小林製薬“紅麹サプリ”摂取で2度入院の人も… 健康被害公表まで2か月以上に疑問の声【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-03-28 11:47

小林製薬の「紅麹」成分が入ったサプリメントをめぐっては、2人の死亡が確認され、相談の数は3000件に上る事態となっています。問題のサプリを摂取して2度入院した人も…。会社側は最初の被害申告から公表まで2か月以上を要していて、消費者や医療機関から疑問の声が上がっています。

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紅麹サプリ摂取した人「許せない」

紅麹成分が入ったサプリメントを摂取していたという女性。3か月間、毎日飲んでいたというサプリ。いまのところ体調に問題はないといいますが…

紅麹サプリを摂取していた女性
「健康になりたいなと思って飲んだサプリで、身体に逆に害をなすっていうのがびっくりして。亡くなった方もいらっしゃるということで、ただただ不安というか…」

小林製薬の「紅麹」成分が入ったサプリメント。腎疾患など健康被害がでています。死亡した人は新たに1人確認され、あわせて2人となりました。入院者数も106人に膨らんでいます。

大阪市は27日、小林製薬に対し「紅麹コレステヘルプ」など、3商品あわせて約100万個に回収命令を出しました。また厚労省は、小林製薬からの報告で入院した患者が主に2023年9月以降に製造された「紅麹コレステヘルプ」を飲んだ人に偏っていることなどを明らかにしました。

2023年10月から3月22日までサプリを摂取していたという40代の女性が飲んでいたサプリは、入院症例が確認されたものと同じ製造番号。2023年12月ごろからトイレの回数が増え、倦怠感が続いているといいます。

27日に病院で血液検査の結果が判明。腎臓に異常はなかった、といいますが…

紅麹サプリを摂取していた40代女性
許せないですよね。後々20年後を考えるとなると、不安が一生ついてまわるというか、腎臓という命に関わる疾患にも関わらず、自分も含めてどれだけ被害が広がったのかという悔しさでいっぱいですね」

医療機関をたずねると…

芝浦スリーワンクリニック 望月吉彦 院長
『どういう障害がでるかわからないからどうしたらいいですか』という相談だった。この(紅麹コレステヘルプの)袋を持ってきて。持って帰りましたけど、まさしくこのお薬を飲んでたとおっしゃっていました」

おととい相談に来たのは60代の女性。ことし1月から問題のサプリを摂取していたといいます。血液検査を行ったところ、腎臓の働きを示す「クレアチニン」の数値は正常でした。

芝浦スリーワンクリニック 望月吉彦 院長
「胸をなでおろしていました。『いやあ、よかったです』、『もう二度と飲まないです』と」

紅麹サプリ摂取で2度入院「腎臓がかなり悪く…」

一方、静岡県の病院では問題発覚前に、40代と50代の2人が入院していました。

富士市立中央病院 腎臓内科 高橋康人 部長 
健常の方が腎臓がかなり悪くなってるということで、何が原因なのかっていうことで、実はこの報道が出る前にすごく悩んでいた、というのが実情です」

問題のサプリを3か月以上摂取していた40代の患者は、2023年11月に入院。1か月ほどで退院しましたが、サプリの摂取を再開すると、飲み始めて1か月で、再び入院となりました。

富士市立中央病院 腎臓内科 高橋康人 部長
飲んで1か月してまた悪くなってまた入院して。なので本人も報道を見た瞬間、『これだ』と多分思ったと思います」

40代の患者はいまも入院中で、50代の患者はすでに退院したそうです。

小林製薬が生産している紅麹は、食品メーカーなど170社以上に供給されていて、自主回収の動きに困惑する企業が相次いでいます。

大手スーパー・イオンではプライベートブランド「トップバリュ」の7品目を自主回収すると発表。自主回収を始めた愛知・小牧市の製薬会社では、紅麹をつかっていない自社の看板商品「青汁」に、思わぬ余波が…

山本漢方製薬 吉田正敏 顧問
「青汁飲んでいるんですけど大丈夫なの?という内容で(電話が)かかってきましたので」

消費者からの問い合わせは100件以上にのぼり、対応に追われているといいます。岡山県の味噌メーカーも11商品を自主回収損失は1000万円以上になるといいます。

――お店としては大打撃?
馬場商店・馬場敏彰 社長

大打撃ですよ。もっと早い対応をすべきだったと思うし、正直に(情報を)出してほしい

実は、小林製薬が自主回収を発表したのは、最初の被害申告から2か月以上経ってからでした。クリニックの院長は、対応を疑問視しています。

芝浦スリーワンクリニック 望月吉彦 院長
薬の副作用で重いものが出た時はすぐ調べる、かなり詳しく調べる、というのが普通の方法なので、それをなぜしてなかったのかなというのが非常に疑問に思います。かなり鈍感だなと思いました、言葉は悪いけれど」

被害相談約3000件 公表に2か月超

喜入友浩キャスター:
まだ原因がわかっていない、という事ですが、今わかっていることを整理します。27日に大阪市が回収を命じたのは、「紅麹コレステヘルプ」、「ナイシヘルプ+コレステロール」、「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」の三つの商品です。

そして、厚生労働省によりますと、入院した患者は主に2023年9月以降に製造された「紅麹コレステヘルプ」を飲んだ人に偏っているということです。

ただ、小林製薬はこの紅麹原料を、商社や食品メーカーなど170社以上に供給しています。原料というのは二つあり、▼サプリメントなどで使用するもの▼着色や風味づけなどで使用するものに分かれます。

今回問題になっているのは、「サプリメントなどに使うもの」です。「サプリメントなどに使うもの」の原料に“想定していない成分”が含まれていた、ということです。

そして、「着色や風味づけなどで使用するもの」に関して、過去1年分について“想定していない成分”は含まれていませんでした。ただ、原因が特定できていないため、大事を取りどちらも回収自粛を呼びかけているといいます。

小川彩佳キャスター:
今問題になっているのは「小林製薬の」紅麹成分ですが、「他の製品は大丈夫なのか」と、結構不安に覚える方も多くいるでしょうし、風評被害も広がっているようですね。

東京大学 斎藤幸平 准教授:
やはり、食べ物は毎日摂取するものですし、発表が遅れたということもあり不安は募りますよね。

喜入キャスター:
現状(3月27日時点)で2人が死亡、106人が入院しています。相談件数は約3000件という状況です。3月22日に小林製薬の記者会見がありました。しかし、最初に健康被害を把握したのは2024年1月15日でした。健康被害の把握から記者会見まで約2か月かかりました。

健康被害の把握から記者会見までの間にもいろいろありました。

▼2月1日:医師から3人の症例の報告
▼2月7日:紅麹の原料分析を開始
▼2月16日:分析結果がでるも、結果として原因がわからず

こうしたことがあり、3月22日に記者会見という流れになっています。

食品問題に詳しい消費者問題研究所の垣田達哉代表によると「食品で医師から連絡が入るのはレアケース。専門的に見て、それなりの証拠を持って報告している。複数の症例報告が入った時点で公表すべき事案

2月1日の時点で、医師から3人の症例が報告されており、小林製薬の小林社長も判断の遅れを認めています。

小川キャスター:
サプリメントだと、毎日飲み続けたりするものなので、公表が1か月遅れるとその1か月間ずっと飲み続けている人もいますよね。自主回収などを行っていますけれども公表した後のケアも十分なのかどうか。

斎藤幸平さん:
そういうのが余計、「紅麹全般が駄目なんじゃないか」とか、あるいは風評被害などにも繋がっていってしまうし、なんなら「塩麹も駄目」のようになってしまったら余計よくないので、やはり、きちんと原因解明を早くまずはしてほしいですよね。

「機能性表示食品」と「トクホ」の違いは?

喜入キャスター:
様々な理由でこの商品を手にした人がいると思います。パッケージを見てみると「紅麹コレステヘルプ」というのは、「機能性表示食品」と表記してあります。「悪玉コレステロールを下げる」と書いてあります。

この「機能性表示食品」とは何なのか。「トクホ」ではありません。

▼トクホ:国が効果や安全性を審査
▼機能性表示食品:食品の安全性・機能性の根拠などを消費者庁に届け出て、事業者の責任で表示ができる

小川キャスター:
この「機能性表示食品」というのは“国の審査は必要ない”ということで、国が直接審査をしているわけではない、と。そこの違いというのをご存知でしたか。

トラウデン直美さん:
一消費者として見ていると「トクホ」と「機能性表示食品」があるのはわかっていますが、どういう基準で分けられている、というのは気にすることもないですし、ほとんど知らなかったので、「トクホ」とまでは言わなくても、「機能性表示食品」だとしても一定のチェックというのは必要なのかな、と感じましたし、消費者側も「どういう違いがあるのか」ということを、これを機にしっかりしておく、というのも大事だなと思いました。

斎藤幸平さん:
これは実は、アベノミクスのときにできたわりと新しい分類なんですよね。経済成長のための“第三の矢”として規制緩和が行われ、「トクホ」と違い、企業が簡易審査をやり、一応「効果がある」とうたえば自分で表示できる、ということなんですね。
「トクホ」とは違うので、逆に広告も打ちやすいという中で、ある種、人々が持ってる健康への不安や、痩せたいな、という思いを煽り、たくさん人々に買わせていく、というような“健康ビジネス”に容易になってしまいかねないものなんです。
実際、事後チェックがどれぐらいできていたか、というと十分ではなかった、ということで最終的にはこういう形で健康被害に繋がってしまったわけですから、この制度自体が本当の意味で消費者のために実際にはなってないんじゃないか。場合によってはモラルなき企業の短期的な利益を上げるためだけの道具になり、人々がその犠牲になってしまうような状況というのは、この制度のあり方を含め、私達はもう1回議論しないといけないと思います。

小川キャスター:
今回の小林製薬の「紅麹」について原因はまだ不明ですし、何が起きてるか、というのがこの「機能性表示食品」であることによって引き起こされた問題というのは、現段階では全く言えないわけですが、これをきっかけに制度のあり方について考えていく必要というのはあるかもしれないですね。

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