「持病があるけど手術できる?」病気別リスクと安全対策について飼い主が知るべきこと【獣医師執筆】

2026-05-06 17:20

「心臓や腎臓に病気があるけど、手術は大丈夫?」と不安に思う飼い主さんは少なくありません。持病があっても、正しい評価と対策を行えば手術が可能なことは多くあります。本記事では病気別のリスクと安全対策をわかりやすく解説します。

心臓に病気がある犬の手術で大切なこと

診察台の上で聴診器を当てられている犬

心臓は全身に血液と酸素を届ける、命を維持するために欠かせない臓器です。そのため心臓病を持つ犬に麻酔をかける場合、「どれだけ血液の循環を安定して保てるか」が最も重要なポイントになります。

心臓に問題があると、血液を送り出す力が低下し、運動するとすぐ疲れたり、呼吸が苦しくなったり、重い場合には失神を起こすこともあります。こうした症状は、麻酔によってさらに悪化する可能性があるため、手術前の評価が欠かせません。

麻酔の安全性を高めるためには、手術前の段階で心臓の状態をできるだけ安定させることが重要です。興奮や不安は心拍数や血圧を大きく変動させるため、落ち着いた環境を整えることも治療の一部と言えます。

麻酔中は、血圧や心拍数、酸素の取り込み状況を常にモニターし、循環が低下しないよう細やかな調整が獣医師と看護師によって行われます。

また、心臓病のある犬にとって「酸素」は非常に重要な役割を果たします。麻酔前から覚醒後まで、十分な酸素が体内に取り込める環境を整えることで、心臓への負担を軽減できます。

ただし、酸素が十分にあっても肺に問題があり換気ができなければ意味がありません。そのため、肺に異常がないかについても手術前に評価し、必要に応じて治療を行うことも大切です。心臓病を「どのように管理するか」が安全性を左右すると言えます。

肝臓・腎臓の病気がある場合に注意すべき麻酔の考え方

輸液中の犬と薬剤投与のイメージ

肝臓と腎臓は、体内に入った薬を分解・排泄する重要な臓器です。このため、どちらかに異常があると、麻酔薬の効き方や持続時間が通常と異なることがあります。

肝臓に問題がある犬では、薬の体内での分解・代謝が遅れ、麻酔が長引いたり、副作用が出やすくなることがあります。

肝臓の評価では、血液検査の数値だけを見るのではなく、画像検査や必要に応じた追加検査なども組み合わせて機能全体を判断することが大切です。麻酔管理では、肝臓の負担が少ない薬剤を選び、肝臓の血流をしっかり保つことが意識されます。

また、輸液剤が肝臓に負担となる場合もあるため、輸液の種類や量に配慮が必要なこともあります。

腎臓に病気がある犬の場合、最大のポイントは血圧を下げすぎないことです。麻酔による血圧低下は腎臓の血流を減少させ、腎機能をさらに悪化させる可能性があります。

そのため、麻酔薬や鎮痛薬は必要最小限の量で慎重に使われ、点滴や循環補助薬を組み合わせて腎臓への血流を維持します。

また、腎臓病の犬では水分管理が非常に重要になります。麻酔前から麻酔後まで、十分な水和状態と尿量を保つことで、腎臓へのダメージを最小限に抑えることができます。

神経の病気がある犬では「麻酔後」までが治療

獣医師になでられているエリザベスカラーを着けた犬

脳や脊髄などの神経に問題がある犬の麻酔で特に注意が必要なのは、いわゆる脳圧の上昇です。特に、発作やてんかんの既往がある犬は注意が必要です。頭の中の圧力が高まると、脳へのダメージが進行する恐れがあります。麻酔の影響で、この脳圧が上がってしまわないようにすることが最大の目標になります。

興奮や痛みは脳圧を上昇させる要因となるため、麻酔前からできるだけ落ち着いた状態を保つことが重要です。また、呼吸状態や血圧の変化も脳圧に影響を与えるため、換気の管理や血液循環の安定が欠かせません。これらは一つひとつが独立しているようで、実際には複雑に影響し合っています。

神経疾患のある犬では、麻酔後の管理が特に難しいことが知られています。手術自体は問題なく終わっても、麻酔から覚めた後に状態が悪化してしまうケースもあります。

そのため、「手術が終われば安心」ではなく、麻酔後の経過観察やケアまで含めて治療と考える必要があります。麻酔の後にどのような変化が起こり得るのかを事前に理解し、獣医師と情報を共有しておくことが、安心につながります。

まとめ

穏やかな顔で横になって休む術後服を着た犬

持病がある犬でも、病気の特性を理解し、適切な準備と麻酔管理を行えば手術は可能なケースが多くあります。不安な点は遠慮せず獣医師に相談し、「その子に合った安全対策」を一緒に考えることが大切です。

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