アトピー治療中の愛犬に「黒いイボ」が多発…知っておきたい皮膚乳頭腫症の基礎知識【獣医師が解説】

2026-04-02 17:20

愛犬の皮膚に突然現れる黒いイボ状の病変は飼い主にとって心配の種です。特にアトピー性皮膚炎などの慢性疾患で長期治療を受けている犬では、皮膚乳頭腫症という病気が発症する可能性があります

皮膚乳頭腫症とは何か?症状の特徴と発症メカニズム

悲しげな表情で伏せるチワワ

皮膚乳頭腫症は、犬の皮膚に黒色に色素沈着したイボ状の病変が多発する疾患です。この病気は、パピローマウイルスというウイルスの感染によって引き起こされることが知られており、特に免疫力が低下した状態の犬に発症しやすいとされています。

報告されている症例では、8歳のチワワがアトピー性皮膚炎の治療でプレドニゾロン(ステロイド薬)を長期間使用していたところ、主に左後ろ足を中心として多数の黒い乳頭状病変が出現しました。これらの病変は、最初は小さな隆起として現れますが、徐々に大きくなり、表面が粗くイボ状の見た目になります。

病変の組織検査では、パピローマウイルス感染の明確な証拠となる重要な結果が得られます。免疫機能が正常な犬では、このようなウイルス感染に対して適切な免疫反応が働きますが、長期間のステロイド使用や基礎疾患により免疫力が低下している状態では、ウイルスが増殖しやすくなり、皮膚乳頭腫症の発症リスクが高まります。

飼い主が注意すべき初期症状として、皮膚表面の小さな隆起や色素沈着、触感の変化などがあります。特に、慢性的な皮膚疾患で治療を受けている犬では、定期的な皮膚の観察が重要です。

診断プロセスと他疾患との鑑別 正確な診断の重要性

台の上で獣医師の手に支えられているチワワ

皮膚乳頭腫症の診断は、症状の観察から始まりますが、確定診断には組織検査が不可欠です。鑑別すべき主な疾患には癌なども含まれ、これらの疾患は外見上類似することがあるため、正確な診断のためには組織生検が必要となります。

症例のチワワでは、病変部の組織検査により、パピローマウイルス感染の証拠が得られ、PCR検査によりパピローマウイルスの存在も確認され、診断がより確実となりました。

診断プロセスでは、基礎疾患の評価も重要です。アトピー性皮膚炎や他の免疫抑制状態が皮膚乳頭腫症の発症に関与している可能性があるため、全身状態の詳細な評価が必要です。血液検査により肝機能や免疫状態を確認し、治療方針の決定に役立てます。

早期診断の利点は、適切な治療開始により病変の進行を抑制できることです。また、悪性腫瘍との鑑別により、私たち飼い主の不安が軽減されます。定期的な経過観察により、治療効果の評価と必要に応じた治療方針の修正を行うことができます。

治療選択肢と長期管理 抗生物質による新しいアプローチ

シリンジで薬を飲んでいるチワワ

皮膚乳頭腫症の治療において、従来は外科的切除や冷凍療法、免疫調節薬の使用などが一般的でした。しかし、多発性病変や再発例では、これらの治療法では限界がある場合も少なくありません。

症例のチワワでは、まずプレドニゾロンを中止し、より安全な抗アレルギー薬であるオクラシチニブに変更しました。しかし、2週間経過しても病変に改善は見られませんでした。

そこで、新しい治療選択肢として、抗生物質のアジスロマイシンによる治療が開始されました。アジスロマイシンは、通常は細菌感染症の治療に使用される薬物ですが、近年、抗炎症作用や免疫調節作用も注目されています。

治療開始から14日間では明らかな改善は認められませんでしたが、1ヶ月後には病変の軽度な改善が確認されました。さらに5ヶ月間の継続投与により、病変は著明に改善し、ほぼ完全に消失する結果が得られました。

この治療期間中、副作用として軽度の肝酵素上昇が認められましたが、臨床的に問題となるレベルではありませんでした。

長期管理において重要なポイントは、基礎疾患の適切なコントロールです。

アトピー性皮膚炎の管理には、アレルゲンの回避、適切なスキンケア、必要に応じた薬物療法が含まれます。免疫抑制薬の使用は最小限に留め、可能な限り副作用の少ない治療選択肢を選択することが重要です。

飼い主による日常的なケアも治療成功の鍵となります。定期的な皮膚の観察、適切なシャンプーと保湿、環境の清潔保持などが、再発防止に役立ちます。また、定期的な獣医師による診察により、早期の問題発見と適切な対応が可能となります。

まとめ

ダックスと原っぱを走って遊ぶチワワ

皮膚乳頭腫症は免疫力低下により発症する皮膚疾患ですが、アジスロマイシンによる長期治療により改善が期待できることが示されました。

早期診断と適切な治療選択により、愛犬の生活の質を向上させることが可能です。

(参考文献:獣医臨床皮膚科 29 (4): 205–209, 2023)。

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