知っておきたい!愛犬を悩ませる背中の「できもの」の正体|ゴールデン・レトリーバーに発生した「類皮腫洞」の症例報告から獣医が解説

2026-02-26 17:20

この記事では、ゴールデン・レトリーバーに過去にほとんど報告例のない、珍しい先天性の皮膚疾患である類皮腫洞について、実際の症例をもとに詳しく解説します。愛犬の背中に見慣れないしこりやできものを見つけた飼い主様は、ぜひ参考にしてください。

️類皮腫洞とはどんな病気?

正面を見つめながら首を傾げる犬

類皮腫洞は、犬の皮膚に発生する先天性の奇形疾患です。見た目は、背中の正中線上にできる小さな結節(しこり)や瘻孔(小さな穴)として現れることが多いです。この瘻孔は、皮膚の表面から、深い部分では脊髄にまで繋がっていることがあります。瘻孔の内部には毛や皮脂、角質などが溜まり、感染を起こすと炎症や化膿を引き起こすことがあります。

この病気にはI型からVI型までの6つのタイプがあり、その深さによって分類されます。特に、IV型やVI型のように、瘻管が体の奥深く脊髄にまで達しているタイプでは、感染が脳や脊髄に波及して髄膜炎などを発症し、麻痺や歩行困難といった重篤な神経症状を引き起こすことがあります。

この病気の好発犬種として知られているのはローデシアン・リッジバックです。しかし、他の犬種でも報告されており、今回、ゴールデン・レトリバーの胸背部で発見された症例が報告されました。ゴールデン・レトリーバーでの発症報告は、筆者らの知る限り過去にイタリアで一例報告があるのみで、日本では初めての報告となります。

️ゴールデン・レトリーバーで発見された実際の症例

診察台の上で伏せる犬

今回報告された症例は、生後8ヶ月のゴールデン・レトリーバーの男の子です。生後2ヶ月頃から背中にできたしこりと、そこから角質のようなものが排出されることを主訴として動物病院を受診しました。初診時には、この犬は元気で、神経症状を疑わせるような様子は全くありませんでした。

しこりの中心には小さな穴(瘻孔)があり、その内部には毛が密集していました。レントゲン検査では、脊椎の構造に異常は見られませんでした。これらの所見から、獣医師は類皮腫洞を疑いました。

診断を確定するために瘻孔造影CT検査やMRI検査が提案されましたが、飼い主様との相談の結果、これらの検査は行われませんでした。代わりに、リスクを十分に説明した上で、全身麻酔下での結節と瘻管の外科的切除手術が行われることになりました。

手術から10ヶ月間経過観察が行われましたが、病変の再発はなく、犬は良好な経過をたどりました。切除された組織を病理検査した結果、類皮腫洞の特徴と一致する所見が得られ、レントゲンや臨床症状と合わせて類皮腫洞と確定診断されました。

️治療と今後の注意点

飼い主に見守られながら処置を受ける犬

類皮腫洞の治療は、基本的に外科手術による病変の切除です。特に今回の症例のように瘻管が脊髄に達していないタイプであれば、良好な予後が期待できます。しかし、前述の通り、IV型やVI型では脊髄や髄膜に繋がっているため、より慎重な治療方針の決定が不可欠です。脊髄や髄膜に感染が及ぶと重篤な状態になる可能性があるため、早期の発見と適切な診断、治療が鍵となります。

類皮腫洞はローデシアン・リッジバックでは遺伝性疾患であることが分かっていますが、ゴールデン・レトリーバーを含む他の犬種についてはまだ不明な点が多くあります。今後、ゴールデン・レトリーバーでも症例の報告が集積され、遺伝性の可能性が研究されることが期待されます。

️まとめ

飼い主の足に顔をくっつけて甘える犬

ゴールデン・レトリーバーに発症した類皮腫洞は、非常に珍しい先天性疾患です。愛犬の背中に小さなしこりや穴を見つけた場合は、感染や神経症状を引き起こす前に、速やかに動物病院を受診して適切な診断と治療を受けることが大切です。

(参考文献:獣医臨床皮膚科 29 (2): 81–83, 2023)

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