一生の点眼じゃなくていい?緑内障の新たな選択肢「レーザー治療(SLT)」
日本人の失明原因第1位である「緑内障」。一度失われた視野は元に戻らないため、早期発見と「今ある視野を守ること」が治療の至上命題です。
これまで緑内障治療といえば「一生、毎日欠かさず点眼薬を差すこと」が常識とされてきました。しかし近年、その常識が大きく変わりつつあります。点眼薬に潜む副作用のリスクと、新たなスタンダードとして注目される「SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)」について、最新のエビデンスを交えて解説します。
本記事は、いわみ眼科 理事長・岩見久司医師への取材に基づき構成しています。
知っておきたい「点眼薬」の副作用と正しいケア
緑内障治療の基本は、目の中を循環する「房水(ぼうすい)」の量を調節して眼圧を下げることです。点眼薬は非常に有効ですが、長期間の使用には注意も必要です。
意外な副作用のリスク
点眼薬は局所的な薬ですが、成分が鼻の粘膜などを通じて全身に回ったり、まぶたの組織に影響を与えたりすることがあります。
- 全身への影響: ぜんそくの悪化、脈拍の低下、血圧低下、ふらつきなど。
- 見た目の変化: まぶたのくぼみ(SU-PAP)、まつ毛の異常な伸長、目の充血。
- アレルギー:かゆみ、腫れ、まぶたの皮膚の荒れ。
特に「まぶたのくぼみ」は、将来的に手術が必要になった際の成功率に影響を与える可能性も指摘されています。
副作用を防ぐ「正しい差し方」
いわみ眼科(兵庫県芦屋市)の岩見久司理事長は、副作用を最小限に抑えるために以下の2点を推奨しています。
- 涙点(るいてん)圧迫: 点眼後、目頭を軽く押さえて薬液が全身へ流れるのを防ぐ。
- 点眼後の洗顔:点眼の約5分後、皮膚に付いた薬液を洗い流す(入浴前の点眼も有効)。
新たな第一選択肢「レーザー治療(SLT)」とは?

「毎日点眼するのが難しい」「副作用がつらい」という方にとって、大きな希望となっているのがSLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)です。
本来の「排水機能」をメンテナンスする仕組み
目の中の水の出口である「線維柱帯(フィルター)」が目詰まりすると、眼圧が上がります。
- 点眼薬:水の産生を抑えたり、別の迂回ルートから水を抜いたりする対症療法的な側面があります。
- SLT: 低エネルギーのレーザーをフィルターに照射して細胞を活性化し、目本来の排水機能をスムーズにする「根本的なメンテナンス」です。
世界が認めたエビデンス(LiGHT study)
2019年に医学誌『Lancet』で発表された大規模臨床試験「LiGHT study」により、緑内障治療の考え方は劇的に変わりました。未治療の患者にSLTを行った結果、3年経過時点で約74%が「点眼薬なし」で目標眼圧を維持できたのです。これにより、欧米のガイドラインではSLTを初期治療として検討することが推奨されています。
日本人に多い「正常眼圧緑内障」への有効性
日本人の緑内障の約7割は、眼圧が正常範囲内(21mmHg以下)で進行する「正常眼圧緑内障(NTG)」です。
「もともと眼圧が高くないのにレーザーが効くのか?」という疑問もありましたが、国内の多施設共同研究によって、日本人のNTGに対してもSLTが15%以上の眼圧下降をもたらす有効な手段であることが示されつつあります。
レーザー治療(SLT)のメリット・デメリット
副作用の軽減: 充血や色素沈着、全身への影響を避けられる。
QOLの向上: 点眼の手間や「差し忘れ」の不安から解放される。
低侵襲: 3〜10分程度の通院治療。痛みはほぼなく、保険適用。
注意点
個人差がある: すべての人に劇的な効果が出るわけではない。
進行度による: 病状によっては、従来通りの点眼や手術が優先される。
自分に合った治療法を専門医と相談しよう
現在の日本の診療現場では、まだ点眼薬が主流ですが、「一生の点眼」だけが唯一の道ではありません。点眼の継続が身体的・精神的に負担になっている場合、あるいは将来を見据えて早期に眼圧を安定させたい場合、SLTは極めて有力な選択肢となります。
「副作用が気になる」「目薬を一生続けられるか不安」と感じている方は、一度専門医に「レーザー治療(SLT)という選択肢」について相談してみてはいかがでしょうか。
大切な視力を守るために、ライフスタイルに合わせた最適な治療法を見つけることが重要です。
【取材/監修 協力】

医療法人社団久視会 いわみ眼科
理事長: 岩見 久司(医学博士・日本眼科学会認定 眼科専門医)
所在地: 兵庫県芦屋市公光町11-2 CH158 BLDG HANSHIN ASHIYA 2F
公式サイト: https://iwami-eyeclinic.com/