三宅香帆がメガネ作りを体験! 新レンズで確かめた“見え心地”

私たちは一日のほとんどを、「見る」という行為に支えられて生きている。朝スマートフォンの画面を開くことから始まり、通勤中に案内表示を追い、仕事では資料やモニターを見つめ、夜は本や動画に目を落とす。読書も、インターネットも、推し活も、誰かとの会話も、その多くは視界を通して成り立っている。それほど根本的な営みでありながら、自分がどのように見えているのか、そしてその見え方が最適なのかを意識する機会は、実はそれほど多くないのではないだろうか。
日本では約8,000万人がメガネを必要としており、世界的に見ても、メガネが生活に深く根づいた国のひとつでもある。それでも、「見え心地」や「視界の質」という観点が日常的に語られることは多くない。
今回、文芸評論家の三宅香帆さんが訪れたのは、ニコンのブランド直営のメガネ店「ニコンメガネ」。店頭での視力測定やカウンセリングを通じて、自分の生活に合ったメガネ作りを体験。そのプロセスは、そんな“当たり前”を少しだけ見つめ直すきっかけになりそうだ。
メガネは“どこで作っても同じ”なのか

視力補正用のメガネを購入したことがある20代以上を対象にした調査では、「メガネで得られる視界はどのメガネ店で作っても変わらないと思う」と答えた人が62%にのぼったという。多くの人にとって、メガネは“必要だからかけるもの”であり、どこで作っても大きな違いはないと感じられているのが現状である。しかし、メガネ作りは単に度数を合わせるだけの作業ではない。どの機械を使い、どう数値を読み取り、それをどのように生活に落とし込むのか。そこには作り手の判断や経験が重なっている。人の判断と機械の測定、その両方が交わることで、視界は形づくられていくのである。
「度数を合わせる」だけではないメガネ作り

メガネ作りは、数値だけで完結するものではない。日常でどの距離を見ることが多いのか、パソコン作業の時間は長いのか、読書の頻度はどうか。そうした生活背景を踏まえながら、一人ひとりの見え方を組み立てていく。ニコンのブランド直営店である「ニコンメガネ」では、そうしたプロセスを通じて“見え心地”を体験できるという。今回、三宅香帆さんが体験したのは、2026年2月に発売された単焦点レンズ「Zシリーズ SINGLE VISION」に、「RelaX」オプションを組み合わせたレンズである。測定から仕上がりまでの過程を経て、自分の生活に合った視界を探っていく体験であった。
三宅香帆が体験した“見え心地”の時間
完成したメガネは、その後、日常生活の中で実際に使用され、見え方や日々の変化についての実感が、三宅さん自身の言葉で綴られている。
店頭でメガネをつくるなんて、久しぶりのことだった。もともと近視で、ずっとメガネやコンタクトを駆使して生きていた。本を読むことやインターネットで遊ぶことが昔から好きだったから、目が悪くなるのは必然だった。だが大人になると、店頭でわざわざメガネをつくることも減った。老眼によって遠視になることも、まぁ、もう少し先のことだろうと思っていた。が、今回メガネをつくってもらうことになって知ったのは、若いうちからメガネをつけていたほうがむしろ目のためにもいいのだ、ということだった。
視力とは筋肉である。目の筋肉が毎日酷使されている。肩こりなんかそうだが、必要のない筋肉を伸ばし続けていると、そこは凝ってしまい、取り返しのつかないことになる。私たちはなかなかそのことに気づかない。だって見ることは、無意識におこなわれているものだから。しかし、本当は、目こそ労ったほうがいい。ニコンメガネさんは丁寧に視力を測ってくれて、合うメガネをさがしてくれたのだが、その過程で「健康な人は、目を大切にするという習慣を、そもそもつけたほうがいいよな……」としみじみ思い知った。
目は替えがきかない。酷使しすぎては取り返しのつかないことになる。しかし私たちは目を使わないと生きていけない。読書も、仕事も、推し活も、自分自身の目でもっておこなわれていることに自分は支えられている。そう考えると、メガネの度数やレンズの種類に気をつかうだけで、日常から目の筋肉をいたわることができるなんて、素晴らしいことだ。メガネをつくりながら私はしみじみ思った。
実際に使ってみると、たしかになんとなく目が軽い。読書やPCの時間はこれまでもこれからも大切にしたい、だからこそ、目に負担をかけているという罪悪感が少し減ったこと。それこそがなによりも「メガネを作って良かった」と思えた点だった。
これからも健康的に本を読みたい。インターネットで楽しく生きたい。愉快に仕事をしたい。その根底を支える「見ること」をいたわるためにも、まずは自分に合ったメガネをつけること。そこから始めよう。

<三宅香帆プロフィール>
文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。 1994年高知県生まれ。京都大学人間 ‧ 環境学研究科博士前期課程修了。リクルート社を経て独立。 2025年、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』にて、「新書大賞」を史上最年少で受賞。第76回NHK紅白歌合戦ゲスト審査員。
メガネは主張する道具ではない。毎日の中で当たり前のように使われ、静かに機能し続ける存在である。だからこそ、その質について改めて考える機会は少ない。だが、見え方が少し変わることで、読書の集中力や仕事の快適さが変わることもある。視界は思考や判断の土台であり、生活そのものを支えている。自分に合ったメガネを選ぶことは、特別な行為ではなく、日常を心地よく過ごすためのひとつの選択である。
見ることは無意識に続いていく。だからこそ、その質を少し整えてみる。三宅香帆さんの体験は、そんなささやかな視点の転換を示している。視界を整えることは、生活の輪郭を整えることでもあるのかもしれない。