アイデアを終わらせない N高グループの学びが生んだ「みたらしコッペ」

2025-12-15 16:00

甘いものと、しょっぱいもの。その組み合わせに心をつかまれる人は少なくないはずです。
ホイップクリームときなこ、そこにとろりとかかるみたらしのタレ。思わず手に取りたくなるこの「みたらしコッペ」は、実は高校生・中学生のアイデアから生まれたパンです。

お店で並ぶパンの多くは、プロの職人や企業の商品開発部が考えたものというイメージがありますが、このパンは少し違います。発案したのは、全国で学ぶ生徒たち。授業の一環として行われた体験型プログラムの中で、「まだ世の中にないパン」をテーマに試行錯誤を重ね、実際の商品化にまでつながりました。

注目したいのは、アイデアを出すこと自体で終わらなかった点です。製造工程の制約や現場の視点を踏まえながら、何度も方向転換を行い、現実的な形へと落とし込んでいく。そのプロセス自体が、学びとして丁寧に積み重ねられていました。

この取り組みは、パンの話であると同時に、「学びが社会とどうつながるか」を考える一例でもあります。若い世代の発想が、企業と交わり、実際の商品として店頭に並ぶ。その背景にある教育の姿勢にも、自然と目が向く内容です。

一度は立ち止まったアイデアが、パンになるまで

工場での製造体験

一見するとユニークな発想から生まれたように見える「みたらしコッペ」ですが、その裏側には想像以上に地道な試行錯誤がありました。
このパンは、全国から集まった中高生たちが参加した体験型の学習プログラムの中で生まれた企画です。テーマは「まだこの世にないパンを考えること」。自由な発想が求められる一方で、実際に商品として成立するかどうかという現実的な視点も同時に突きつけられました。

当初、生徒たちが考えていたのは、見た目も華やかな別のスイーツパンでした。しかし、製造工程の複雑さや現場での再現性といった課題が浮かび上がり、「このままでは商品化は難しい」というフィードバックを受けることになります。
アイデアそのものを否定されたわけではありませんが、実際に作り、売ることを考えると、修正が必要だったのです。

ここからが本当のスタートでした。
生徒たちは既存の商品や製造ラインを改めて見直し、どんな形なら現実的に作れるのか、どんな素材ならパンと相性が良いのかを一つずつ検討していきます。和の素材として挙がった案の中から、意外性がありながらも親しみのある「みたらし団子」に着目し、パンと組み合わせる方向へと舵を切りました。

「自由な発想」と「現実的な制約」。
その間を行き来しながら何度も考え直し、形を変えていく過程を経て、最終的にたどり着いたのが「みたらしコッペ」でした。
ひとつのパンが生まれるまでには、アイデアだけでなく、考え抜く時間と柔軟な発想の切り替えが積み重なっていたことがうかがえます。

アイデアを終わらせない、N高グループの学び方

店舗での市場調査

この取り組みが印象的なのは、生徒の自由な発想だけでなく、それを現実の社会と結びつける環境が用意されていた点です。
アイデアを考えて終わりではなく、企業と一緒に検討し、実際の製造現場や店舗の視点を踏まえながら企画を磨いていく。その一連の流れが、学びの中に自然に組み込まれていました。

生徒たちはオンラインでの講義やワークショップを通じて基礎を学びつつ、実際に工場や店舗を訪れ、パンづくりの現場や売り場を知る機会を持っています。そこで得た気づきが、机上のアイデアを「現実的な商品企画」へと変えていく材料になっていきました。

また、途中で方向転換を求められた場面でも、「失敗」として終わらせるのではなく、なぜ難しいのか、どうすれば実現できるのかを考え直すプロセスそのものが重視されています。制約を理由に諦めるのではなく、条件の中で最適解を探る姿勢が、結果として「みたらしコッペ」という形につながりました。

こうした学びのあり方は、単に商品を生み出すことが目的ではありません。
自分たちの考えたものが、社会の中でどのように受け止められるのか。誰と協力し、どんな調整が必要なのか。その過程を経験すること自体に価値があります。

今回のパンがN高グループの学びの中から生まれたのは偶然ではなく、学びと社会を結びつける仕組みが日常的に用意されているからこそだと言えそうです。

「みたらしコッペ」が“商品”として選ばれた理由

生徒たちが考えたアイデアは、最終的に社内の商品化会議にかけられました。
この会議には、企業の社員が考案した商品案も並び、いわば同じ土俵での検討が行われています。学生の企画だからといって、特別扱いされる位置づけではありませんでした。

その中で「みたらしコッペ」が評価された理由のひとつは、ベースとなる発想を残しながらも、形やトッピングなどに調整の余地があった点です。生徒のアイデアを土台に、製造現場の視点を加えることで、より現実的で伝わりやすい商品へと磨き上げることができました。

結果として、見た目にも“みたらし団子”を連想しやすい形に整えられ、味や構成も含めて完成度を高めたうえで、実際の新商品として採用されることになります。
アイデアそのものの面白さに加え、現場とすり合わせながら成長できる余地があったことが、選ばれた大きな要因だったようです。

生徒にとっては、自分たちの考えたものが、社員の企画と同じように検討され、評価されたという経験そのものが大きな意味を持ちます。
また企業側にとっても、若い視点ならではの発想と、自社のものづくりをすり合わせることで、新たな可能性を見いだす機会になったことがうかがえます。

「みたらしコッペ」の商品化は、完成したパンだけでなく、その過程にこそ価値がある出来事だったと言えそうです。

みたらしコッペ

ふんわりしたコッペパンの中に、くちどけのよいホイップと香ばしいきなこペースト、さらにみたらしのたれをとろりとかけた、“和のおいしさ”を一つに閉じ込めたスイーツコッペ。
ザクッ・ふわっ・とろりの三拍子が楽しめる一品です。

学びが、いつの間にか日常になる

「みたらしコッペ」は、甘じょっぱい味わいが楽しいスイーツパンであると同時に、学びが社会とつながった結果として生まれた存在でもあります。
生徒のアイデアが、企業とのやり取りや現場の視点を経て、実際に店頭に並ぶ商品になる。そのプロセス自体が、特別な出来事ではなく、ひとつの学びの延長として用意されていた点が印象的です。

今回の取り組みからは、知識を身につけることだけでなく、考え、試し、調整し、形にしていく力を育てようとする姿勢が伝わってきます。正解のないテーマに向き合いながら、自分たちの発想を社会の中でどう生かすかを考える経験は、教室の中だけでは得がたいものです。

パンという身近な存在を通して、その背景にある学びや挑戦が自然と伝わる点も、この取り組みの魅力だと言えるでしょう。
こうした経験が積み重なっていくことで、生徒一人ひとりの選択肢や可能性が、少しずつ広がっていくのかもしれません。


学校法人角川ドワンゴ学園 概要

学校法人角川ドワンゴ学園は、インターネットと通信制高校の制度を活用した「ネットの高校」として、N高等学校・S高等学校・R高等学校を運営しています。
高校卒業資格の取得に加え、大学受験、プログラミング、クリエイティブ分野など、多様な学びをオンラインで提供しているのが特徴です。企業や自治体と連携した体験型の学習プログラムも積極的に行われています。
また、N中等部では、中学生年代を対象に、一人ひとりのペースを大切にしながら学びを深める環境が用意されています。

公式サイト:https://nnn.ed.jp/

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