VRで「見えない障がい」を体験、レバレジーズが障がい者雇用の企業研修を開催

2026-06-30 10:00

VRは、ゲームやエンターテインメントだけでなく、教育や企業研修の場でも活用が広がっています。実際の現場では体験しにくい状況を仮想空間で再現し、知識だけでは届きにくい感覚を共有できる点が特徴です。特に、外からは分かりにくい困りごとを理解するテーマでは、VRならではの役割が見えてきます。

レバレジーズ株式会社が運営する障がい者就労支援サービス「ワークリア」は、企業の経営層や人事担当者を対象に、体験型研修「VRで『見えない障がい』を疑似体験 ~必要なのは合理的『調整』~」を2026年6月22日と23日に開催しました。2026年7月に障がい者法定雇用率が2.7%へ引き上げられる中、障がい者雇用への理解を深める研修として注目されます。

ゴーグル越しに感じる聴覚過敏とADHDの視点

研修の第1部では、参加者がVRゴーグルを装着し、発達障がいの特性である「聴覚過敏」や、ADHDの方が感じる情報整理の難しさを疑似体験しました。周囲の音や刺激が多い状況で、必要な情報を聞き取ることがどれほど負担になるのかを、仮想空間の中で体感する内容です。

障がい特性について資料で学ぶことはできますが、実際にその状態に近い環境へ入ってみると、理解の質は少し変わります。「なぜ指示が伝わりにくいのか」「なぜ集中が途切れてしまうのか」といった職場の場面を、本人の努力不足ではなく、環境との関係として捉え直すきっかけになります。VRは、こうした見えにくい感覚を共有する入り口として活用されていました。

当事者の言葉で補われるVR体験の意味

第2部では、自身も障がい特性と向き合いながら、現在は障がい者社員を率いるリーダーとして働く濱渦さんが登壇しました。VRで体験した感覚を踏まえながら、客観視が難しい「セルフモニタリングの壁」や、言葉を外に出すまでに時間がかかる「言語化の壁」について説明しました。

VR体験だけでは、一人ひとりの特性や職場で必要な配慮をすべて理解できるわけではありません。だからこそ、当事者視点の解説と組み合わせることで、仮想空間で感じた違和感や戸惑いが、実際のマネジメント課題へとつながっていきます。レバレジーズでは約180名の精神・発達障がい者社員が活躍しており、業界平均の約1.5倍となる定着率を支える「調整の仕組み」も紹介されました。

「分かったつもり」を越える体験型の学び

研修後には、参加者同士で「明日から自社に持ち帰って活かせる具体的なアクション」を考えるワークショップも行われました。参加企業からは、VRによって雑音や刺激の負担を実感できたことや、個人の努力だけに頼らず、周囲が環境を調整する必要性を感じたという声が寄せられています。

また、「当事者だとこう受け取ってしまうから、マネジメントでは具体的な指示出しが重要である」という話が印象に残ったという感想も紹介されています。VRはあくまで疑似体験ですが、職場で起こるすれ違いを考えるための共通言語になり得ます。参加者が同じ体験をしたうえで意見交換できる点も、企業研修としての使いやすさにつながっているようです。

法定雇用率引き上げで高まる実践的な理解

今回の研修の背景には、障がい者雇用を取り巻く環境の変化があります。2026年7月には、民間企業の障がい者法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられます。採用人数の確保だけでなく、採用後に安心して働き続けられる環境づくりも、企業にとって重要な課題になっています。

厚生労働省のデータでは、身体・知的障がい者の新規求職申込件数が近年ほぼ横ばいで推移する一方、精神障がい者の求職件数は年々増加しています。ワークリアの調査では、精神・発達障がい者の定着に課題を感じる理由として、「コミュニケーションが難しいから」が44.9%で1位に挙げられています。こうした課題に対し、VRを使った研修は、現場の不安を具体的な理解へ変える手段のひとつといえそうです。

VRが職場理解の入口になる可能性

今回の取り組みは、障がい者雇用というテーマを、VRによる体験型学習から捉え直している点が印象的です。見えにくい障がいや困りごとは、言葉だけでは共有しづらい面があります。だからこそ、仮想空間で一度体験し、その後に当事者の言葉や職場の事例を重ねる流れには、研修としての分かりやすさがあります。VRは現実を完全に再現するものではありませんが、相手の感じ方に近づこうとする第一歩にはなります。法定雇用率の引き上げを前に、こうした技術の活用が、より具体的な職場づくりを考えるきっかけになっていくかもしれません。

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