自家用車依存度が高い地域ほど脳血管疾患死亡率が高い ―― 群馬パース大学教授が統計分析で解明

2026-06-27 05:36

群馬パース大学大学院の木村朗教授は、全国47都道府県の10年間の公的統計を分析し、自家用車への依存度が高い地域ほど脳血管疾患(脳卒中)による死亡率が高いことを明らかにしました。この研究成果は、身体活動疫学の観点から、健康リスクを予測し備えることの重要性を示唆しています。

概要

自家用車依存度と脳血管疾患死亡率の関係性について、群馬パース大学大学院の木村朗教授が全国規模の統計分析により新たな知見を発表しました。この研究は、身体活動疫学の分野で、地域社会の構造が健康リスクに与える影響を具体的に数値化したものです。

概要:

自家用車のみ通勤の割合が高い県ほど、脳血管疾患の死亡率が高い傾向があることが判明しました。この関係は、医療資源、所得、教育、年齢構成、出生率などの要因を調整しても一貫して見られました。特に、2020年のコロナ禍における外出・移動制限を自然実験として分析した結果、車依存度の高い地域では脳血管疾患による死亡が予測値よりも増加することが確認されました。また、歩行が困難な環境は、死亡リスクだけでなく、重度の介護を必要とする生活の負担とも関連する可能性が示唆されています。

  • 自家用車のみ通勤の割合(歩く機会の少なさを示す構造指標)が高い県ほど、年齢・性別をそろえても脳血管疾患の死亡率が高かった。
  • この関係は、医療資源・所得・教育・年齢構成・出生率を段階的に調整しても、脳血管疾患では一貫して残った。
  • 2020年のコロナ禍の外出・移動制限は、この予測の“的中検証”にあたる自然実験となった。最も車依存の高い3分の1の県では、脳血管疾患による死亡が予測値より+8.3%多かった一方、それ以外の地域ではほぼ増加がみられなかった。
  • 重度の介護を必要とする割合(重度介護率)とも関連がみられた。

「歩けない地域」がコロナ禍で脳卒中死を増加させたメカニズム

これまで「歩きやすい街は健康によい」という考えは、理論的な主張に留まることが多く、人口レベルでの具体的な死亡コストの裏付けは乏しいものでした。本研究は、歩行者中心の都市設計や公共交通への投資を、単なる交通・環境政策ではなく、主要な非感染性疾患(NCD)予防策として位置づけるべきであるという実証的な根拠を提供しています。超高齢社会においては、車依存度の高い地域を健康モニタリングや災害・緊急時の保護計画の優先対象とすることの重要性も指摘されています。

本研究は都道府県単位の関連をみた「生態学的研究」であり、個人レベルでの因果関係を示すものではない点に留意が必要です。地域レベルの傾向として理解することが求められます。

掲載情報

掲載誌:Dialogues in Health(国際英文誌・公衆衛生分野、Elsevier発行)
掲載日:2026年6月11日
DOI: https://doi.org/10.1016/j.dialog.2026.100320

木村教授のコメント

「歩けるかどうかは、個人の心がけだけでなく、住む環境に大きく左右されます。私の研究は、誰が・どこで・いつ身体不活動から健康を損なうかを、できるだけ高い確率で予測して先回りで備えることを目指してきました。コロナ禍の移動制限は、その予測が当たるかどうかを確かめる機会になった。群馬のような車社会こそ、歩ける街づくりを“予防のための健康政策”として考える価値があると思います。」

研究者プロフィール

木村 朗(きむら あきら)
群馬パース大学大学院保健科学研究科教授。
理学療法士として40年以上の臨床経験を持つ一方、統計ソフトウェア会社で予測モデルの統計専門家としても活躍した経歴を持つ。臨床現場の「人を診る目」と統計の「予測する技術」を併せ持ち、健康な人にも障害のある人にも共通する「身体不活動による健康リスク」を、高い確率で予測して先回りで備える「身体活動疫学」を研究指導している。
視覚障害者の歩行支援技術や、生体電気インピーダンス(BIA)技術の研究でも知られ、国際共同研究も実施。2026年6月には、日本発の「身体不活動を予測して備える」身体活動疫学の研究で、欧州最古級のモデナ大学の身体組成科学サマースクールに招聘講師として招かれるなど、注目されている上級疫学専門家である。

関連リンク

https://doi.org/10.1016/j.dialog.2026.100320

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