ぶ上で初期に覚える言葉ですが、その語源について見ていきましょう。
”good-bye”の語源
”good-bye”は、”God be with you”が原形です。
和訳すると、「あなたが神と共にあらんことを」という祝福の意味の言葉になります。
原型では、”good”ではなく”God”だったのです。
神の祝福を願っていた言葉から来たという訳です。
これが、神を意味する”God”を直接口に出すのはおこがましいという風潮も相まって、それが”good”に変化していったといわれています。
他にも英語では、挨拶に”good”が付いているものが多くあります。
”good-morning”や”good-night”などがありますよね。
これは「いい朝ですね」「いい夜を」など相手を気遣う言葉です。
これらの挨拶の言葉に引かれる形で、”God”から”good”に変化していったとも考えられています。
現代では『神のご加護』といった重い意味は薄れ、気軽に使う挨拶として浸透しています。
他言語にもある類似の別れの挨拶
スペイン語の”adios”や、フランス語の”adieu”なども、”good-bye”と同じく別れの挨拶です。
これらの言葉の後ろに友達を意味する”amigo”を付けるなど、人によって使い方は変わってきます。
”adios”や”adieu”は両方とも「神と共に」という意味が込められているので、英語と由来を同じくしているということになります。
『神の御許』を指して、生涯の別れとなる挨拶とされることもあるのだとか。
どちらも重い印象になってしまうため、近年は気軽な言い方の方が好まれているそうです。
より気軽に「またね」と伝えるために、”chao”といったフランクな挨拶が使われているみたいです。
さようならの原型は「左様ならば」
日本語の「さようなら」の語源となる言葉には、英語のように相手への神の加護を願うといった意味は含まれていません。
さようならの語源
さようならを漢字表記すると、「左様なら」となります。
原型である『左様ならば』が略されて生まれた言葉です。
この『左様ならば』は、「それでは」や「それなら」という意味の接続語です。
「左様ならば、これで・・・」のように別れの際に使われていた言葉が転じたことで別れの挨拶となりました。
「左様ならば、お元気でお過ごしください」や「出発の時間です。左様ならば、また必ずお会いしましょう」のように『左様ならば』の後には何かしらの言葉が続いていたわけですね。
「さらば」の語源も同じ
別れの挨拶のひとつである「さらば」も、接続語の『左様ならば』の略語だと考えられています。
「さようなら」が『左様ならば』の末尾の「ば」を略したのに対し、「さらば」は真ん中の「ような」を略したというわけですね。
江戸時代の別れの挨拶
江戸時代まで別れの挨拶は、「さようなら、ごきげんよう」と言っていたことが当時の本などから分かっています。
「ごきげんよう」は、もともと相手の健康状態を伺う言葉でした。
「それならば、(また会う時まで)お元気にお過ごしください」といった意味合いでしょうか。
昔の人たちは、挨拶にも相手の気遣いを入れていたんですね。
しかし、江戸時代後期頃から男性が「さようなら」を使い、女性が「ごきげんよう」を使い分ける習慣が広まりました。
これによって、男女での挨拶に違いが生まれたともいえます。
そこから昭和に入ると、女性の間でも「ごきげんよう」はほとんど使われなくなり、別れ際には「さようなら」だけが使われるようになりました。
まとめ
別れの挨拶である「さようなら」と”good-bye”。
その裏に込められた意味は、接続語が元となった「さようなら」と、神のご加護を願う”good-bye”で、大きく違いがあります。
ところがまったく意味合いが異なるのかといえばそうとも言えないようです。
現在は使われなくなった「さようなら、ごきげんよう」という言い回しは、「さようなら」が台頭する以前の別れの挨拶で、相手の体調を窺い健やかに過ごして欲しいという気遣いの意味が含まれていました。
そういった意味では「さようなら」も「good-bye」同様、相手を思う優しい言葉といえるのではないでしょうか。