2日に突然、辞職すると表明した静岡県の川勝平太知事。3日にも1時間ほど会見をしました。「職業差別」ともとれる発言については撤回しませんでした。
静岡の川勝知事、会見で辞職表明の理由語る 発言の撤回はなし 「職業差別」とリニア問題【Nスタ解説】
「職業差別」発言を謝罪するも撤回はせず…リニア問題への影響は?
小笠原亘キャスター:
まず、川勝知事の経歴です。早稲田大学を卒業したのちに大学院に進んで、経済学研究科修士課程を修了し、イギリスのオックスフォード大学で博士号を取得。知事になる前は、早稲田大学の政治経済学部の教授などを歴任していました。
60歳のとき、2009年7月に静岡県知事に立候補し、初当選。現在4期目で、まだ任期は2025年の7月まで残っています。そんななか、記者を前にした2024年4月2日の囲み取材で、職を辞するという発言がありました。
辞職のきっかけとなったのは1日、県の新人職員への訓示のなかで…
「県庁というのは別の言葉で言うとシンクタンク(政府研究機関)です。毎日毎日野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちですから、それを磨く必要があります」
こういった発言をし、批判が殺到しました。
それを受けて2日、この発言について知事は、記者たちの前で「職業差別は皆無です。何か問題発言があったかのごとき状況になって本当に驚いています」と、改めて「これは職業差別ではない」というふうに言ったわけです。「もしこれで不愉快な思いをした方には謝りたい」ということも言っていました。
さらに「一部そこのとこだけ(発言を)取れば、おっしゃるような職業差別に落とし込むことができる発言だったのかもしれない」と、「報道の切り取り方に問題があるのではないか」という趣旨の発言もしています。
そんななかで3日、辞職の会見が行われたわけですけれども、知事は「農業・酪農・生産業、これは最も大事にしてきた産業で、そういう方たちの心を傷つけたとすれば誠に申し訳なく、心からお詫びをいたします。申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉を述べましたが、結局、発言の撤回はありませんでした。
記者たちから辞職の理由を聞かれて、「不十分な言葉で人の心を傷つけたというのも一つ理由なんだけれども、一番大きな理由としては、『リニア問題』が一区切りついた」という話をしています。
これはどういうことかというと、3月29日、JR東海がリニア中央新幹線の2027年の開業を断念する方針を発表しました。これで知事のなかでは一区切りで、任期を残して辞職ということになるんです。
「知事は激励のために他のものをおとしめている」
ホラン千秋キャスター:
知事としてはさまざまな言い分があるようですが、今回の件、そして辞職までの流れについて、萩谷さんどうでしょう。
萩谷麻衣子 弁護士:
この件で、「不十分な言葉で人の心を傷つけた」と言っていたようですけれども、「不十分な」というのは誤解を与えるような…。
ですから、自分の言葉は決してそういう文脈で言ったことではないけれども、そう捉えられないような言葉を使ってしまったと知事は言っているのであって、本当の意味で「これが差別発言で申し訳ない」と認識したうえで謝罪したのではないということが、この言葉からもよくわかると思います。
また、「私も傷ついた」と最後に言っていましたよね。この方の過去の言葉をみると、目の前の人を激励しようという意図はわかるんです。
ただ、その激励のために、他の比較するものをおとしめて、持ち上げようとする。そのこと自体が差別だということに気づいていないのだということが、よくわかると思います。
井上貴博キャスター:
あとは、選挙も圧勝してきましたが、多選の弊害も少しあるのかな、というのは一般論で感じました。緊張感がなくなってしまうというか。
いずれにしても、これでリニア問題が大きなターニングポイントに来た。静岡の利益ではなくて、国の利益、世界の利益でどう考えるのか。
もちろん水資源や環境問題は大変重要ですので、静岡の皆さんもそこは関心がありますが、後任がどうなるかですね。
萩谷麻衣子 弁護士:
後任の知事の方の考え方でリニア問題が進むのか、あるいは停滞するのかというところに影響が来ると思いますが、川勝知事はリニアの件について反対の風呂敷を広げすぎて、振り上げた拳を下ろせなくなっているところだったのかな、というのは感じます。