もし子どもが一人のとき災害が起きたら? 親子で考える「逃げ一択防災」と防災8ステップ

2026-05-04 08:00
もし子どもが一人のとき災害が起きたら? 親子で考える「逃げ一択防災」と防災8ステップ

5月5日のこどもの日を前に、「子どもの防災」に改めて目を向ける動きが広がっている。災害はいつ、どのような状況で起こるか予測が難しく、必ずしも家族が一緒にいるタイミングとは限らない。これまでの大規模地震では、子どもが一人の時間帯に発生したケースは確認されていないものの、今後も同様である保証はない。そうした前提に立ったとき、親がそばにいない状況でも、子ども自身が適切に行動できる備えを整えておくことは、これからの防災において欠かせない視点である。

こうした背景のもと、マスターロック・セントリー日本株式会社(以下、MLSJ社)が提案しているのが、「逃げ一択防災」という考え方である。防災士・藤田実沙さんとともに、子どもと一緒に取り組む防災教育のあり方が提示されている。

「逃げ一択防災」という考え方

災害は発生する時間や状況を選ばない。とくに子どもが一人で過ごしている時間帯に起きた場合、その場で判断し行動する力が求められる。そのためには、あらかじめ「どう動くか」をシンプルに決めておくことが重要になる。

MLSJ社が提案する「逃げ一択防災」は、こうした状況に備え、“逃げる”という選択を最優先に据える考え方である。従来の防災では、防災リュックを持ち出す「持ってく防災」が中心とされてきたが、これに加えて「置いてく防災」という発想が提示されている。

あらかじめ大切なものや生活再建に必要なものを安全に保管しておくことで、避難時に持ち出すかどうか迷う必要がなくなる。結果として判断がシンプルになり、迅速な避難行動につながるという仕組みである。また、避難所での紛失や盗難リスクを減らすという点でも合理的な備えといえる。

被災体験から見える「大切なモノ」

実際の被災体験からは、「命が助かったことが何よりである」としながらも、失われた日常への喪失感の大きさが語られている。特に子どもにとっては、ランドセルや写真、手紙といった身近な持ち物が、日常をつなぎとめる存在になることも少なくない。

被災後、瓦礫の中から思い出の品を探し出し持ち主に返す活動が行われた背景には、そうした“心の支え”としての役割があるとされている。防災は命を守るための備えであると同時に、その後の生活や心の回復まで見据える必要があることがうかがえる。

子どもに寄り添った防災の考え方

防災士・藤田実沙さんは、子どもと大人では被災後に直面する困りごとが異なる点を指摘している。特に乳幼児がいる家庭では、大人と同じ基準で備えるのではなく、子どもの年齢や生活に合わせた準備が求められる。

自身も過去の地震で備えが不十分なまま被災した経験を持ち、そのときの不安や後悔が、防災に向き合うきっかけになったという。防災を特別なものとして構えるのではなく、日常の延長として取り入れていくこと。その積み重ねが、いざというときの安心につながると考えられている。

子どもと取り組む「防災8ステップ」

具体的な取り組みとして提案されているのが、「子ども防災8ステップ」である。どれも特別な準備ではなく、日常の中で家族と話し合いながら進めていける内容となっている。

① 避難と自宅待機の判断基準を決める
自宅や周囲の安全性を確認し、危険があればすぐ避難するなど、迷わず行動できる基準を共有しておくことが重要である。

② 家族の連絡手段を話し合う
スマートフォンが使えない状況も想定し、公衆電話や災害伝言ダイヤルなど複数の手段を準備しておくと安心につながる。

③ 「頼れる大人」を決めておく
近所の人や知人など、いざというときに頼れる存在を事前に共有しておくことで、子どもの不安を軽減できる。

④ 自宅内の安全な場所を確認する
家具の倒壊や落下物の影響を受けにくい場所を決めておくことで、揺れが起きた際の初動対応がしやすくなる。

⑤ 子ども用の持ち出しグッズを準備する
年齢や成長に合わせて必要なものは変わるため、定期的に中身を見直しながら備えていくことが求められる。

⑥ 日常的に持ち歩く「防災ポーチ」を用意する
ミニライトやホイッスルなど最低限の備えを普段から持ち歩くことで、外出先でも落ち着いて行動しやすくなる。

⑦ 「置いていくもの」を家族で決める
大切なものをあらかじめ一箇所にまとめておくことで、避難時の判断をシンプルにし、行動のスピードを高めることができる。

⑧ 親が不在時の行動ルールを決める
どこに向かうのか、誰を頼るのかを具体的に決めておくことで、子ども自身が状況に応じた判断をしやすくなる。

藤田実沙(防災士)
整理収納アドバイザー、防災士。夫と中学3年生、中学1年生の息子と犬1匹と暮らす。
大阪府北部地震をきっかけに防災に目覚める。
暮らしになじむ備えの情報をInstagramやVoicyで発信している。著書に「おしゃれ防災アイデア帖」「おうち防災アイデア」ほか。

「持ってく防災」と「置いてく防災」の具体像

防災リュックを中心とした「持ってく防災」と、あらかじめ大切なものを保管しておく「置いてく防災」は、それぞれ役割が異なる備えである。両者を分けて考えることで、避難時の行動がよりシンプルになる。

■持ってく防災(避難時に持ち出すもの)
・水・食料(数日分)
・モバイルバッテリー・ライト
・救急セットや衛生用品
・現金(小銭含む)・連絡先一覧
→避難直後の生活を支え、「命を守る」ための備え

■置いてく防災(自宅に保管して守るもの)
・身分証明書・保険証・契約書類
・現金・印鑑・貴重品
・写真や手紙などの思い出の品
・再発行に時間がかかる重要書類
→ 避難後の生活再建や心の支えにつながる備え

このように役割を分けて整理しておくことで、「何を持って逃げるか」と迷う時間を減らすことができる。特に「置いてく防災」は、避難時には不要でも、日常が戻った後に必要になるものを守るという点に特徴がある。

子どもにとっても、「大切なものはここにある」と共有しておくことで、不安の軽減につながる側面がある。持ち出す備えだけでなく、あえて置いて守るという選択を持つことが、防災全体のバランスを整えることにもつながる。

防災アイテムとしての金庫の役割

「置いてく防災」を実践するうえで、重要な役割を担うのが金庫の存在である。MLSJ社が展開する耐火・耐水金庫は、防犯用途だけでなく、防災の観点からも有効なアイテムとして位置づけられている。

火災や浸水といった災害から重要書類や貴重品を守ることで、避難時にすべてを持ち出せない状況でも安心して行動できる環境を整えることができる。また、書類が守られていることで、被災後の行政手続きや保険申請をスムーズに進められる点も大きい。さらに、「大切なものを守る場所」があることは、子どもにとっての安心感にもつながる。日常では防犯、非常時には防災として機能する金庫は、暮らしの中に取り入れやすい備えの一つといえるだろう。

マスターロック・セントリー日本株式会社
公式HP:https://masterlocksentry.jp/

防災というと、特別な準備や大がかりな対策を思い浮かべがちだが、今回紹介されている内容は、日々の暮らしの中で少しずつ整えていけるものが多い。子どもと一緒に話し合いながらルールを決めたり、身の回りの備えを見直したりすることも、その一つといえる。

いざというときに迷わず動けるかどうかは、日常の中でどれだけ準備してきたかに左右される部分も大きい。だからこそ、防災を“特別なもの”として構えるのではなく、暮らしの延長として取り入れていく視点は自然な流れなのかもしれない。

子どもとともに考える防災は、家族それぞれにとっての安心の形を見つけていくプロセスでもある。こどもの日をきっかけに、身近なところから見直してみるのも一つの選択になりそうだ。

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