ふるさと納税・初の1兆円突破も…“ポイント付与禁止”の波紋 専門家「どう考えても愚策」【Bizスクエア】

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2024-08-21 06:00
ふるさと納税・初の1兆円突破も…“ポイント付与禁止”の波紋 専門家「どう考えても愚策」【Bizスクエア】

2023年度のふるさと納税の寄付総額が初めて1兆円の大台を突破した。返礼品が充実し、利用者が増える一方で、自治体間の格差拡大など課題が浮き彫りになっている。

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「ふるさと納税」初の1兆円突破 7年連続関東地方でトップの町

ふるさと納税が始まった2008年度は81億円だったが、確定申告の必要がないワンストップ制度が導入された2015年度からは大きく増加。開始から16年目となる2023年度は1兆1175億円と初めて1兆円を突破した。

7年連続、関東地方でトップの寄付額を集めるのが茨城県境町。人口約2万4000人の町だが、2023年度のふるさと納税の寄付額は全国でも11位となる99億3800万円。町では、ふるさと納税の寄付金を運行事業費の一部に活用した「自動運転バス」が走っている。4月に境町に移住してきた人は「移住者支援の住宅に申し込んで抽選で当たったので(引っ越してきた)いやもう(子育ての)環境は最高」。境町出身者も「いろいろ子育ての支援も多くてそれで戻ってきた。茨城県は全国で見ると(魅力度ランキングが)下の方だけどこうして境町が盛り上がってくれてうれしく思う」という。

返礼品で人気を集めているのが、茨城県が生産量1位を誇る干し芋や、常陸牛などだが、新たな名物として力を入れているのが、ウナギ。国の補助金を活用して、8月8日には返礼品と同じウナギを味わえる施設がオープンした。現在、返礼品のウナギは宮崎県産を境町で加工して提供しているが、ウナギの研究開発拠点を開設し、ゆくゆくは稚魚の養殖から一貫して町内で行うことを目指している。

「ふるさと納税」初の1兆円突破 「旅先納税」や「被災地支援」も

地域性豊かな返礼品だけではなく、現在導入する自治体が増えているのが、「旅先納税」。
7月から旅先納税を始めた岩手県花巻市。スマートフォンを使って、専用ページからふるさと納税を行うと、寄付額の30%分の花巻市内の飲食店や温泉施設などで使える電子商品券をその場で返礼品として受け取れる。花巻市の上田東一市長は「この『ふるさと納税』を利用しながら、花巻の観光を楽しんでもらいたい」と語る。

そしてふるさと納税は被災地支援という形でも広がっている。2024年の元日に発生した能登半島地震で大きな被害が出た石川県珠洲市の寄付額は、2023年度の10倍以上となる11億円に上り、輪島市でも5倍に増え、21億円に。一方、様々な課題も浮き彫りになっている。

「ふるさと納税」 110億円税収減の自治体も

世田谷区 ふるさと納税対策担当課 斉藤洋子課長:
(税収の)流出額は見過ごせない額。

ふるさと納税を利用すると、利用者が居住する自治体に納める住民税が減る仕組みになっている。東京都世田谷区の場合、2023年度は、本来入るはずだった税収が区内の小・中学校の給食費3年分にあたる110億円も減った。ふるさと納税により税収が減った場合、多くの自治体は、国からの地方交付税で減った分の75%の補填がある。しかし、世田谷区は補填がされない「不交付団体」に認定されていて、区の財政への影響が大きくなっている。

当初、返礼品競争には加わらない方針をとっていた世田谷区だが、返礼品に市民マラソンの出場権や花火大会の観覧席などを加え、現在、その種類は180近くまで増えている。

世田谷区 ふるさと納税対策担当課 斉藤洋子課長:
世田谷区と地方の自治体は力を合わせていろんなことを解決していくような仲間。税をお互いに取り合う関係ではないと思っている。

「ふるさと納税」1兆円突破 ポイント付与禁止の波紋

さらに、ふるさと納税を巡っては、仲介サイト同士でポイント競争が過熱。総務省は、ポイントの一部が自治体の負担になっているとみて、2025年10月から付与を禁止する。

松本剛明 総務大臣:
寄付額の中から、ポータルサイトに(報酬が)入っているとこからポイントのお金の流れから見たら(寄付金から)出ているといってもいいのではないかと。今回はぜひやめてほしいということで、禁止とさせてもらった。

これに対して、仲介事業を行う楽天グループは200万件近い署名を集め、総務省の方針に反対すると表明している。

楽天 関聡司執行役員:
楽天のようにポイント付与において、自治体に費用負担を求めてないという場合には、ポイント付与を禁止しても、手数料が下がることはないと言える。そういう意味でも政策としておかしいと考えている。

「ふるさと納税」 制度の問題点と経済効果

――ふるさと納税は非常にいい制度で、たくさんの人が利用している。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
この10年間で最も日本の政策で成功して、最も国民に支持された政策だと思う。なおかつ地方自治体がそれぞれ工夫をして返礼品を出しているので、自治体の意識がガラッと変わった。今まで地方自治体は東京に出てきて、総務省や議員を回って「地方交付税交付金1円でも多くください」とお願いして歩くのが仕事だったが、新しい工夫でふるさと納税を集められると(意識が)劇的に変わったと思う。

こうした中でポイント制を規制、禁止しようという動きが出ている。寄付をする人は、多くの場合、仲介サイトを通じて自治体に寄付をしているが、その仲介サイトから付与されるポイントが2025年10月以降禁止される。

――総務省が目の敵にしているが、ダメなことなのか。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
ポイント自体は、様々なものに関連してもらえる。ふるさと納税だけではない。いろんなサイトが企業努力でポイントを出しているので、ふるさと納税だけ「けしからん」と言って、国が規制するというのは、どう考えてもおかしいと思う。

――確かにポイントの原資がどこから来ているのか、原価に上乗せされてるのか、企業努力か、線引きできない。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
難しい。楽天が「ポイント禁止されたからといって手数料が下がるわけではない」と言っていて、多分事実だと思う。だから民間の企業努力に国が口を出すというのは、どう考えても愚策。あまりにも反発が大きすぎて戸惑っているのではないか。

――現実問題として仲介サイトを使わないと、多くの人はふるさと納税をしにくい。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
「ふるさと納税」のサイト同士が激しく競争している。手数料自体も一定に決まっておらず、競争をして手数料を払っていた。むしろ競争をやめさせて、この制度を壊したいという感じがする。

「ふるさと納税」1兆円突破 「格差」「経費」など課題も

ふるさと納税で指摘されている問題点は、「返戻品目的ではないか?」。それから「返礼品や経費の比率が高い」寄付額の30%以下、経費が50%以下にしようということになっていたが、それでも比率が高いのではと。さらに「税金流出自治体もある」「高所得者のメリットが大きい」などがある。

――まず返礼品だが「ふるさと納税」という言葉に問題があるのでは?

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
そうかもしれない。納税を移しているというイメージがあり、それで金をもらうのはけしからんという話になる。

――税金で返礼品をもらっているから払っているのではない。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
これは寄付。あくまでも「その自治体に寄付したことに対するお礼が来る」ということで、そのお礼をいくら出すかとかどんなものを出すかは、本来その自治体が考えればいい話。それを総務省が「3割以下でなければいけない」とか「地場産品でなければいけない」と限っていくとこの制度自体の柔軟性がどんどん失われていく。むしろこれは、経済対策・経済政策だと思えば、こんなにいい制度はない。これによって人気を集めた返礼品の産業が地域で成長する。「補助金を出してその業種を成長させる」ということの代わりになる。むしろ全国の人たちが応援してくれるという、見事な経済対策になっていると思う。

――地元が工夫しながら、人々の協力も得ながら産業振興策をやっている「ふるさと創生事業」か。みんな工夫を凝らしてきている。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
そうだと思う。今は、ふるさと納税担当課の職員は「一番優秀な人を揃える」というぐらいに変わってきた。アイディア勝負なので、よその自治体に負けないと。本当にこの10年間で、自治体の雰囲気が、ガラッと変わった。

――寄付額の上位を見ると、肉や海産物がある自治体が並んでいて、おなじみのところも多い。先ほど紹介した茨城県境町は11番目。特定の自治体に集中していることもよく批判されている。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
総務省が「地場産品以外はダメだ」と強く言ったことが影響して、肉とか海産物を持っている自治体だけが上位に来ることになる。

――肉も海産物もない自治体にとっては不公平ということになる。だから、そこまで本当に縛る必要あるのか。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
一生懸命、抜け道を探そうと思って「自分のところで加工している」「工場があるからいいのではないか」など(自治体は)いろいろ工夫をしている。

―― 一方で流出している自治体もたくさんある。特に都市部の横浜・名古屋・大阪・世田谷区。なので「不公平だ」という話がある。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
私も横浜市民だが、基本的に住民サービスが足らないというのは、非常に大きな問題だと思う。「普通に生活しているのだから、税金払うのは当たり前だ」という感じが上位にあがるような自治体にあるのではないか。

――自分たちが住んでいる自治体から十分な住民サービスを受けている実感がなく、「こんなに住民税を払うんだったら、どこかに寄付したい」という人もいる。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
給食費の話だったらそのためにクラウドファンディングをやるとか、ふるさと納税を使うなどもう少し工夫してアピールすれば、逆にお金を集める、一つの手法になると思う。

――「寄付」というものに対する、人々の意識を変えてきているのではないか。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
最近は震災など災害が起きると、その自治体に大量の寄付が集まる。しかも返礼品を求めないという寄付がすごく増えている。日本は「寄付文化が根付かない国」とずっといわれてきたが、このふるさと納税のおかげで、寄付文化が根付いたのではないか。何か被災があったらみんなで寄付しようというムードがすごく広がったと思う。

――そういうメリットを確認しながら制度をより良くするという議論を深めたい。

(BS-TBS『Bizスクエア』 8月18日放送より)

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