飲食店を支える「業務用中華点心」 人手不足時代の新たな市場価値を読み解く

2026-07-24 23:30

原材料や物流コストの高騰が続くなか、食品業界では「価格改定」と「品質維持」のバランスが大きな課題となっている。特に人手不足に直面する飲食店では、調理の効率化と品質安定の両立が不可欠だ。そうしたなか、業務用中華点心の製造・卸を担う亜細亜食品は、品質や調理の再現性を重視する姿勢をとっている。激変する市場環境において、飲食店が長期的な持続可能性を確保するための選択肢について、同社の常務取締役本部長の石田昌弘氏に話を伺った。

コスト高騰と人手不足に直面する今、なぜ飲食店は価格だけで選ばなくなったのか

近年、食品業界では原材料価格の上昇に加え、包装資材、エネルギーコスト、物流費、人件費など多方面でのコスト上昇が続いている。この影響により、多くの飲食店が「販売価格を上げたいが顧客離れが心配」「品質は落としたくないが原価を抑えたい」というジレンマに直面している。

さらに、石田氏の説明によれば、現在の飲食店はコスト面だけでなく深刻な人手不足という課題も抱えているため、専門の料理人でなくても本格的な点心を提供でき、かつ誰が調理しても安定した品質の商品を効率よく提供できるような、運用面での検討が増えているという。消費者の「おいしさ」や「安心感」への関心が高まるなか、コスト削減のみを最優先する運用は困難になりつつある。ただし、飲食店側がコストと品質のバランスをどこまで許容できるかについては、各店舗の経営体力やターゲット層によってばらつきがあるのが現状だ。

「手包み」がもたらす再現性と、HACCP基準による品質管理の実際

数多くの業務用中華点心を取り扱う亜細亜食品では、価格のみを重視した製造を行わない方針を掲げている。市場にはコストパフォーマンスに優れた低価格帯の商品も多く存在するが、同社が目指すのはそれらとは異なる価値の提供だ。価格の安さだけを追求するのではなく、原材料を活かしたクオリティ、そして本場の「點心師」が自社工場で一つひとつ手包みする見た目・食感を大切にするという路線を選択している。

同社の商品ラインナップの約8割は手包みで製造されており、手包みならではの見た目や食感の維持に取り組んでいる。品質管理においては、国際基準であるHACCPに基づいた衛生管理を導入し、原材料の受け入れから製造、包装、出荷まで一貫した体制を整えているという。また、店舗ごとに異なる調理環境に対応するため、再現性の高い商品設計が進められている。一方で、手包みを主体とする製造体制は、職人の確保や育成といった面で別のコストや労力を要する可能性があり、持続的な人員確保という市場側の不確実性は残る。

試食で変わる商談の視点。価格を超えて飲食店に選ばれる「品質」の価値

同社との商談において、当初は価格面を重視して他社製品と比較する飲食店も少なくない。しかし、実際の試食を通じて味や調理後の仕上がりを確認し、製造背景や商品ごとの「バラ凍結」による扱いやすさを理解することで、導入に至るケースが見られると同社は説明する。

導入した飲食店からは、「提供時の品質が安定している」「調理による仕上がりのばらつきが少なく、安心して提供できる」といった評価を得ているという。毎日の営業で使用される業務用商品において、味の良さはもちろん、誰が調理しても同じ品質を保てる再現性が重要な価値を持つとされる。ただし、こうした付加価値の理解には対面での丁寧なコミュニケーションや試食の機会が不可欠であり、営業プロセスの効率化という点では一定の限界も存在する。

長期的な視点で捉える食の持続性――これからの商品選定に必要な要素とは

多様化する市場環境において、同社は既存商品の品質向上に加え、新たな商品づくりや付加価値の提案に取り組む方針だ。目先の価格競争に終始するのではなく、長期的な視点で信頼を得られる商品とサービスの提供を目指している。

低価格な商品と、品質や再現性を重視した商品、どちらか一方が正解というわけではない。石田氏は、飲食店が商品を選定する際には、自店のコンセプトやターゲットに合わせて、価格、品質、安定供給、店舗運営(オペレーション)との相性などを総合的に判断することが重要だと話す。生活者にとっても、その時々のニーズに応じた多様な選択肢が存在することが、食の豊かさに繋がると石田氏は指摘する。もっとも、市場全体の低価格志向や経済状況の変動といった外部環境の不確実性は依然として高く、高品質路線を維持しながら供給体制を安定させるためのバランス模索は今後も続くと見られる。食品業界では今後も、価格と品質、そして店舗運営の効率性をどう両立するかが問われていく。

【取材協力】
亜細亜食品株式会社
常務取締役本部長 石田 昌弘
https://www.asiashokuhin.com

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