石破氏のジレンマ…原因は正論? “次期総理の期待トップ”でも党内支持が広がらない理由【「ポスト岸田」候補の素顔】

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2024-02-18 07:03
石破氏のジレンマ…原因は正論? “次期総理の期待トップ”でも党内支持が広がらない理由【「ポスト岸田」候補の素顔】

JNNが2月におこなった世論調査で、次の総理にふさわしい人のトップに立った自民党の石破茂元幹事長。石破氏はこの結果について「知名度が高いことと、内閣の外にいるので自由な発言が出来るからだ」と浮かれる様子は見せないが、総理の座を意識していないことはない。

【画像を見る】石破氏をめぐる三つの環境の変化 総裁選5度目の挑戦はあるか?

だが、国民からの人気とは裏腹に、自民党内の支持に広がりは見えない。
石破氏は今、「正論」を言うほど党内の支持を失うジレンマに直面している。

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岸田内閣退陣を“提案”?

2023年12月、自民党の派閥の政治資金パーティーの問題が国会でも取り上げられる中、次のような見出しのニュースが自民党で物議を醸した。

「自民・石破氏 来年度予算成立後の岸田内閣退陣を“提案”」

これは、石破氏が民放のテレビ番組に出演した際、安倍派の裏金疑惑について、党総裁である岸田総理の責任の取り方について「来年度予算案が成立したら辞めるというのはありだ。国民に判断してもらおうと衆議院を解散するのも責任の取り方かもしれない」と話したものだ。これには自民党内から、政府・自民党が必死に野党の追及に耐える中、「後ろから鉄砲を撃つのか」と石破氏を批判する声が噴出した。

石破氏としては、岸田総理の責任を追及するとの思いはなく、一般論として発言したつもりだったようだが、党内のひんしゅくを買うこととなった。

不用意な発言をし自身の思いとは異なる受け取られ方をして党内の批判を浴びるのは、石破氏の特徴とも言える。

総裁選に意欲にじませる?

2024年2月10日、石破氏の姿は地元鳥取にあった。国政報告会を開いた石破氏は、9月の自民党総裁選に向けた準備について記者団に問われると次のように答えた。

「いつ、何があってもいいようにしておかなければいかん。総理総裁になって欲しい人リストに上がっている人は、みんなそうなんじゃないの」

総裁選をめぐるこうした発言は、今に始まったことではなく、常日頃からインタビューの度に発しているが、裏金事件などで岸田内閣の支持率が低下し「ポスト岸田」に注目が集まる中、“石破氏が総裁選への出馬に意欲を示した”と各メディアは報じた。

これに対し石破氏は周囲に「これまでの発言と何も変わりは無い」と話すなど、ここでも真意とは違う受け取られ方をしていると困惑の表情を見せている。

では、石破氏に総裁選への意欲がないのかというと、そういうことはないだろう。
2020年の総裁選で敗れた後、”石破は終わった”とも言われてきたが、石破氏の周辺では総裁選出馬の可否を大きく左右する3つの大きな変化が起きている。

石破氏をめぐる環境の変化(1)~いわゆる派閥の解消~

これまで4度総裁選に挑戦してきた石破氏だが、当選を阻んだものの一つが「自民党の派閥政治」だった。

自民党の総裁選は「国会議員票」と「党員らの地方票」で争われ、総裁選ごとにこの比重は変わってきたが「国会議員票」を多く取った候補が総理の座を射止める結果が続いている。

つまり、より多くの派閥の支持を得ることで国会議員票を固められるかが総裁選の勝利のカギを握ってきた。

だが、石破氏は出馬した総裁選で、党員票では勝利ないし善戦をしてきたものの、ことごとく国会議員票で大差をつけられ敗北してきた。

しかし、今年に入り、派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件を受け、安倍派・岸田派・二階派・森山派が解散を決定し、次の総裁選は派閥の影響力が薄れた戦いとなることになる。これが石破氏が総裁選に挑戦する上では追い風が吹く結果となっている。

石破氏をめぐる環境の変化(2)~安倍元総理の死去~

総理を目指す石破氏にとって大きな壁となり立ちはだかってきたのが安倍元総理の存在だ。

過去4度挑戦した総裁選では2度安倍氏に敗れた石破氏は、森友学園問題などをめぐり時の総理大臣である安倍元総理に苦言を呈し続けてきた。正論ではあるのだが、こうした石破氏の言動を快く思わない安倍氏は石破氏に否定的な姿勢を見せ続け、絶大な影響力を持つ安倍氏に配慮するかのように、議員達にとって石破氏に接近すること自体がはばかられる状況が続いてきた。

その安倍氏が2022年7月、凶弾に倒れた。安倍氏が亡くなった後も党内ではアベノミクスの継承など、安倍政治を引き継ぐ動きが続いてきたが、「旧統一教会問題」や「安倍派の裏金事件」を受け、最大派閥・安倍派の影響力は著しく低下している。石破氏にとってはこれもまた総裁選に出馬する環境へと繋がっている。

石破氏をめぐる環境の変化(3)~石破派の解散~

石破氏は2015年に石破派を旗揚げし、その後2度総裁選に臨んだがいずれも敗れ、2021年に石破派を解消した。その後、グループとして活動を続けるものの退会者が相次ぎ、活動は縮小を続けている。

総裁選への出馬には20人の推薦人が必要で、派閥を解消した石破氏にとっては、この推薦人確保が大きなハードルとなっている。

総裁選、5度目の挑戦はあるか

2月5日、石破氏の姿は都内の日本料理店にあった。食事を共にしたのは河野太郎デジタル大臣だった。関係者によると、この会食は河野氏の呼びかけで行われたという。

石破氏と河野氏と言えば、2021年の総裁選に河野氏が立候補した際、小泉進次郎元環境大臣とともに「小石河連合」を結成し、河野氏の当選を目指し共に戦った間柄だ。

総裁選は岸田総理に敗れたものの、第一回投票、決選投票共に地方票では岸田総理を圧倒した。

国民からの支持が高い2人だが、党内基盤が盤石とは言えない。同時に総裁選に出馬すると地方票を分け合うことになり、他の候補を利することになることから、会合では総裁選への出馬について互いの腹を探りあったものとみられる。

総裁選への出馬に期待の声も上がる石破氏だが、石破氏は「私は政局を仕掛けることはしない」と話す。
事実、石破氏が総裁選に向けた仲間集めをするといった動きは見られない。つまり「待ち」の姿勢なのだ。

派閥の裏金事件で自民党が揺れる中、世論調査では自民党支持層でも”次期総理の人気トップ”に浮上した石破氏。
今のところ党内では「石破総理待望論」に盛り上がりは見えないが、石破氏はその時を待ち続けている。

TBSテレビ政治部 中島哲平

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