動物の食べ残しが川崎の特産品に!? 三菱化工機×川崎市「夢見ヶ崎プロジェクト」が描く、持続可能な地域循環モデル

2026-08-02 08:00
動物の食べ残しが川崎の特産品に!? 三菱化工機×川崎市「夢見ヶ崎プロジェクト」が描く、持続可能な地域循環モデル

2026年6月15日(月)、川崎市と三菱化工機株式会社は資源やエネルギーの循環、サーキュラーエコノミー型産業の振興を通じ、都市イメージの向上とシビックプライドの醸成を目指す画期的な取り組み「川崎市における循環型社会の実現に関する連携協定」を締結した。

その記念すべき第1弾として始動したのが「夢見ヶ崎プロジェクト」。未利用資源の有効活用と、地域共創による循環モデル構築を目的とした実証実験である。

梅雨明けの熱気が残る2026年7月27日(月)、舞台となる夢見ヶ崎動物公園にて記者発表会が開催された。行政、企業、そして市民が一体となって挑む、バイオマスリファイナリーの新たな形。熱気に包まれた会場の様子をレポートする。

官民一体で「回る・つながる 循環都市」へ

「回る・つながる 循環都市へ」。これが、現在4期目を迎える福田紀彦市長が掲げる市政のテーマだ。

「あらゆるものを循環させていく。その高い志を持つ三菱化工機様と共に、市民に愛されるこの夢見ヶ崎動物公園で具体的な取り組みをスタートできることを大変嬉しく思う」と福田市長。

川崎市はこれまでも民間企業との実証プロジェクトを数多く手がけてきた。しかし、単なる「実証疲れ」に陥るのではなく、真に社会実装できるかが問われていると指摘する。

「対等の立場でプロジェクトを考えるプラットフォーム『川崎フューチャーコラボ』を5月に立ち上げ、今回の連携協定へと至った。川崎発の技術と取り組みを世界へ発信する、意欲的なプロジェクト。循環型社会の具体的な姿を示す絶好の機会にしたい」と、福田市長は未来への強い決意をにじませた。

川崎生まれの環境エンジニアリング企業が挑む、新たな社会貢献

続いて登壇したのは、三菱化工機株式会社 代表取締役 社長執行役員の田中利一氏。

「当社は昭和10年、この川崎の地で産声を上げた。創業以来、化学工業機械の国産化から始まり、排煙や排水処理といった環境事業へ領域を広げ、社会課題の解決に向き合ってきた」とルーツを語る。

2035年のカーボンニュートラル社会に向け、同社は「持続可能な循環型社会推進企業」を掲げている。「川崎市様の取り組みと我々のビジョンはまさに合致した。本プロジェクトはその第1歩。川崎に根を下ろす企業として、地域共創と発展のために全力を尽くす」。力強い宣言が会場に響いた。

【三菱化工機株式会社 会社概要】
1935年(昭和10年)、化学工業機械の国産化を目的に三菱各社の出資により川崎市川崎区大川町で設立。機械製造からエンジニアリング事業へと業容を拡大し、水処理や排ガス処理などの環境保全技術にも強みを持つ。水素エネルギーや資源循環など、持続可能な社会の実現に向けた技術開発を推進中。

「いのちを感じる」場から始まる、地域・環境・教育をつなぐサイクル

「本プロジェクトの中心地に選ばれたことを大変光栄に思う」。そう語るのは、夢見ヶ崎動物公園の浅井威一郎園長だ。

開園から50年を超え、同園は本年5月に「いのちを感じる」をテーマとした再整備計画を策定したばかり。多様な主体との連携を模索する中でのプロジェクト発足となった。

「動物の餌の残さを肥料化し、地域の皆様と作物を育て、商品化して収益を園に還元していただく。まさに地域・環境・教育をつなぐ素晴らしい循環モデル。都市が自然と共生する場として、これからも皆様に愛される動物公園を目指したい」と笑顔を見せた。

【夢見ヶ崎動物公園 概要】
川崎市幸区の緑豊かな丘に位置する、年中無休・入園無料の動物公園。1950年開園。レッサーパンダやペンギンなど、51種278点(2026年3月末時点)の動物を飼育。飼育作業を間近で見ることができる穴場的スポットとして、地域住民に長く親しまれている。

物理的循環から社会的価値へ。「川崎創生」を掲げるプロジェクトの全貌

本プロジェクトの核心について、三菱化工機 企画管理統括本部 企画部の山田宏一氏から詳細なプレゼンテーションが行われた。キーワードは、楽しさを交えた「川崎創生」だ。

①「ぐるっとまわす」仕組み
動物たちの餌を作る際に出る野菜や果物の残さを、園内に設置したコンポストで堆肥化。その堆肥を使って近隣施設でホップやレモングラスを栽培する。収穫された農作物はオリジナルブランド商品に生まれ変わり、その売上の一部が動物公園へと還元される。廃棄物をただ処理する「物理的循環」から、経済的・社会的価値を生み出すモデルへの転換である。

②地域コミュニティとの共創
この循環を支えるのが、地域との強固なネットワーク。動物公園を拠点とするコミュニティ「夢未来交流会」を通じて、町内会、NPO法人、こども文化センターなど、多彩な主体がプロジェクトに参画している。

③具体的な数値と目標
園から出る残さは1日約12kg。まずは1日2kgの堆肥化からスモールスタートし、安定した品質管理を目指す。生産された堆肥により、年間約10kgのホップ、約3〜4kgのレモングラスの収穫を見込む。CO2削減効果は年間約70kg(杉の木約5本分)と絶対量は多くないが、「完全に輪を閉じる形」を社会実装することが最大の狙いだ。

④世代を超えた循環
環境教育も重要なテーマ。「いのちを学ぶ」場として、子どもたちに向けた収穫体験やオリジナル缶バッジづくり、さらには商品のロゴデザイン募集(高校生以下対象)など、次世代へ循環の意識を啓発していく。

⑤「カワサキモデル」の確立に向けて
三菱化工機が目指すのは、事業収益性の確保、法制度の整備、人材育成など、循環型ビジネスにおけるリアルな課題の洗い出し。この夢見ヶ崎での実証実験を足がかりに、川崎発の新たな脱炭素ビジネスモデル「カワサキモデル」の構築を目指す。

川崎のソウルフードや老舗和菓子が連携! 産学官民で生み出す新ブランド

川崎のソウルフード「元祖ニュータンタンメン本舗」、創業100年余りの老舗和菓子店「菓寮 東照」、そしてクラフトビール醸造所「クラフトビール 東海道BEER川崎宿工場」。生み出された農作物を魅力的な商品へと昇華させる「商品化パートナー」も、川崎愛にあふれる強力な布陣だ。

パートナーを代表し、クラフトビール 東海道BEER川崎宿工場の岩澤克政氏が登壇。「駅前商店街の親父と上場企業。最初は不釣り合いかと思ったが、交流を深める中で『廃液処理設備の横の土でホップを作れないか』という話から、こんな壮大なプロジェクトになった。川崎産のホップでビールを造り、この川崎からサステナブルな街づくりを実現したい」と熱弁を振るった。

クラフトビール 東海道BEER川崎宿工場 代表取締役の岩澤克政氏

インフルエンサーからプロダンサーまで! 多彩な顔ぶれがプロジェクトを熱く発信

プロジェクトの魅力を広く伝える「PRアンバサダー」も個性豊か。地元密着型インフルエンサー「たくぽん」氏、自称・夢見ヶ崎動物公園専属アイドル「GABU」、溝の口のクリエイターチーム「ノクチ基地」、そして日本初のプロダンスリーグで2連覇を達成した「KADOKAWA DREAMS」と多彩な顔ぶれが並ぶ。

KADOKAWA DREAMSのエグゼクティブプロデューサー・KEITA氏は、「川崎市は歴史という『縦の軸』と、様々な企業という『横の軸』がしっかりしている。我々はその軸を斜めに越え、ダンスで世代や職種をつなげていく。地域と共に歩み、未来の子供たちへ還元するこの循環型プロジェクトは、我々の思いにぴったりだ」と共感の意を示し、「川崎から日本へ、そして世界へ、この素晴らしい取り組みを伝えていきたい」と意気込んだ。

KADOKAWA DREAMS エグゼクティブプロデューサーのKEITA氏

笑顔あふれる作付け式。未来へ向けた「循環」の第一歩

発表会の最後は、賑やかなフォトセッション。日吉小学校の児童たちや北加瀬こども文化センターの永田館長も登壇し、市長や社長、アンバサダーたちと共に、特製プランターへの作付けが行われた。

子どもたちの手によって丁寧に植えられていくのは、これから動物たちの残さから作られた堆肥で育つホップやレモングラス、そして動物公園を彩る花々。世代も立場も超えた参加者たちの明るい笑顔と、土に触れる真剣な眼差し。それはまさに、川崎に根付こうとしている「新しい循環」の始まりを象徴する光景だった。

未来の「カワサキモデル」に向けて

本プロジェクトで誕生するオリジナル商品は、今年11月1日に開催予定の「Colors, Future! Summit」にて販売される予定だ(ビールの完成は来年度を予定)。

動物たちの食べ残しが、美味しいビールや和菓子に生まれ変わり、その売上が再び動物たちの暮らしを豊かにする。一過性のイベントに留まらず、市民・企業・行政がガッチリと手を組み、持続可能なビジネスとして確立を目指す「カワサキモデル」。夢見ヶ崎の小さな丘から始まったこの壮大な実証実験が、日本の、そして世界のサーキュラーエコノミーを牽引する日も、そう遠くはないかもしれない。

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